軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後は仕上げを

頂点付近に矢が刺さった丸太の下部に、俺は槍を突き刺した。ディアナも俺と反対側を同様に突き刺している。

その間を一陣の風が過ぎ去る。ヘレンだ。彼女はその勢いのまま、丸太を蹴りつけた。ズシン、と音がして丸太が地面に倒れる。俺とディアナはそれに合わせて槍を抜き、今度は丸太の上部に突き刺す。

直後、大剣を振りかぶりつつアンネが駆け寄り、丸太が 邪鬼(トロール) であれば頭にあたるだろう付近へ振り下ろす。地面が揺れたかと思うような音がして、イマジナリー頭部は砕け散った。

動きを止めるところまでは午前中と同じだが、そのあとヘレンが地面に倒してからアンネがとどめをさす流れを、昼食後に動きを確認して練習している。これはその1回目だ。

「1回目にしては動きがいいな。普段、狩りで連携取ってるからかな」

「ああ、それはありそうだ」

互いに肩で息をしながら、俺とヘレンは会話を交わす。午前中もいい動きをしているなと思っていたが、普段から狩りであれこれ連携しているのが、こういうときに役に立つんだな。

刺さったり弾かれたりしている矢をサーミャとリディが回収しているのを横目で見ながら、俺は言った。

「俺が足を引っ張らないようにしないといけないな」

狩りに出ていないのは俺とリケの2人だ。アンネだって何回か狩りに出ていて、勢子やなんかを務めている。前に出ないリケはいいとして、問題が起きるとしたら俺のところでだろう。

「ちょっと間を広く取って、後ろにいたほうがいいかな」

「んー」

ヘレンは腕を組んだ。ガシャリと身につけたものが音を立てる。

「エイゾウはアタイとやりあえるくらいだから、なるべく前にはいて欲しいんだよな」

「ふむ」

うちを戦力、と言って良いのかどうかは分からないが、そういうもので順位をつけるとしたら、チートをもらっているからではあるがヘレンの次が俺であることは間違いない。その後は接近戦でいうならディアナだろう。しかし、そこまでは大分隔たりがある……らしい。前にヘレンがそんな事を言っていた。

となれば、ここで俺が後ろに下がって、その分戦力を減じてしまうと痛いのはわかる。

「“首を落とせば勝ち”なんだから、ある程度エイゾウに合わせて周りが動いたほうがいいと思う。多少動きが悪くなったとしても、エイゾウが抜けるよりはいいはずだし」

「なるほど」

戦闘のプロがそう言うのであれば、俺はそれに従うだけである。専門家の言うことは素直に聞いておくのが一番だ。

「よし、それじゃあもう1回やるか!」

ヘレンがパンパンと手を叩き、俺達は「うぇーい」と少々気の抜けた返事をしながら、配置に戻った。

それから手頃な丸太が無くなりそうなくらいの回数練習をした。ヘレンが丸太を倒す方向も毎度違っていたし、丸太を倒さないパターンや槍だけで仕留めるパターン、それにあまり想定したくはないが、数名戦闘不能になった場合も考えて動きを確認した。

そこではっきり分かったことがある。

「分かっていたけど、想定上はヘレンが倒れたらガタガタだな」

「そりゃあ、自分で言うのもなんだけど、アタイだからなぁ」

ヘレンが倒れたと言う想定で、仮想邪鬼としてヘレンが全力で俺たちにちょっかいをかけた結果、ほとんど手出しが出来ずに撤退の選択肢を選ぶ他無くなってしまった。

援護射撃の練習のときもちょっかいをかけてきていたが、あれは本気ではなかったということだろう。

「再挑戦が何回出来るかは分かんないけど、アタイが倒れたら一旦退いて態勢を立て直したほうがいいだろうな」

「そうだな」

「その時はちゃんと回収してくれよ?」

「当たり前だろ。多少無理してでもそうするさ」

俺がそう言うと、ヘレンは少し顔を赤くして、「へへっ」と笑った。

俺は全員を一旦丸太のところに呼び寄せた。丸太はやはり天辺あたりが砕けている。俺とサーミャ、ヘレンにクルルとルーシーは地面に直接座り、他のみんなは丸太に腰掛ける。

「撤退のときについて、ちゃんと確認をしておこう。ヘレンが戦闘不能になったら即座に撤退する」

俺が言うと、全員が頷いた。分かってるのか分かっていないのか、クルルとルーシーも返事をして、俺は思わず笑みをこぼす。

「次に俺とディアナかアンネのどちらかが戦闘不能になったとき、この場合も撤退だ。態勢を立て直す」

再び全員が頷く。

「あとはそうだな……」

「あとは適宜判断だけど、状況が酷くなりそうなら撤退する。命があれば再挑戦もできるし」

俺が言おうかなと思っていたことをヘレンが言ってくれたので、俺は大きく頷いた。

気がつけば日がだいぶ傾いていて、夜がもうそこまで来ている。時間は限界か。あとは明日、本番で上手くいくことを祈るしかないな。

俺が訓練の終了を皆に告げると了解の声が返ってきて、各々身体の汚れを落としに家に戻っていくのだった。