軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別の収穫

「もったいないから、色のやつ以外でも美味そうな果実とか、見つけたら持って帰るか。畑に植えたいものでもいいぞ」

風が渡る森の中を進みながら俺が言うと、皆が色めき立った。特にリディは目をキラキラさせている。目当てのものがなにかあるのだろう。

ルーシーは多分よく分かっていないと思うが、皆が嬉しそうにしているのを見てか、尻尾をブンブン振り回した。

「あんまり積むとクルルが大変だろうから、ほどほどにな」

そんな俺の言葉にクルルは任せろと言わんばかりに、フンスと鼻息を荒げた。俺はそのクルルの首筋を優しく叩いてやる。うーん。

「クルル、ちょっとだけ体が大きくなったか?」

「クル?」

以前よりも首にやる手を若干持ち上げているような気がする。気がする、というレベルの話なので俺の勘違いの可能性は十分にある。クルルは可愛らしく首を傾げている。

さすがに走竜の年齢まではよく分からないのだが、かなり若いのだとするとまだ身体が大きくなる可能性は十分にある。

猫は1年で成猫になると言われているが、もうしばらくの間は身体が大きくなっていく子がいるしなぁ。人間でもいわゆる成長期を超えてからでも、身体が大きくなる(腹回りにつく憎きあいつの話ではない)人はたくさんいる。

あとは他所で暮らすときとウチで暮らすときの大きな違いがある。魔力の濃さだ。“黒の森”自体が魔力の濃い地域である上に、その中でも特に魔力の濃い箇所に我がエイゾウ工房は立地している。

魔力を摂取しているクルルにその影響があると考えるのは、そう突飛な話でもあるまい。ルーシーもすくすくと大きくなっているが、まだどう見ても子狼なので、成長期だからなのかの判別はつきにくい。

この森の狼は見る限りでは体長で100センチかもう少し大きいくらいなので、それよりずっと大きくなれば魔力の影響が疑われる。

うちの娘の成長は色んな意味でしっかり見守ったほうが良さそうだな……。

「あっ、あれを根っこごと持って帰りましょう」

リディが指差した先には、肉厚の葉を持った植物が生えていた。

「 火傷(やけど) によく効くんです」

前の世界で言えばアロエに似ているだろうか。火傷に効くと言われているのも似ていると言えば似ている。まぁ、前の世界のアロエの方は成分の関係やらなんやらで、やらないほうがいいらしかったのだが。

インストールの知識でも効くとなっているので、こっちの世界のこれはちゃんと効くのだろう。

「確かにうちだとあったほうがいいな」

「ええ」

うちでは高温の物体を日常的に扱っているにも関わらず、幸いなことにこれまで前の世界で言うところの熱傷深度II度以上の事故は発生していない。

だが、軽い火傷は日常茶飯事だ。ほとんど跡も残らないくらいの軽いものだが、今後うちで処置できるレベルの火傷であれば早く治るにこしたことはない。

全員が嫁入り前のお嬢さんばかりなのだ、肌については気を使って使いすぎることはあるまい。

俺とヘレン、アンネの3人で火傷に効く薬草の株を掘り起こす。うちの畑に植える想定なので、かなり深めに掘ってみたが、それでも根っこの先は切れてしまっていたくらいに長かった。

「よっと」

植え替えなので土は落とさず、茜のような植物の入っていた方とは逆の籠に入れておく。本当はちゃんと根の保護もしたほうがいいんだろうけどな。

リディから特に指示もないので、このまま家に帰って直ぐに植えるなら大丈夫なのだろうと俺は判断した。

「動くとさすがに汗がどっと出るわね」

パタパタと顔を手で仰ぎながらアンネが言った。風が通って気持ちいいとは言っても気温は上がってきているようだからなぁ。鍛冶のときみたいに温度が細かく分かればありがたいのだが。

……といっても、あれもデジタル表示みたいに分かっているわけではなく、「ベストな温度はここ!」みたいなのが俺には認識できるってだけだから、気温が分かっても「今気持ちいいくらいの気温ですよ!」が認識できて「いや分かってるし」となるだけかも知れない。

「着替えとタオルを持ってくればよかったな。そうすれば湖で水浴びできたのに」

ちゃんとした水着はない。のだが、俺は皆で水着を着て水浴びをする情景を知っているような気がした。

「もしそれをしても、エイゾウだけ仲間外れだろ」

「もちろん」

ヘレンの言葉に俺は頷いた。中身は40、外見でも30の男がそこに混じるのは相当にはばかられる。

「じゃ、なしだな」

続くヘレンの言葉に頷いたのは俺以外の全員である。なぜかクルルとルーシーも鳴いて同意を示しているように見える。

「それじゃあ、そのうち濡れても透けないような服がもしあれば、それを着たままでやるか」

「へぇ、北方には水浴び用の服があんのか」

「いや、ないぞ。もしあれば、の話だ」

「なんだよ」

呆れ返ったようにヘレンは言って、俺の背中をバシンと叩いた。俺は「痛っ」と言いながら、そんな機会が来るのも悪くはないかも知れない、とそう思うのだった。