軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

試し

「これが良いかな」

俺が手にしたのは、そこそこの長さと太さがある木材だ。半分に割れば、鞘と柄にちょうど良いだろう。

試し斬りで割れば、加工もできて一石二鳥というやつである。他人の依頼であれば、こういう『雑』なことはしないのだが、今回は俺が自分で使うものなのだし、問題なかろう。

「ん? エイゾウ、それ、試すのか?」

「ああ」

ヘレンに声をかけられて、俺は刀のほうを軽く持ち上げた。

「アタイも見たいんだけど」

「俺は構わんが……」

俺が言うと、ヘレンはサーミャのほうを見た。サーミャは小さくため息をついたが、頷く。

「こっちももう終わるとこだから行ってこい」

それを聞いたヘレンは、喜色満面の笑みを浮かべると、着ていたエプロンなどを脱ぐ。

去年ぐらいまでは脱いだエプロンをそこらへんに置いていたりしたのだが、ディアナの教育の賜物と言うべきか、ちゃんと棚に置いていた。

「お待たせ」

「おう」

俺はヘレンを引き連れて外に出た。太陽も今日の仕事を終えつつあり、遊んでもらえる時間が近いからだろう、クルルたちが庭の片隅でのんびりとくつろいでいた。

「クルルルル」

「ワン!」

俺とヘレンが出てきたのに気がついたクルルとルーシーが駆け寄ってくる。

その後をハヤテとマリベルが飛んでついてきた。

「キュイッ」

「今日は早いね」

駆け寄ってきた娘達をヘレンが宥める。

「こらこら、アタイたちはもうちょっとだけ仕事だから、少しだけ待っててくれよ」

娘達はヘレンから少し離れる。だが、俺たちが何をしようとしているのかについては興味津々なようだ。

「危ないから、ちょっと離れてるんだぞ」

想定している切れ味なら、割れたものや破片が飛び散るということはないだろうが、気をつけるに越したことはない。

安全ゴーグルみたいなものができるなら、俺たちはもちろん、娘達にも作ってあげたいところなのだが、水晶とかそういうのになってしまいそうだな……。

さておき、俺は庭の真ん中に木材を置くと、茎を持って刀を構えた。不自然ではあるが、性能を見るだけなら問題ない。

「よっ」

我ながら、いささか気の抜けた声で刀身を振り下ろす。コツンと軽い手応えが手に伝わってくる。

普通の……というか、この世界にある大抵の刃物であれば、今の感触では木材に僅かな傷が入れば御の字と言ったところだろう。

だが、我がエイゾウ工房製の最上級品質は違うのだ。ストンと、まるで最初からそうであったように、木材は縦に割れ、左右に分かれて倒れた。

娘達のはしゃぐ声と、ヘレンの拍手が聞こえる中、俺は木材を手に取る。

「ふむ。大丈夫そうだな」

木材の断面は、機械に通したかのような綺麗さだ。これならば十分に護身の役には立つだろう。

切れ味は想定通りだったが、問題は耐久性のほうだ。もし、誰かに奪われた場合には、あまり長持ちしてもらっても困る。

かと言って、当然ながら2回や3回切り結んだだけでダメになってしまうようなら。これはこれでやはり問題だろう。

「なあ、お前が前に使ってた……アンネが持ってきた剣って、そこそこはもつ感じだったか?」

おれはヘレンに聞いてみた。彼女には今使っているものよりも前に、特注品の剣を打ったことがある。

確か一度調整に来ていたから、もつにしても限度はあるはずだが……。

「そうだな。アタイが使ってあと半年もしたら、もう一回持ち込むかもって感じだったな」

「ふむ」

ヘレンの膂力とスピードがあってのダメージではあるが、扱いが上手くてその分のダメージが少ないであろうことを差し引くと、恐らく同じくらい。

「こいつはどうだ?」

俺はヘレンに刀を差し出す。彼女は受け取って、刀身をしげしげと眺めた後、木材の片割れを指差した。

「あれを斬ってもいいか?」

「ああ、片方なら」

「わかった」

ヘレンは木材の片方を地面に立てると、それに向かって無造作に振り下ろした。

音もせず、木材は再び真っ二つに分かれる。

「うーん、ちょっと扱いが難しそうなぶん、普通のやつが扱ったら逆に3ヶ月くらいでダメになるかもな」

見事な切り口だが、ヘレンには納得がいっていないらしい。今斬った切り口を見て口を「への字」に曲げている。

「なるほど。じゃあ、奪われて迷惑をかけるとしても最長それくらいか」

切れ味は単に研げば戻るというものでもない。ちゃんとした調整などなど、細かい部分での作業があってはじめて戻るものなのだ。

……と、チートが教えてくれている。であれば、恐らくは3ヶ月程度やたら切れる武器を持った何者かが出現する可能性はあるが、それ以降はぱったりと沙汰止みになるだろう。

俺は内心ほっと胸をなで下ろしながら、

「ま、なんかあったらアタイが取り返してきてやるよ」

と言うヘレンに笑って感謝を伝えるのだった。