軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15-13 遺跡探索 後編

アルはその後、残る地上部分の古代遺跡の探索を粘り強く行い、一時間程かかって、一辺が一メートルサイズの倉庫部屋、魔力切れになっていた光の魔道具を三つと室温調整用の魔道装置を二台、そして、壊れた魔力伝送網の受魔アンテナ装置、魔力生成装置を発見した。

一メートルサイズの倉庫は地下およそ六メートルのところにあり、倉庫部屋そのものに 探知回避(ステルス) 呪文の効果がつけられていたようで、呪文の書が中にあったにもかかわらず、ほぼ真上を通らなければ精度を上げた 魔法発見(ディテクトマジック) にも反応しなかったのだ。

「小さい方の倉庫部屋は、本当に秘密の倉庫って感じだね。よっぽど確信がなかったら見つけられないと思う」

アルはそう呟いた。彼自身もグリィに座標などを注意してもらいながら遺跡をかなり綿密に捜索してようやく見つけたのだ。

“そうね。これを作った魔法使いがこれほど警戒していたって考えると、地下の大きい倉庫部屋に貴重品を入れるのは、少し怖くなっちゃうね”

グリィの言葉にアルは頷く。もちろん、こんなところの地下に倉庫部屋があるとは誰も思わないだろうが、それでも、アルは見つけ出したのだ。それを考えると一メートルサイズの小さな方ならともかく、本当に貴重なものを大きな倉庫に入れたままにはできないだろう。

“あの、受魔アンテナ装置があるってことは、やっぱり、ここは古代文明の遺跡で、リアナの言ってた大地震で建物が倒壊して、その時に壊れちゃったって感じかな”

グリィが尋ねた。アルは首を傾げる。たしかに受魔アンテナ装置はマラキの話だと、テンペストの時代には大事な社会基盤のようなものだったのだろうし、それがあるということは、この建物もその時代のものだったように思える。だが、どういうもので、どれぐらいの期間で使われていたものなのかはアルもよくわからない。

「持って帰って調べても良いかもしれないね」

受魔アンテナ装置はかなり大きいが、空飛ぶ馬車が入っていたほうの釦型のマジックバッグになら入れて持って帰ることもできるだろう。それにこの亡くなっていた人物についても、マラキやリアナなら知っているかもしれない。

“とりあえず地上部分はこれで終わり?”

グリィの言葉にアルは頷いた。

「名前はわからないけど、二人の遺体の魂の平穏を祈ってから、地下に行こうか」

見つかった遺体は、倒壊した建物の壁の犠牲になったまま、誰にも救出されなかったということなのだろう。地上部分の探索を終えたアルは、改めてその名もわからない二人の遺体に聖水を撒き、魂の平穏を祈ったのだった。

「さて、あと残るは地下だけど、もう魔道具や呪文の書は無いかなぁ……」

アルは階段を下りながらそんなことを呟いた。地下よりも、どちらかというと、新しく手に入れた呪文の書のほうに気持ちは惹かれていた。地下で通常の精度の 魔法発見(ディテクトマジック) 呪文で反応があった倉庫部屋は、一つだけだ。それもアルの予想では先程見つけたマジックバッグの格納先に割り当てられており、おそらく、中にあった空飛ぶ馬車だろう。

全部で十六ある倉庫部屋のうち、一つはアルが最初に格納されてきた倉庫部屋、三つは同じように天井に穴が開いて中は空っぽだと判っている倉庫部屋で、残りは十二である。アルはまず、 魔法発見(ディテクトマジック) 呪文で反応があった倉庫部屋を調べてみる事にした。

“悪い空気があるかもしれないから、通路を作るときには気を付けてね”

「ああ、そうだね。どうしよう? 鶏を借りようか……ちょっと、可哀想な気もするけど……」

野鳥を捕まえると言う手もあるなと思ったが、悪い空気がある可能性は少ないだろうと、アルは研究塔に転移して、籠に鶏を入れて戻って来た。

倉庫部屋と通路の間の壁の厚さは石がおよそ50センチ、その中に金属の補強用の太い棒が通っているのは、割れ目などがあったもので共通しており、おそらくこれは同じ造りだろう。

アルは慎重に 石軟化(ソフテンストーン) と 金属軟化(ソフテンメタル) が使える杖を駆使しながら天井に近い辺りの壁に直径二メートルほどの通り穴を開けた。自分自身は空気を吸ったりしないように注意しながら、鶏の入った籠をその穴のところに置いてしばらく様子を見る。

「大丈夫そうだね……」

アルは穴から中を覗いた。そこには、先ほど収納したばかりの空飛ぶ馬車、そして持って帰る事にした魔道具や魔道装置が綺麗に並んでいた。

「やっぱりか。他には何も……ないね」

アルは少し残念そうにつぶやいた。

“まぁ、でも、これで格納先も判ったんだし、ちょっとすっきりじゃない? 次行きましょ 次!”

