軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

昼飯を終えて、再び井戸掘りの続きをする。ここらは開けているから日の光が直接差してくる分、他の場所よりも気温が高い気がする。

それでも、他の場所との気温差でだろうか、対流が起きているのか風が吹いているのが救いだ。

ルーシーは昼飯を食ったら“仕事”を思い出したのか、再び“お手伝い”をはじめた。クルルも土を脇に避ける作業を再開している。

俺たちもそれに負けないようにと土を掘り始めた。

掘り始めて夕方より前。特製のスコップはサクサクと土を掻き出し、それなりの深さになってきた。田んぼに出来る深さはとうに超えていて、俺の肩より少し下くらいである。ペースとしてはかなり良い方だろう。

もう直接外に土を出すのは難しいな。斜面側に置いておき、それを運び出して貰うことにしよう。この作業はクルルが簡易荷車を使ってやることになった。

本人がその荷車の紐を口でくわえて持ってきたので、これはやる気があるという判断になったのだ。

俺たちが土を荷車に載せると、クルルは「クルルルル」と一声上げて運びだし、小山の近くで止まる。

その土をリケ達が鍬なんかを使って下ろすと、クルルは残りの土を運びに戻ってきた。働き者だなぁ。

ここらの土はかなり硬いようで、縁を軽く叩いてもドサッと崩れてくるようなことはない。多分そうそう崩れてくることは無いだろう。それでも用心するに越したことはないか。

「木の板を立てるか……」

「木の板?」

一緒に作業しているアンネに聞かれて俺は頷いた。

「斜面側は大丈夫だと思うが、壁になってる方は崩れ止めをしておこう。深いところで一気に崩れると逃げる時間もなさそうだし」

斜面側は出入りもあって踏み固められているし、角度が急にならないように順次広くしていってるので、多少は平気だろう。

壁側は一気に崩落すると危ないし、十分に離してはあるがテラス方向に崩れると巻き込まれそうなので、少なくともそちら側には矢板を立てておこう。

一辺の最大の大きさはもう決まっているので、その大きさに板を切り出していく。この後、掘り進めていくともっと数が必要になってきそうなので、その分はサーミャやリケ達に頼むことにした。

徐々に小さくなる分は都度切って調整する。余った木も焚きつけなりなんなりで活用できるから無駄にはならないだろう。

切り出した板を1枚、底のところに壁に接して貼り付けるように置く。もちろん板が倒れてきたら意味がないので、長い杭を打っておく。杭と言えば聞こえは良いが、その辺りから適当な細い木を伐ってきたものだ。

それを適当な間隔で打ち込んで、板留めにし、板を積み上げて塀にした。これで崩落は防げるはずだ。

穴が深くなってきたらその分ドンドン継ぎ足していく必要はあるが。

これで一通りの作業順は固まった。後は手順に従って掘っていくだけだ。しかし、この日はもう日が沈みかけていたので、続きは明日することになった。

翌日、この日も晴れていて、抜けるように青い空が見えている。

昨日は体を拭くと結構土がついていた。朝の水浴びの時にはクルルとルーシーにも念入りに水浴びさせたし、こういう作業が今後どれくらいあるか分からないが、あった場合にも井戸があるのとないのとでは、清潔度が違ってくるだろう。

そう考えると、スコップを握る手にも力が入るというものである。

この日は皆、一心不乱に掘り進めた。早ければ今日にも水が出るので、その意味でも皆に気合いが入っているようである。

気がつけば深さは俺やヘレンの身長を超えて、アンネの頭も見えなくなってきていそうだ。

「心なしかひんやりしてきた気はするんだよなぁ」

「エイゾウも?」

そう言ったのはヘレンだ。彼女の担当分はちょっとだけ早く進んでいる。“迅雷”の面目躍如……ということでもないのだろうが。

俺はヘレンの言葉に頷いた。

「さっきまでと汗の出方が違う気もする」

「だなぁ」

一般に水が出る帯水層まで来るとヒヤッとしているという。地面の下の水は外気の影響を受けにくいからで、地下水がいつも冷たいのはそれが理由らしい。

それとは別に、深くまで来たから日の光が遮られているので、その分涼しく感じているのが理由な気がする。斜面のおかげか風も感じるし。

ただ、2メートルかそこらで水が出てくることはあんまりなさそうだ。そこまで浅いところで出てくるとなると、家の基礎を打ったときにもっと湿り気のある土が出てきてもおかしくなかっただろう。さすがに表土とは色が違ったが。

それがなかったということは、少なくとももう少し深いところまでいかないとダメなはずだ。

俺たちは日が暮れるまで、黙々と穴を掘り続け、穴の深さは3メートルを超すほどになった。水はまだ出て来る気配がない。

せいぜい5メートルくらいまでで出てくれると助かるんだが、そう思いながら、俺はその日の作業を終えた。

更に翌日。もう1メートルほど掘り進んだあたりで、スコップを入れた感触が変わった。なんだかずっしりとくるような……。

持ち上げてみると、スコップに乗っていたのは粘土だ。ということはもう少し掘れば水が出る可能性がある。

俺がそれを告げると、ヘレンとアンネはスコップの動きを速めた。目的が達成できそうになれば頑張ってしまうのは仕方ない。

ドサッドサッと重い土の音が続き、やがて砂のようなものが一緒に出てきた。

「掘り広げて様子を見よう」

砂のようなところの露出を大きくとると、俺たちはいったん穴から出て様子を見守る。やっぱり穴の底の方が明らかに涼しかったような気がするんだよな……。

そう言えば汗をほとんどかいていないようにも思うし。

ちょうど昼飯でもあったので、穴のそばで家族みんなで様子を見守りながら(クルルやルーシーが落ちないようにとの見張りの意味もある)昼飯を食べていると、

「あっ!」

サーミャが小さく叫んだ。どれどれと見てみると、まだ濁ってはいるが少し水が溜まりはじめている。それを見て、家族みんなが快哉を叫んだ。

この後やらなければならないことはたくさんあるが、俺は一旦の目的が達成できたことに安堵の溜息を漏らさずにはいられなかった。