軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オリハルコンのナイフ

「いくぞー」

「あいよ!」

オリハルコンをマリベルに渡して俺は鎚を振るい、再び魔宝石を作りだす。何度もこんな作業をしていて、高まった魔力が妖精族の目に留まったのだったか。

あれがなければ、いつでも魔宝石が作れる体制にしておこうとは思わなかっただろうなぁ。なんせすぐ消えてしまうのだ、一見して利用価値のあるものではない。

メギスチウムの加工にせよ、そうそう飛び込んでくるような話でもないし、そうそうに「魔宝石キット」は廃棄していたに違いない。

そう考えると、妖精族の皆になにかちょっとしたお礼でもしたほうが良さそうに思えてきた。

どこかのタイミングで何が欲しいか聞いてみるか。

そんなことを考えながらも俺は鎚を振るう。オリハルコンをリケと2人で叩いていたときとは比べるべくもないが、それでもなかなかに澄んだ音を鎚は響かせる。

耳でその澄んだ音を聞きつつマリベルが、

「ぐぬぬぬぬぬ」

とか言いながらオリハルコンを加熱してくれている方へ時折目をやる。オリハルコンの加熱も数度(彼女がこの作業に従事したのは今回が初めてではないらしいが)となると手慣れてきたのか、少し温度の上昇が早い。

まぁ、ナイフ程度の大きさでやたら時間がかかるようだと大剣なんかは作れっこないし、この辺の塩梅はそのうち慣れていくだろう。

俺も置いてけぼりにされないように頑張らないとな。マリベルが余裕綽々なのに、俺がヒイコラ言っているわけにもいかないし。

だが、今は多少ヒイコラ言うのも仕方ない面があるのも確かで、思っていたよりも早いオリハルコンの温度上昇に遅れまいと、ペースを上げて魔宝石が生成される鋼の箱を叩いた。

「こっちいいよ!」

「よし! せーの!」

簡易魔力炉(という名の鋼の箱)の蓋を開け、中に魔宝石が生成されていることを確認したら、マリベルから素早くオリハルコンを受けとり、金床に移す。

さっきもやったのと同じことを、より素早く、より丁寧に行う。

「やるぞ!」

「はい!」

今度は綺麗な澄んだ音を響かせる俺とリケ。リケも先ほどよりもハンマーの動きに迷いがない。

加減はさっきのである程度掴んだようだ。さすが我が弟子優秀である。惜しむらくは今それを言ってやるタイミングがないことだが。

やがて魔宝石が再び姿を消した。後に残ったのは……。

「おお……」

黄金色に輝くオリハルコンは虹色の光を纏い、優美な曲線を見せていた。

これで形が出来たとするにはもう一息、というところだが、なんとなく最終的な完成形は見えてきたと思う。

ナイフと言うにはやや華奢にも思えるが、材質と贈り物であることを考えれば、少し装飾過剰なくらいでいいか。

「親方は最初からこの形を狙ってたんですか?」

ずっとハンマーを振るっていたリケが肩で息をしながら俺に聞いた。俺も負けず劣らず、肩で息をしながら答える。

「いや、全然。こうかなと思いながらやってたら、こうなった」

自然石を彫る彫刻家は「石の中に形があるからそれをなぞっているだけだ」と言うそうだが、感覚的にはそれに近い。

ただ、俺の場合はチートの手を借りている点が大きく違う。チートと俺の感覚で「この辺を叩くのが良さそうだ」と思いながら作業をしていたらこうなった。

なぜそう思ったのかは自覚がない。ここらをちゃんと自分の意志で狙ってできるようにならないとなぁ。

「でも、良い形だと思いますよ」

「なら良かった」

笑って言うリケに俺は笑いかえした。ソワソワしているマリベルにもヤットコで掴んだオリハルコンを掲げて見せてやる。

「どうだ?」

「おー、かっこいいな!」

「マリベルのお墨付きなら問題ないな」

俺はそう言って再び笑う。リケもマリベルも笑った。うちの“仕事”ではなるべく笑顔は絶やしたくないものだが、集中すると抜けることもあるからな……。

「よーし、それじゃあ続きだ」

『おー!』

元気よく応えたリケとマリベル。俺はほんわかしながら、三度鋼の小箱を手に取った。