「うん!」

グリィが囁く。アルは気を取り直して、グリィのペンダントをかるくぎゅっと握った。

アルは続けて、次の倉庫部屋の天井近くにも同じように穴をあけ、中を覗き込んだ。

暗い中に装飾が少し施された 木箱(チェスト) が一つ、そして馬車が一台あるのが見えた。馬車はなんとなく見覚えがあった。なんとあのヴェール卿などのテンペスト王国プレンティス侯爵家に仕える魔法使いたちが乗っている飾りのない黒い馬車であった。

“ヴェール卿の荷物?”

「わかんない。可能性はあるのかも?」

アルは注意しながら、ゆっくりと中に入る。この倉庫部屋を対象としているマジックバッグを誰が持っているのか。それはわからないが、もし、あの馬車が新しいものだとすれば、テンペスト王国プレンティス侯爵家に仕える魔法使いの誰かということになる。たしかにゴブリンにマジックバッグとなっている釦を持たせるぐらいだ。そんな貴重なものを何故と当時思っていたが、数多く持っていて、その一つを渡したというのなら、まだ少しは納得できる。

馬車まで近寄ってよく見る。たしかに 物品探索(ロケイトオブジェクト) で対象にしたこともある、飾りのない黒い馬車であった。中には何も残っていない。

アルはその横の 木箱(チェスト) に歩み寄った。ゆっくりと蓋を開ける。中には、服が何枚かとおそらく硬貨が入ったずっしりと重たい袋が収められていた。服の一枚には立派な装飾が施されている。おそらく謁見や儀式などで身に付ける服だろう。

「もらっていく?」

“それをしたら、ここに侵入したことに気付かれちゃうんじゃない?”

気付くだろうか? 馬車ならともかく、金や服ぐらいなら思い違いだと思わないだろうか……。それも持ち主はおそらくプレンティス侯爵家に仕える魔法使いだ。

もちろんこの持ち主が明らかにヴェール卿だというのなら盗んでも良い気もした。でも、もしかしたら、プレンティス侯爵家に仕えてはいても今回の王位簒奪には反対している人かもしれない。それに死んだ人ならともかく、生きている人間の持ち物をこっそり盗むというのは、なんとなく性に合わなかったというのもあった。そして、矛盾するが、どうせ盗むなら、もっと貴重なものが入っている時にした方が良いのではないかという気もしたのだ。

「とりあえず置いておこう。でも……」

アルは馬車の屋根の目立たなさそうなところに星と数字の一とナイフで刻んだ。こうしておけば、馬車の持ち主が特定できることがあるかもしれない。

「じゃぁ、次、行くよ」

アルはそうやって、他の倉庫となっている倉庫部屋も次々と調べていった。残る十の倉庫部屋のうち、何もないものが五つ、 木箱(チェスト) と馬車があったものが三つ、 木箱(チェスト) だけがあったものが二つであった。 木箱(チェスト) の中には、身の回りの品や硬貨の入った袋、そして、いずれにも同じデザインの儀式用の服が収められていた。アルは同じように三台の馬車には先ほどと同じように星と二、三、四と数字を刻むことにした。

「少なくとも、六つは、プレンティス侯爵家に関わりがある人が持っているんだろうね」

“そんな感じね。探索は終了?”

アルは頷いた。換気の魔道具は、またここを利用するかもしれないので置いておこう。倉庫部屋にあけた穴や最初にここに来るときに使った倉庫部屋の天井に空いた穴も一応塞いでおく。そして、対応するマジックバッグを持っている倉庫部屋には2つとも換気のための小さな穴を開けておくことにした。そうすれば今度来ることがあったとしても臭い空気は残っていないだろうし、羊や豚、鶏といった生き物を運ぶのに問題なく使えるだろう。あとはシロケナガボンゴ対策に地下の扉の鍵を閉めておけば、とりあえずよさそうだ。

“また、来るつもり?”

「そうだね。テンペストの一族が暮らしていた所は一度行ってみたいと思ってる。その時は研究塔から飛ぶより、ここから飛ぶ方が断然近いだろう?」

テンペストの一族は大事な荷物は全部、ゴーレムに運ばせて大移動をしたというのは知っている。だが、蛮族や魔獣対策のための何か手掛かりなら残されているかもしれないのだ。そのうち、きっと……。

“じゃぁ、とりあえず今日は帰りましょ。ケーンとの約束もあるし、そろそろオーソンの足を治療する話も進んでるんじゃないかしら。新しい呪文も習得するんでしょ”

「うん!」

アルは大きく頷いた。そして、 転移(テレポート) の魔道具を使って、研究塔に戻るのだった。