軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〝遺跡〟へ出発

ボーマンさんに「簡単なもので申し訳ございませんが」と言われた夕食は、確かに調理はシンプルなようだが、口に運んでみると良い素材を使っているのがよく分かる。

なので、俺とヘレンはそれについて礼を言っておいた。

食卓にはマリウスの姿はない。いよいよ明日には一度〝遺跡〟に潜る。その最後の準備をしているらしい。偉いさんの相手となると大変だな。

俺とヘレンは夕食のあとすぐ、それぞれに宛がわれた部屋で早々に休んだ。これはこれで、俺たちの準備である。

翌朝、窓から差し込む明かりで俺は目を覚ました。

もしかすると、まだ暗いうちに起きてしまうかもと思っていたが、実際には思っていたよりも疲れていたようだ。

今日に備える意味では、俺の身体がナイス判断をしたと言えるだろう。

ベッドから身体を起こした俺はグッと背を伸ばす。小さく背骨のあたりから音が聞こえた。30代に若返った身体なので、前の世界の時ほどではなくとも多少ガタが蓄積してきたようだ。

「これが終わったら、ちょっと休むか……」

前の世界とは違い今は多少、休日というものを確保できるようになっている。それに甘えさせて貰って身体を休める時間を確保しよう。

そして扉を開けて部屋の外へ出ると、そこには着替えを持った使用人さんがニッコリと笑みを湛えて待ち構えていた。

「あ、朝食前に着替えるんですね」

「はい!」

元気よく答える使用人さん。よく考えれば、今のラフすぎる格好で他人の家の食堂に向かうわけにはいかないか。

俺は降参のポーズをとって、今度はクスクス笑う使用人さんに、今出てきた部屋へと素直に押し戻された。

「うーん、我ながらぎこちない」

「あら、お似合いですよ」

テキパキと着替えを済ませた使用人さんは再びクスリと笑うと、一礼して俺の先導を始めるのだった。

途中でやはり着飾ったヘレンと合流し(やはり俺以上に居心地悪そうにしていた)、食堂に入ると、いつもよりも多少派手な服に身を包んだマリウスが席に着いていて、その前には朝食が並んでいた。

「ふふ、やはり似合ってるね、2人とも」

そう言ったマリウスに対して、俺は苦虫を噛みつぶしたような顔になる。ふと横を見れば、ヘレンも同じような表情をしていた。

それを見てマリウスが小さく笑う。こういう悪戯っぽいところは、どんな服を着ていても変わらないらしい。

「良いからサッサと食って向かおうぜ。なあ」

「おう」

着ている服に似合わない口調で俺とヘレンは言葉を交わす。それを見ていたマリウスが大げさに肩をすくめると、出発前の朝食が始まった。

俺たち三人は手早く朝食を済ませ、そのまま出発の準備も済ませた。まあ大体はボーマンさんたちが整えてくれていたのだが。

ちゃんと俺とヘレンが調達したものも、それぞれの行嚢に収まっている。

「大丈夫でしたか?」

「ええ、バッチリです。ありがとうございます」

「いえいえ、とんでもないことです」

にこやかに恐縮するボーマンさんたちに俺とヘレンは礼を言って、屋敷の入り口に回されていた馬車に乗り込む。

御者はマティスだった。普段は馬番をしているが、今日は御者もやるらしい。

「よお」

「おう」

相変わらずの言葉少なさで俺とマティスは挨拶を交わす。マティスは全員が乗り込んだことを確認すると、手綱を操って馬車を動かし始めた。

屋敷を振り返ると、ボーマンさん達が並んで見送ってくれている。俺とヘレン、そしてマリウスは一度大きく手を振って、〝遺跡〟へと向かうのだった。