軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-6 大口トカゲ狩り 2回目

さらに土砂降りの雨は続き、金もないアルはその間魔法の練習をして過ごすことになった。そのような日が3日続いた後、ようやく雨は上がったのだった。

「さぁ、行くよ、オーソンさん」

アルは朝食もそこそこに出発の準備を始める。その横で大きな荷物を背負って出かけて行こうとしている2人組が居た。アルと同じようにこの宿屋に長期宿泊をしていたマドックとナイジェラであった。

「大きい荷物だね。どこかにお出かけ?」

アルが声をかけると、マドックのほうがアルに近づいてきた。

「よぅ、アル。ようやく晴れたな。ああ、俺たち、パーカーに移動することにしたんだ」

パーカーとは、ここから一旦北の領都にゆき、そこからさらに西に行ったところにある国境都市パーカーのことだろう。歩いて1週間ほどの距離である。そこからはさらに西に行くと隣国であるテンペスト王国があり、パーカー付近は昔からよく小競り合いが起こると聞いたことがあった。

「へぇ、金儲けの話でも?」

「テンペスト王国で大きな戦争が起こったらしくてな。詳しくは行ってみないとわからないが傭兵の仕事が結構あるんだとよ。俺たちは探索とかより荒事のほうが得意だからしばらくそっちで稼ぐつもりだ」

「そうか。傭兵仕事はやばい仕事もあるから気を付けて稼いで来いよ。あんまり報酬が高かったら臭いと思え」

オーソンが足を引きずりながらやってきた。

「いつもありがとよ。ナイジェラも居るし用心深くやるさ。じゃぁな」

大きな荷物を背負い直すと手を振り、2人はとりあえず渡し場の町のある東に向かって去っていった。アルとオーソンはそれを見送った後、リッピと合流し、大口トカゲを狩るべく南に向かったのだった。

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「わぁ、こいつはやべぇな」

ホールデン川が見えてきたあたりで、オーソンは思わず声を上げた。4日前に大口トカゲを狩りに来た時に比べて水量がかなり増えていたのだ。濁流が音を立てて流れており、アルたちの居る方は水位があがるという程度ですんでいたが対岸の湿地帯の一部は川底に沈んで川幅は10m程広がっていた。

「あーあ、これじゃ狩りはお休み? せっかくもう一台借りてきたのに……」

リッピは横で泣きそうな顔をしている。前回は儲けがよかったというので今日は妹のピッピに手伝わせてラバの曳く馬車を増やして来ていた。

「こりゃぁ川上でも同じように降ったみてぇだな。今年の雨期はいつもより早く始まっちまったか」

オーソンは腕を組んで思案顔である。水の流れが激しくてこれでは単純に釣りをしようとしても餌がすぐながされてしまいそうであった。

「ちょっと見てみる」

アルはそう言って皆を置いて一人駆けだした。身軽にすこし丘になっているところに生えていた木にするすると上った。

『 知覚強化(センソリーブースト) 』 -視覚-

アルは川面をゆっくりと見回した。普段なら大口トカゲは目と鼻だけを水面の上に出して獲物を待ち構えているはずであったが、下流に流されて行ってしまったのかもしれない。残ってるとすれば川の流れが緩やかなところか。

「大口トカゲはいそうかー?」

待ちきれずにオーソンが声をかけたが、アルはもうちょっと待ってと手で合図をして探し続ける。そしてようやく流れが曲がって淀みとなっているところに大口トカゲがたくさん集まってじっとしているのを見つけたのだった。

「って感じだね。どうする? 離れたところから端の奴を 魔法の矢(マジックミサイル) で狙おうか?」

木から素早く下りてきたアルは状況を伝えてオーソンに尋ねた。

「そんなに集まってるのか。いや、攻撃すると相手が興奮して他の大口トカゲまで巻き込んで襲ってくることにがあるから危険すぎる。やれるとすれば一番端のやつを餌で上手く釣るしかねぇが、そんなにうまく餌をうごかせるわけでもねぇ。何体も一度に気付いたら攻撃したのと同じようになっちまう可能性もある。狩りは止めるか……」

「ちょっと、待って。一度試させてくれない?」

アルは慌ててそれを止めた。彼としても革鎧代を稼ぐ必要があるのだ。簡単にあきらめきれない。

「何を試すんだ? 釣り竿の肉を上手に操るのは難しいぞ」

「いや、魔法だよ。 幻覚(イリュージョン) 呪文で騙してみる」

半信半疑のオーソンにアルは 幻覚(イリュージョン) 呪文の効果は視覚だけではなく、聴覚や嗅覚もだますことができるし、相手が人間以外でも使えるのだと説明した。肉による釣りの餌ではなく、その代わりに 幻覚(イリュージョン) 呪文で空を飛ぶ肉塊の幻を操り大口トカゲをおびき寄せるのであれば、場所などは細かにコントロールが可能である。それなら1匹だけを釣りだすことを試せるのではないかと提案したのだ。

「へぇ、なるほどな。しかし、魔獣を幻覚で騙せるのか」

リッピとピッピは感心しているが、オーソンは不安そうである。

「本当はさ、 念動(テレキネシス) 呪文が使えたら、 幻覚(イリュージョン) 呪文でごまかさなくてもよかったんだけどね」

アルは残念そうに言ったが、オーソンは軽く首を振った。

「まぁ、やってみればいいさ。工夫さえすれば同じことができるはずなんだろ。全てはそこからだ」

彼の言葉にアルはにっこりと笑ったのだった。