軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬よ来い……?

そして数日が過ぎた。物自体はシンプルなのが功を奏してか、ストーブは十分に揃い、熱を伝えるための煙突も巡らせてある。

居間に大きめのが1つ(これは最初に完成したやつだ)あり、俺の部屋にも1つ、これは客間も暖めるようになっている。もちろん、色んな意味で客に火を扱わせるわけにはいかないからだ。

ディアナ達のはディアナの部屋に1つ置くことになった。一番寒がりなのは彼女だったからだ。ディアナ、サーミャ、リケの部屋を暖める。

比較的寒いのに慣れている3人のは、アンネの部屋に置くことになった。

リディは森で暮らしていたし、ヘレンは傭兵ということもあって厳しめの環境にも耐性がある(と言葉は違うが言っていた)ので、帝国がここよりやや寒冷な気候だと言っても、そこは皇女様ということもあってアンネの部屋になったのだ。本人は「気にしないのに」と言っていたが、家では暖炉もあったと言うし、あったほうが良かろうという結論になった。

期せずして、うちでは身分の高い2人……そう思われている、と言うことであれば俺も含めて、居間においてあるものを除いては全て身分の高い(高かった)人間の部屋に設置されたことになる。

ディアナもアンネもなんか少しワクワクしているみたいなので、それならそれで良かったかも知れない。

クルルたちの小屋については意見が割れた。時間はあったので、もう1つ作って小屋に設置しようかという話も出たのだ。

ただ、当然それには危険が伴う。何せ火だし、小屋は木造だ。裸火にならないように出来るが、それでも事故を防げるわけではない。朝起きたらクルルやルーシー、ハヤテが火傷していたなんてことは避けたい。

それはそれとして、寒いのはかわいそうだ、との意見も出た。まぁそれも大いに分かる。寒空の下、凍えてやしないか、と思うとそれはそれで気が気でないし。それに、うちの娘達は非常に賢い。火傷をするような真似はそうそうしないだろうと言われれば、俺も頷く。

しかし、結論としては小屋にストーブを置かないことになった。

その話になった夕食後のこと。

「ルーシーはこの森の生まれだからなぁ。将来を考えると、ここを居心地良くしすぎるのも良くないかも知れん」

俺はそう言った。かなり体が大きくなってきて、子狼から子が外れつつあるルーシーだが、将来的にここを離れて暮らすという選択肢もあるのだ。もし彼女がその選択をするなら、俺にそれを止める気はないことは常日頃から言ってある。

「それはそうねえ……」

ディアナがやや口を尖らせる。彼女もそのあたりは理解しているのだが、感情としてどこか納得いかないのだろう。それはそれで理解できる。俺もそうであることには変わりないからだ。

「ずっとうちにいるだろうクルルとハヤテ……ハヤテはもしかするともしかするかもだけど、まぁ2人のことがあるのも承知はしてるけどな」

「走竜が広く、暖かい地域の生き物なら……というところですけれど、走竜の大半は少し寒い森で暮らしてるそうですからね。エルフの村の中には大規模に走竜を飼っているところもあるらしいので」

俺の言葉に、リディが続いた。彼女の言うとおりであれば、クルルも森での生活には慣れているか、これが初めてにしても極端な事態には陥らなさそう、ということだ。まぁもしマズいことになるようなら、カミロも俺に譲ったりはしなかっただろうが。

「んで、ハヤテは北方生まれだよな」

更にサーミャが続く。この世界の北方が極寒の地域である、ということではないが、ここよりも寒いらしいことはカレンさんとの何気ない会話の中で出てきていた。

そこで大人になるまで成長してきたハヤテなら大丈夫だろう。

「温泉のとこの池もあるから、寒かったら行くんじゃないか?」

そう言ったのはヘレンだ。池というのはこの森の動物が浸かりに来ている、温泉の排水を流している池のことだ。あそこなら結構広いし、体を温めるには十分だろう。湯冷めが心配になるが。

ちなみにヘレンは剣の稽古でディアナとアンネでやるときなんかに足の速さを活かして、池の動物を見に行っているらしい。ディアナが大層羨ましがっていた。増えたりしないだろうな、“迅雷”。

そんなこともあって、最近はディアナとやり合う機会が増えたらしいアンネがディアナに言う。

「それに、ドテラを着せていたら平気なんじゃない?」

「それもそっか」

そう、俺とサーミャとリケがストーブを作っている間、皆はドテラ作りを進めていたのだ。それも人間のものよりも娘たちのを優先して。

それで、桃色のルーシー、薄緑のクルル、黄色のハヤテ、と色違いのドテラを着て飛び走り回っているところを最近は見かける。

「いつもみたいに、羽織らせてあげれば大丈夫だと思うよ」

皆お茶の中、1人夕食のときに少し飲み残した自分のワインを飲んで、リケが言う。

娘たちも身体を動かすと暑くなるのか脱ぎたがるのだ。それで紐をくくらずにまとめておき、羽織るだけにしておいてやると自分たちで脱いだりしはじめたので、最近は最初からそうしている。

流石に脚を通すのは難しそうだが、ひっかぶるくらいまでなら、これも自分たちで出来る(大体はクルルが他の2人にやってあげているが)ようで、気がつけばドテラをひっかぶってウトウトしていたりする。そして俺の肩のHPが減ったりもするわけだ。

さておき、そんなこんなで、危険性が高くなるストーブを設置するのは一旦見送ろうということになったのである。

これで我が“エイゾウ工房”の冬支度は整ってきた。この世界での初めての冬はどんなだろうか、俺は不安とワクワクを半分半分に感じながら、その日は眠りについたのだった。