軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21-4 探索 中編

ドーム状の建物の入り口の扉を開けるとエントランスがあり、その先には真っ直ぐ通路が伸びていた。天井からは他のドームと同じように光が入っていて明るい。エントランスには木箱がいくつか乱雑に置かれていたが、どれも中は空っぽだ。床は埃が積もっていた。

「こっちのドームの中は区切りがあるんだな」

アルはそう呟いた。石の床に手を触れるとひんやりしている。

『 知覚強化(センソリーブースト) 』 -触覚強化

建物内で動いているものは居なさそうだ。アルは安堵のため息をつく。

“油断しちゃだめよ。植物系の魔獣とか……”

グリィが注意してくれる。うーん、どうなのだろう? たしかに他の二つのドームの床は何故か土だったが、だからと言ってこっちのドームの中にも同じように土があるとは限らないし、さすがに植物系の魔獣までは警戒しすぎではないだろうか。どちらかというと、守護ゴーレムのようなゴーレムが生きている可能性のほうがあるかもしれない。

そんな事を考えつつも、警戒しながらアルは通路を進んだ。すぐ右手に扉がある。扉には丸く透明な板付きの窓が付けられていて、中が覗けるようになっていた。

浮遊眼(フローティングアイ) の眼を動かして、中を覗き込む。その中は枯れた草木しかない寂しい植物園だった。

“あー、何百年も閉じたままの遺跡の中だもん。太陽の光は入るだろうけど、そりゃあ、枯れるよね”

グリィの声に落胆の音が混じる。アルは警戒しながら扉を開けて中に入る。かび臭さが鼻についた。中には小さな池だったと思われる窪みなどもあったが、そこにも水は残っていない。光や、空調、水を出す魔道具なども残されてはいたが、どれも魔力切れの状態となっている。枯木や枯草の中には、アルが知っているものが多い。

「これはたぶんラブダナム、こっちはエゴノキ……。このあたりはうちの近くの森にも生えている植物だけど、どれも薬効のある樹脂が採取できるものばかりだ。わざわざこんな事をして植物を育てていたってことは、ここは薬草園とかかな? すごい効き目のある薬草とかあるかも」

“可能性はあるわね。望み薄だとは思うけど、他の区画もありそうだから調べてみたら?”

ドーム状の建物の中は通路を挟んでそれぞれ二つずつ、合計4つの区画に区切られているようだった。グリィの助言に従い、アルは他にあった3つの区画も順番に見て回る。だがどの区画も既に枯れ果ててしまっていた。この状態では識別がつきにくい植物も多く、特別な植物はあったのかもしれないが、結局それをみつけることはできなかった。

「仕方ない、魔道具だけ回収していこう。あとは三階建ての建物に期待」

アルはそう呟く。室温調整用や水を作り出す魔道具、光の魔道具、残されていた魔石などはかなりの数になっている。今の時点で利用方法が判らない魔道具もいくつかあった。売ればかなりの金額になりそうだし、死の川の拠点や鉄鉱山の砦で利用すると言う手もある。気持ちを切り替えて、三階建ての建物に向かっていくのだった。

-----

三階建ての建物で 浮遊眼(フローティングアイ) 呪文で事前調査出来ていないのは、二階の1区画と三階の1区画であった。特に二階の1区画は建物の半分以上の面積を占めており、中に複数の部屋がありそうで、一番、面白そうなものがありそうである。

二階のその区画への入り口は閉ざされており、鍵がかかっていた。ドーム状の建物と同様に罠などが仕掛けられていないことを確認してから、 解錠(オープンロック) 呪文を使う。

カチャリ

ここの鍵も無事に音を立てて外れた。ここでもアルは運命の女神ルウドに幸運を願いながらゆっくりと扉を開ける。

そこは2メートル四方ほどの狭い部屋になっていた。正面にさらに金属製らしい扉があったが、その表面には正体不明の魔道具がとりつけられていた。魔道具は直径二十センチほど、厚みは2センチほどの丸い円形の構造物であり、その中心に、半球状の直径三センチほどの突起が三つ、そして小さな赤い光が一つ灯っていた。

「これは何だろう?」

“ちょっとまって、何か問い合わせて来た。入室が許可されている人じゃないと、この区画に入っちゃいけないって言ってるみたい”

「えっ? どういう事?」

“説明するから、一旦出て”

アルはグリィの言われるがままに、一旦部屋を出て扉を閉める。

「どういうこと?」

“えっと、テンペストの研究塔に入るときに、権限の登録をしたのを憶えてる?”

