軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23-4敵の正体 後編

迫ってきている本隊を躱しつつ、アルたちは南側を移動していたもう一つの騎馬の集団も捕捉し、前回とほぼ同じやり方で撃破することができた。誰も大きな怪我を負う事もなかったので大勝利である。

「やはりこっちにも指揮役が2人だ。他は輝ける盾が2人、黒いナイフ団が2人、セブンスネークの連中が4人か。指揮役を苦労して殺さずに捕まえたんだが……」

そう言いながら、レジナルドはその指揮役だったらしい女の胸の下あたりにナイフを差し込み、ぐぃっとねじってトドメを刺した。

「えっ?」

アルは思わず声を上げる。先程は皆縛り上げているだけだったように思ったのだが、違ったのだろうか? レジナルドに尋ねると、彼は首を振った。

「傭兵団やセブンスネークの連中は雇われているんだろうから殺さないが、こいつらはたぶんそうじゃないからな。可能性は低いと言われるかもしれねぇが、これを見てみろよ」

レジナルドは今殺したばかりの女の服の合わせ目を開いて見せた。服は紐で結んである。そういえば、辺境都市レスターでプレンティス侯爵家の間諜が残していった服もボタンが使われておらず、今殺された女性が身に付けていたものと同じように紐で結ぶようになっていたという話だった。ということは、この騎乗していた部隊を指揮していた2人はプレンティス侯爵家の間諜ということか。先程もたまたま交戦の際に2人とも死んでいただけだったようだ。

「一応、正直に喋るなら助けてやると言ったんだがな。やっぱり一言もしゃべらねぇ。本当は尋問したいところだが、その時間も無いから仕方ない」

アルも頷く。先ほどと同じように彼らが連れていた馬は逃げるに任せ、他に息のある者は縛り上げただけで放置すると、直ぐにその場から移動を始める。

「どうする? 次は……」

「夜が明けきらぬ間になんとかしたいところだが、何か助言はあるか?」

小走りで移動しながらデズモンドがアルに尋ねる。戦いを指揮した経験などないのは判っているはずだ。もちろん魔法使いとしての助言ということだろう。

「テンペスト王国の魔法使いは、50メートルの距離から魔道具や魔法を感知します。警備用の魔道具と同じです。あと注意が必要なのは、 浮遊眼(フローティングアイ) 呪文の透明な眼で、今もそれを使ってこちらを探している筈です。これはレダ様か僕で見つけ次第撃ち落とすつもりだけど、撃ち落したら当然相手に気付かれます。あとは普通の呪文による攻撃は射程が30メートルなんですが、以前、外交使節の護衛に同行したとき、セオドア王子を狙って70メートル程離れているにもかかわらず攻撃を受けたことがあります」

アルの説明を聞いてデズモンドは顔を 顰(しか) めた。

「それが2人か。出来れば待ち伏せをしたいところだが……」

「魔法使いは2人だけとは限りません」

アルはそう訂正する。馬車が2台という情報があるので2人だろうとは思うが、呪文が使える徒弟のようなものを連れている可能性もあるのだ。

「さっきの所からは見えなくなったか。よし、息を整えろ。アル、もう一度、空からの様子を見せてくれるか? あとは、敵の位置も頼む」

「わかりました」

デズモンドはそう言って立ち止まる。レジナルドが横で水筒から少しだけ水を飲んだ。アルは再び地面に頬と両手をあてて振動を確認する。北東におよそ五百メートル、地面に映した上空からの風景に石を並べる。

「僕たちはここ、向こうはここにいて、この方向に移動しています」

デズモンドはじっと見入り、道沿いの小高くなっているところを指した。

「もし、向こうがそのままの方向で移動したとしてこっちが有利に戦えそうなのはこのあたりなんだが、どう思う?」

「まだ相手は二倍以上居ます。普通で言えば包囲しながら矢を撃ってくるでしょうが、魔法使いがいますからねぇ」

デズモンドにレジナルドがそう答えつつも考え込むように首をひねる。なるほど、土地が高いところに陣取ろうとしているのかとアルは横で見ながら考えた。弓を考えれば高い所に居る方が断然遠くまで飛ぶだろう。

「向こうの魔法使いも集団攻撃魔法が使えますが、こっちにも僕やレダ様が居るので警戒しているはずです。弓にも警戒しないといけないし、魔法使いだけが突出してはこないでしょう。どちらかというと、明るくなった方が向こうは有利なので盾持ちに援護させながらゆっくりと近づいてくるのではないでしょうか。数の多い向こうのねらい目は集団攻撃魔法を使いにくくなる乱戦かもしれません」

「なるほどな」

今までの経験をもとに話すアルにデズモンドたちは頷いた。

「なので、僕は先に空を飛んで相手の背後に回ろうと思うんです」

「は?」

アルの提案にデズモンドとレジナルド、レダは揃って怪訝そうな顔をした。

「おい。本気か? そんな事をしたら狙われるだろ? お前さんこそ向こうは倒したいとおもっている相手なんだぞ?」

デズモンドの言葉に二人も頷く。だが、アルはにっこりと笑って首を振る。

「今回、連中を倒さないとレビ会頭やエリック様たちの命は危ない……そうでしょ? なので僕も今まで秘密にしていたとっておきの方法を使う事にします。呪文の距離延長です」

ずっとこの方法は相手に知られるのを警戒して使わないようにしていたのだが、今回はそんな事を言っている状況ではないだろう。アルの言葉に皆が頷いた。

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デズモンドたちは予定通りの場所に急行し配置を確認していると、 浮遊眼(フローティングアイ) の眼が飛んで来た。向こうの魔法使いが前方を索敵しているのだろう。すかさずアルが 魔法解除(ディスペルマジック) 呪文でその眼を消したが、おそらく存在は気付かれたはずである。

「来ましたよ……」

アルはすぐにデズモンドたちに告げる。彼らは無言のまま頷くと身振り手振りで他の者たちに指示を与え、木々の陰に隠れた。身を隠すというよりどちらかというと矢や魔法による攻撃に対する盾にする感じである。

一応、彼らにも 盾(シールド) 呪文をかけておく。とは言っても、さすがに全員に一回ずつ呪文を使うと使いすぎで頭が痛くなりそうなので、分散して攻撃1回か2回程度だ。もちろん自分にはきちんと呪文一回分(熟練度が9なので攻撃9回分)である。熟練度が6になった 素早い(クイック) 盾(シールド) 呪文も自分には使うつもりなので、これでもし、射程の長い攻撃呪文を撃ってきたとしても合わせて15発分は防げるはずだ。

「じゃぁ、僕は移動しますね。あの、もしうまく行かなかったらごめんなさい」

急に心細くなったアルはそういって頭を掻く。自分の提案した作戦だが、失敗したら皆を危険にさらすことがになるのだ。

「何を言ってるんだ。お互い生き残るには頑張るしかねぇんだ。この状況まで持ち込めたのはお前さんのおかげだ。胸を張れよ」

「そうだ、胸を張れ」

デズモンドとレジナルドはそう言ってにっこりと笑った。

「そうです。私も感謝しかありません。なんとかここを乗り越えてエリック様を救えるようがんばりましょう」

レダもそう言う。そうだ、やるしかないのだ。