軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お許し

邪鬼(トロル) か……。前の世界だとデカくて力が強い、ってのと日の光に弱いってあたりがメジャーどころだった気がする。あのカバみたいな妖精? 精霊? も名前は邪鬼ではあるが、あれは度外視して良かろう。

こっちの世界でも厄介な存在であることは、「この森の最強戦力をあてる」と森の主であるリュイサさんが宣言する以上間違いない。

「なにか特徴ってあります?」

「そうねぇ……」

リュイサさんはおとがいに手をあてる。“大地の竜”の一部で精霊に近いはずなのだが、仕草が妙に人間臭い。もしかすると俺たちに合わせてくれているのかも知れないが。

「身体が大きくて力が強い、太陽の光を浴びると弱体化する、あたりが特徴かしらね」

「ほほう」

前の世界の邪鬼は日の光で石化したりと、大ヒット漫画の鬼みたいな特徴があったと思うが、こちらの邪鬼は弱くなるだけらしい。

鏡面仕上げにした盾を山ほど持っていって、太陽光を反射させて洞窟内に導いて邪鬼にヒットさせる手法は無駄ではないがコストに見合わない、ということになるな。

仮に一部分でも石化させることが出来れば、大幅な能力減退が見込めたのだが、弱体化だけではなぁ。あるいは弱体化に賭けるのも手ではあるのか?

いや、今ここで結論を出すべきことでもない。明日1日は貰えたものとして、対策はそこでじっくり考えよう。

……なんとなく脳筋の結論が出そうなことからも、今は目を逸らしておく。

今日はひとまずここまでだ。俺はリュイサさんに言った。

「では、明後日の朝にまたここへお願いします」

「ありがとう。それじゃ、また明後日ね」

リュイサさんは現れた時と同様、光に包まれて消えた……と思ったらまた現れた。俺をちょいちょいと手招きしているので、近寄ると耳打ちをされた。

「エイゾウくん、あなたがなぜ、どこから来たのかは私、つまり、“大地の竜”は知ってるわ。それでもこれまでこの世界から排除されてこなかったのは、 そ(・) う(・) い(・) う(・) こ(・) と(・) だと思ってくれていいからね」

一瞬、俺はどう反応していいか分からなかった。今かなり大事なことを言われたような。

「あ、ありがとうございます」

俺はとりあえず小さく会釈をする。こんなノリで聞いていい話だったのか疑問だが、とりあえず世界がうんたらなんかで弾き出される未来がなさそうでホッとした。

リュイサさんは頷いて「じゃあね」と俺たち皆に手をふると、今度こそ光に包まれて消えていった。後には俺達とジゼルさんが残される。

「それでは、私達からもよろしくお願いします。こちらでなんとか出来ればよかったんですが」

申し訳無さそうにジゼルさんは頭を下げた。

「いえいえ、適材適所、こういうことなら我々のほうが得手でしょう」

本業はただの鍛冶屋だけどな。いかんせん副業(?)の攻撃力が高すぎる。

「ありがとうございます。それでは」

ジゼルさんは再び頭を下げると、ふよふよと飛び去っていった。妖精さん的にはリュイサさんみたいに消えたり出たりってのは、はしたないんだっけか。

「よーし、それじゃあメシにするか!!」

空元気ではあるが、俺が大声でそう言うと皆から賛同の声が返ってきて、ぞろぞろと家に入る。もうすっかり暗くなった森を背に、俺は家の扉を閉めた。

夕食の時に話題に上るのは、やはり邪鬼のことである。細かい戦術なんかの打ち合わせは明日に回すとして、ざっくばらんな話題として出てくるのは仕方のない話だろう。

「エイゾウとリディは魔物討伐したことがあるんだろ?」

「あるよ。お前を助けに行くちょっと前の話だ」

ヘレンに聞かれて、俺は頷いた。なんだかもう随分昔のことのようにも思えるが、そんなには経っていない。

「その時はどうだったんだ?」

「あれは“大量発生”だったからなぁ。伯爵閣下の部隊が小物を抑えている間に、頭を俺たちが叩いたってとこだ。リディが魔法を使ったけど、起き上がってきたときには色々覚悟したなぁ」

「エイゾウでもか」

「おいおい、俺は鍛冶屋だぞ。まぁ、でもそうだな。かなりの激戦ではあったよ」

あれはあれでかなりの接戦だったように思う。俺があまり怪我しなかったのは、「一撃でもまともにくらえば死ぬから」で、骨折になるような攻撃をくらえばその時点で第二の人生が幕を閉じていただろうから、必死に避けたというだけの話である。

「魔物自体には臭いがないのは皆には朗報かもな」

澱んだ魔力から発生する魔物は生物ではない。声は出すが呼吸もしておらず、血液が体内を巡っているわけでもない。失血死や洞窟の入口で煙を焚いて燻り出す方法は取れない。

だが、新陳代謝もないという事は臭いがないということだ。前の世界の作品によっては「くさい」という本人(?)が知ったら自決を考えるのではないかという特徴があったが、この世界ではそうではない。

ただ全く臭いがしないかというとそうではない。魔物が倒した獲物から漂う臭い――大抵は腐臭になりつつあるもの――はある。今回どれくらいになっているかは分からないが、発生して間がないなら、まぁ耐えきれないほどではない……と思いたい。

とりあえず、臭いに困ることはなさそうというのは思ったとおり、既に知っていたリディ以外の女性陣には慰めになったようで、少しだけテンションが上がった。

「どう動くのかとかは行ってみないことにはわからんな。これはリュイサさんも分からんだろうし」

攻略W○kiやワ○ップみたいなものがあれば、それを見てから行きたいところだが当然ながらそんなものはない。ぶっつけ本番だ。騙されたら「あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!」どころの話ではないので良し悪しだ。

「その辺の細かいところは明日また話そう。明るくなってから外でフォーメーションの確認とかもしなきゃだろうし」

「そうだな」

俺が言って、ヘレンが頷き、夕食は粛々と片付けられていくのだった。