そういう事があっただろうか? そういえば、訪問者として登録してあるとか、パトリシアがテンペストの後継者として認められたとかそんなやり取りがあったような気がする。それか?

“あの丸い円形の魔道具が身分の確認をしてきたのよ。私自身が身分証の機能があるっていう話もその時にしたでしょ。たぶんあの扉はその認証が通らないと開かない感じなんだと思う”

「どうしたらいい?」

認証というのは何だろう? 城の門番に紹介状を渡すような事だろうか。だが、どうやったらここの入室が許可されるのか。方法は無さそうな気がする。

“壊す……しかないかな?”

やっぱりか。でも壊すのは勿体ないし、何らかの自衛機能はついている可能性も高そうだ。他に方法はないのだろうか? 扉は金属製のようだったので 金属軟化(ソフテンメタル) 呪文を使えば無理やり開けることが出来るだろう。あとは 魔力制御(マジックパワーコントロール) 呪文をつかって魔道具の魔力を枯渇させるような使い方はできないだろうか?

“無理やり何かしようとすると、何らかの警備装置が働くかもしれないわ”

「じゃぁ、いっそ隣の部屋の壁を 石軟化(ソフテンストーン) 呪文をつかって穴を開けようか」

ある程度の穴が空けば 浮遊眼(フローティングアイ) の眼が中に入れる。そうすれば中の探索もできるだろう。正面から入り口を攻略しようと考えるより楽かもしれない。

“うーん、それが良いのかな? 試してみる?”

アルは 浮遊眼(フローティングアイ) の眼が侵入できていない区画に面する隣の部屋に移動して、 石軟化(ソフテンストーン) 呪文をつかって壁に穴を開ける事は出来ないか試してみた。表面の石は簡単にはがしとることができたものの、その内側には木の板が張られている。

「うーん、面倒だけど、これはきっとわざとなんだろうな。同じような事を考えた泥棒とかが居たのかもしれないな。鉄の板だったら魔法で抜けられたんだけど、木の板だと……どうしても静かに穴を開けるのは難しそう。でも、警備の人間がいないだろうと予想される状況なら少々音がしても……」

そういって、アルは 武器作成(クリエイトウエポン) 呪文で鑿と木槌を作り、かなり強引ではあるがそれを使って木の板に穴を開けた。壁は多層構造になっていてさらに石の面があったが、それは 石軟化(ソフテンストーン) 呪文をつかって穴を開ける。ついに侵入を妨げていた魔道具の扉の内側の部屋に穴が開いた。

アルは 浮遊眼(フローティングアイ) の眼をその中に送り込む。そこは6メートル四方ほどの部屋で、先ほどの魔道具が貼りついた扉の裏側と奥に続く扉が見える。壁沿いに4体の人間とほぼ同じサイズの丸い頭と長い手足を持つシンプルな人形が待機していた。その両手は剣となっている。これは、単なる置物には見えない。おそらくなんらかの条件で侵入者を排除するためのゴーレムだろう。テンペストの守護ゴーレムに比べれば強そうには見えないが、アル自身は武器を使っての戦闘には全く自信がない。

「グリィ、扉を強引に開けようとした相手に殴りかかってくる感じかな?」

“うーん、それはわかんないわ。この穴を広げて中に入っても襲ってくるかもしれない”

アルは頭をばりばりと掻いた。こっちのルートは手間がかかりそうだ。三階の床から穴をあけたほうがいいかもしれない。

「この上は廊下?」

“そうね。三階の廊下部分。でも三階と二階の間には五十センチほどの空間があるみたい。何故かしら?”

アルは天井を見上げた。天井板があって、五十センチほどの空間があり、三階の床板があるのか。ということは、ここの天井を 石軟化(ソフテンストーン) 呪文で穴をあければゴーレムらしきものが居る部屋を越えて向こう側の部屋に行けるという事ではないだろうか。

“その空間にも 魔法発見(ディテクトマジック) に反応がある物があるわよ。この警備体制の厳しさからして、なんらかの警戒装置じゃないかしら?”

また面倒な……。アルは少しうんざりとした。だが、これほどの警備があるということは、逆に中にはそれに値するだけの物があるはずだ。

「わかったよ。それがどういうものか見てみようじゃないか」

ここからは知恵比べだ。絶対に奥の部屋に入ってやる。アルはそう思ってこぶしを握り締めた。