軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17、ライト=ファーゼント無双

「これはひどい……!」

「ね、気持ち悪いでしょう?」

エフィナが毎日通っていたダンジョン。

ひとつ降りるとダンジョン内はスライムで埋め尽くされていた。

まともに歩いて進めないほど、ぎゅうぎゅうになっていてスライムにとっても身動きが困難な状況だ。

本来であれば腰を抜かしてしまうほど驚く状況だが、ライトはむしろプラス思考に捉えていた。

心置きなく鍛錬できるのだから。

「本当に俺が全て倒しストレージに収納してしまっていいのか?」

「そうしていただけると本当に助かります……」

ライトは腰にぶら下げている剣を構え、一体ずつ着実に仕留めていく。

エフィナはライトの無双っぷりに見惚れていた。

「いつも邪魔!!」

――バシャン!!

エフィナに襲ってくるスライムはエフィナの魔法によって跡形もなくバラバラになった。

エフィナにとっては、まるで息を吸うかのようでなにごともなくスライムは散っていく。

何事もなかったかのようにライトの動き方に無我夢中だ。

しばらくすると、ダンジョン内に埋め尽くされていたスライムも半数ほどに減る。

するとライトがなぜか剣を腰に戻してしまったのである。

「なんで武器をしまってしまうのですか?」

「ここからが本番だ。自分のレベルをもっと上げたい」

ブヨブヨネバネバしているスライム相手に対して素手で攻撃をしていく。

エフィナにとっては信じ難いことで驚いていた。

だがライトの身体レベルは91。騎士団にも匹敵する力量によって、徐々にではあるがスライムを仕留めていく。

可憐で繊細な動きをするライトを見て、エフィナはますますベタ惚れていった。

とはいえダンジョンは広い。

ライトは休み暇もなく動き続け、息が上がっていた。無限に湧き出てくる勢いのスライム軍を相手に、徐々に劣勢になっていく。

戦闘経験が豊富なエフィナであるからこそ、このままではマズいと思った。

だが、ライトはエフィナに待ったをかける。

「このままでは……」

「ああ、だがそれでいい」

「な、なんで!?」

ライトは息をあげながらもニコリと微笑んだ。

「最高の気分だ……。立場上今まで制限をかけられ自由に動けなかった。だがエフィナのおかげでとことんまでに鍛錬できる……。礼を言いたい」

そう言ってライトは再びスライムに立ち向かっていった。

たかがスライムといえど、騎士が武器を使っていたとしても倒し切れる数ではない。

ライトの意欲と根性でレベルを超える動きを見せていたのだ。

しかし、身体は正直である。スライムの残党がわずかになったタイミングでライトの片膝が地面に着く。

「ファーゼント殿下!?」

「大丈夫だ。小休憩に過ぎない」

「しかし……」

ライトはすぐに立ち上がり、スピードは鈍っていても一体一体スライムを倒していく。

そして視界に入る限り最後の一体を倒した。

滝のように汗をかき、その場でしゃがみ込んでしまう。

エフィナはすぐにライトのそばまで駆け寄った。

ライトはすぐに立ちあがろうとするが、それができなかった。

エフィナは感動のあまり、すかさずライトに肩を貸す。

ゆっくりと立ち上がった。

「バテテしまうなんて情けないな」

「なにを言っているのですか。とってもカッコよくて勇ましかったです!」

「目的のためにはこれくらい軽々突破できなければならないんだ」

エフィナは自分の過去を振り返り考えた。

まだダンジョンに入りたてのころ、同じようにスライム集団に襲われたことがある。

ダイエット目的とはいえ、恐ろしさのあまり逃げた。さらにスライムによるネバネバブヨブヨの液体まみれになった経験があり、それ以降スライムが大の苦手になったのである。

しかし、ライトは真っ向に挑み、限界を超えても闘い続けていた。しかも武器を使わずにだ。

「いくらレベルが高かったとしても、私にはこんなことできません。何の目的かは私にはわかりませんが、これだけ頑張ろうとした姿、本当にカッコいいと思います」

「まだ終わっていない。この残骸を回収しなければならないのでね」

「……手伝いますか? あ、所有権がどうのこうのでしたっけ」

「いいのか? 俺にとっては所有権などどうでもいことだが、エフィナはスライムが苦手なのだろう? ストレージにスライムが入るだけで嫌だと言っていたではないか」

「それはそうなんですけど……」

ライトがこれほどまでに頑張ったあと、何度も往復させて回収というのはさすがに申し訳ないと思っていた。

数十センチから最大で人間の身長ほどのスライムの残骸が千体を軽く超えている。

「何往復くらい必要ですか?」

「概ね十往復もあれば終わるだろう」

「だったら残りの九往復分は私が収納しちゃいますよ。あとでファーゼント殿下に責任を持ってお返ししますから」

「正直なところ非常に助かる。だが本当にいいのか?」

「ファーゼント殿下の頑張りを見ていたら、私も頑張らないとと思えましたから」

「わかった。よろしく頼む」

まずライトが可能な限りスライムをストレージに収納していった。全体の十分の一程度の容量かと思っていたが、実際には三割ほど収納することに成功したのである。

続けてエフィナが、ダンジョン内で生き絶えている全てのスライムを一瞬で収納した。

「今日は本当に感謝する」

「いえいえ、むしろ私のお願いを聞いてくださって助かりましたよ」

「エフィナがいてくれたからこそ、本来の特訓ができたんだ。俺の方からまたお願いしてもいいか?」

「え!? むしろよろしいのですか!? 私みたいな人で」

「なにを言っている? エフィナは自分のことを過小評価しすぎだ。エフィナの素晴らしさを誰も理解していないのが不思議なほどに」

推しからそのようなことを言われてしまったらたまったものではない。

隠し切れないほどの真っ赤になった顔を見せないように必死だった。