軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9、指輪

ほとんどの生徒はこれが初めてのダンジョン潜入となるため、ワクワクしつつも自然と身体が震えている者が多かった。

それもそのはず。一瞬でも気を抜けば命を落とす危険な場所。

教師のサポートがあっても、過去に何度か命を落とした生徒もいるくらいだ。

「本来ならばダンジョン訓練はもっと後なのだが、諸事情により本年度からは最優先事項となった」

エフィナのレベル上昇の概念から考慮し、学園長判断でダンジョン訓練を前倒しにすることが決まったのである。

「本来ならばクラス一丸となってダンジョンに入るのだが……今回ばかりは特例命令が下されている」

そう言ってエフィナとライトに顔を順番に向けた。

「エフィナ=フォゲルダならびにライト=ファーゼント。二人だけでダンジョンに潜ってもらい、そのあと我々が一丸となって潜る」

ライトを推している一部の同級生はそれを良しと思っていない。むしろエフィナに対して睨むものすらいたのである。

一方で、ゼムの指示に対して一番驚いていたのはエフィナだった。

(ダイエットをしているところなんて見られたくなかったのに……特にファーゼント殿下には!)

そうは思っていても、王立学園のダンジョンがどのような場所なのか、エフィナは楽しみで仕方がなかった。

ダンジョン=ダイエットの宝庫と思い込んでいるのだから。

「明日に向けての再確認だ。皆には王立学園専用の指輪を装着し潜入してもらう。安全を最優先に配慮した基本となる五種類になっている。……なおすでに指輪を装着している者はそれで潜入してもらうしかないがな」

明らかにエフィナ個人に向けられて言っているのだが、それを他の生徒は理解していなかった。

唯一ライトだけがクスクスと笑いそうになるのを堪えていた。

生徒がそれぞれ指輪を受け取ると、ゼムの詳しい説明が始まった。

「親指に生還の指輪、致命傷を負った場合に自動的に地上へ転移できる。これは絶対的に必須で基本の指輪となる」

エフィナは初めてそのことを知るが、それではダイエットに支障が出てしまうではないかと心の中で反論していた。

口にはしていない。

「人差し指に帰還の指輪、任意で地上へ転移できるが、自身の魔力も消耗する。ゆえに魔力は決して切らしてはならない」

エフィナは幼少期、ダンジョン内で何度か魔力を切らしたことがあった。

だが、持ち前の根性とダイエットへの情熱によって自力で地上に脱出したことがある。

こんなに便利な指輪があるなら装着していたが、当然ながら存在すら知らなかった。

姉のアンブレアや母親がエフィナのことを殺そうとしていたことがよく理解できたのである。

「中指には強化の指輪、これによって自身の身体だけでなく身につけている装備の強度も上がる。そして薬指には回復の指輪、身体を徐々に回復させるため万一魔力切れになっても時間が経てば帰還の指輪も使えるようになる」

付け加えて、だが決して魔力切れは起こすなと二度忠告していた。

それほど魔力切れが危険なのだと教える。

エフィナは何度か実体験をしたからこそ、うんうんと頷き共感していた。

「ここまでがほとんどの者が統一している指輪だ。最後の小指、ここは個人の判断で決めるのだが、王立学園においては安全配慮を重視するべくエマージーの指輪というものを装着してもらう」

今まで無言で冷静だったライトが一瞬だけ、なぜだといった態度で反応した。

今までと指導が変わっているためであった。

「これはダンジョン内においてモンスターの群れの出現および本来中層や下層に住むモンスターが上層に現れる気配があった場合に知らせる指輪だ。これが反応した場合、直ちに帰還の指輪で脱出すること」

説明を終えたところで、ダンジョン未経験の生徒たちは全員指輪を装着した。

ライトはしばらく考えた末、ポケットにしまうのである。

エフィナは元々経験値倍加の指輪を五本の指全てに装着してしまっているためなにもできない。

同じくポケットにしまうしかできなかった。

講習が終わり、エフィナはすぐさまゼムがいる教壇へと向かう。

ゼムはまたぶっ飛ばされるのではないかとヒヤリとしていた。

「な、なにか問題があったか?」

「いえ、そうではなくてですね。ちょっとお願いがありまして」

「可能な限りは聞く。無理だと言っても暴れるなよ?」

「運動はしたいけれど暴れませんよ。もし可能であれば……」

一日も早くダイエットがしたかったエフィナの願い。

ゼムはエフィナのお願いを聞いてむしろホッとすることになった。