軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お祖父様が暗躍しています。

アレリラは、唐突に出てきた祖父の名に混乱した。

彼は年に一度開催される夜会にも参加せず、実家のダエラール子爵家にも訪れたことがない。

そんな祖父が、なぜボンボリーノとの繋がりがあるのか。

「タイア子爵とは、いつ知り合われた?」

アレリラが言葉に詰まっていると、イースティリア様がそう問いかける。

「知り合ったのは、だいぶ前ですよ〜。学生の時ですねぇ〜」

特に何かに気づいた様子もなさそうなボンボリーノが、のんびりと答える。

「懇意にしておられる?」

「そうですねぇ〜、何年かに一回顔を合わせるくらいですけど、気が合うんで〜! この芋の種を貰ったのは、半年くらい前に、上下水道の完成を見に来た時ですね〜!」

「タイア子爵が、水道に興味を……?」

アレリラが横目に見ると、イースティリア様は何かを探るような表情をしていた。

ボンボリーノを、ではなく、おそらくは、祖父の意図を。

「興味っていうか、そもそも水道作り自体が父上がタイア子爵から言われた話みたいですよ〜?」

「……初耳だ」

「ねぇ〜、ボンボリーノぉ。それってナイショにしとかないといけない話じゃないのぉ〜?」

「あ」

アーハがクイクイとボンボリーノの袖を引くと、彼は分かりやすく『しまった!』という表情を浮かべるが……。

「まぁでも、ウェグムンド侯爵ならいいんじゃない〜?」

「それもそうねぇ〜! 口固いだろうしねぇ〜!」

と、なぜか楽観的な結論に二人して達している。

ーーーむしろ、良いわけがないと思いますが。

驚きから覚めて正常な思考を取り戻したアレリラは、思わずこめかみを押さえた。

どういうやり取りが前伯爵と祖父の間にあったのかは分からないが、もしそれによる利益が祖父に流れていて、正式に申告されていない場合。

ことは、脱税問題などに発展する可能性がある。

発案者であるのなら、工事関係者として連名されていなければおかしい。

利益分配も行われている筈であり、正式な書面に名前が一度でも入っていれば、イースティリア様がそれを把握していないことは考えづらい。

現在、質の良い上下水道の設営は、浄化魔術の生活応用技術と合わせて、公共衛生の観点から帝国中枢が注目している案件なのだ。

だから、新婚旅行の行程にも含まれているのである。

「失礼ながら、タイア子爵の名を上下水道関係書類で目にした覚えがないのだが。どういう関わりをお持ちなのか、聞かせて貰えるだろうか?」

「え〜? 前のこと過ぎて覚えてないですねぇ〜」

「分かる範囲でも構わない」

「ん〜……ねぇ、ハニー。水道工事って、確か男爵のところで請け負ってたよねぇ〜?」

「そうよぉ〜! タイア子爵は〜、最初アタシのお父様が交易してた時に領地を通って仲良くなってぇ〜、そこからお義父様と仲良くなったんじゃなかったかしらぁ〜?」

二人の会話を聞きながら、イースティリア様が顎を軽く指先で撫でる。

「工事そのものには、関わっておられない?」

「そうですねぇ〜。来ても数日滞在するくらいで、すぐ帰りますし〜」

「人員の手配もぉ〜、多分お父様がしてたのでぇ〜、子爵の手は借りてないと思いますよぉ〜! お金の心配してるならですけどぉ〜!」

うんうん唸りながらイースティリア様の聞きたいことを思い出そうとしているボンボリーノの横で、彼よりも商売っ気のあるアーハが意図に気付いたのかブンブンと手を振る。

おそらく嘘ではないだろう。

男爵家はアーハを見る限り、財布のヒモが固く堅実な家系であるように見える。

まさか、人員だけを派遣して人足への対価を横流しするような危ない真似はしない筈だ。

アレリラとしても、出来れば自分の祖父をそんな形で疑いたくはない。

「どう思われますか?」

少しだけ希望を込めてイースティリア様に問いかけると、即座に返答があった。

「何か企んでいる可能性はあるが、おそらく国に害のあるような動きはしていないだろう。工事の件についても手を貸した理由は不明だが、結果的に帝国の益になっている」

「畏まりました」

イースティリア様がそう仰るのなら、可能性は低いだろう。

王太子殿下と共に陛下の元から戻って来た時の様子から、おそらく祖父に関する何らかの裏事情をご存知なのだろう、とアレリラは察していた。

同時にそれが、イースティリア様の一存ではこちらに話せないことなのだろう、とも。

アレリラは、彼が気休めを口にする人物ではないことを知っている。

イースティリア様が害がないというのなら、真実そう思っているのだ。

なら、アレリラとしてはそれ以上訊ねる必要も感じなかった。

「ペフェルティ伯爵。上下水道のこと以外でも、タイア子爵に関して知っていることを教えてくれないか?」

「良いですよ〜」

話を聞くと、彼はアレリラよりもよほど祖父のことを知っているようだった。

しかし話に聞く祖父は、アレリラの抱いていた印象通り、茶目っ気を感じさせる話題が多く……堅物の自分よりもよほど、ボンボリーノの方が気が合うだろう、と納得もした。

そして、ふとボンボリーノが思い出したように口にする。

「そういえば、アレリラとの婚約解消のことで悩んでた時に、ちょっと相談したことがあったねぇ〜。口添えしようかって言ってくれたけど、断ったんだよねぇ〜。迷惑掛けちゃうし〜」

その言葉に、アレリラは今度こそ最大級に動揺した。