軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

昼飯は保存に回さなかった肉をシンプルに焼いて出した。獲物を持って帰ってきた日のお楽しみでもある。

ちょっとしたお祝いの時のは大抵保存してある肉なので、新鮮な生肉を焼いて食うのはこの時くらいだからな。

いずれとても大きなお祝い事がうちであれば、その時は前日に獲物を持って帰って当日に調理するのだろうが、今のところそんな予定はない。

まさかマリウスの結婚式に猪担いで行くわけにもいかないしなぁ……。

昼飯が終わった後は、めいめいの自由時間ということになっている。リディ達は畑を見に行った。そろそろ香草の一部は収穫出来るかもと張り切っている。

リケはナイフを練習するそうなので、鍛冶場の炉と火床に火を入れた。俺もついでに守り刀の仕上げをしてしまうことにする。

刀身の方は出来上がっているから、後は鞘と柄を作れば良い。今回は結納、と言うか結婚の記念品としてのものなので、白木で鐔もなしにする。一応実用も出来なくはない。

いや、実用出来なくはないというと語弊があるか。仕上がり自体は特注モデルだから、切ろうと思えばなんだって切れる。

とは言え、ディアナから聞いている限りではジュリーさんは特に剣が達者でもないみたいなので、基本どこかにしまうか、飾っておいてもらってもいい。

特注モデルが切れすぎて危ないことはマリウスもよく知っている(何せ使ったことがある)から、滅多なことにはならんだろう。

確保しておいた鞘用の木材に守り刀の刀身をあてて、大体の大きさを測り、外形をチートを使ってナイフで整える。

全く同じものを2枚用意したら、刀身が収まるようにそれぞれ刀身の半分の厚さ分をナイフを使って削っておく。もちろん形は刀身と同じだ。

2枚にニカワを塗って貼り合わせ、塗ったあたりに火を入れた火床の火で軽くあぶると、ゴツゴツとした鞘が出来上がる。こっちはニカワがもう少し乾くまで、革紐でギュッと縛っておく。

今度は 茎(なかご) のほうに同じように木材を当てて、同じように加工をする。鞘と違うのは目釘が通る穴を開けてあることくらいで、その他は全く同じだ。

1時間と少しの時間を空けて、鞘の方の革紐を外す。接着剤を完全に硬化させるには丸一日置いておく必要があるが、外形を加工するくらいならもう問題ない。

ナイフで鞘の外形を整える。1回ナイフを鞘の外を滑らせるたびに、シュッと音がして、剥がれるように木屑が落ちていく。

しばらくその作業に没頭していると、やがて鞘は断面が楕円に近い綺麗な姿に変わった。前の世界だと一番見たことがあるのはヤクザ映画ではあるのだが。

「ふーむ」

俺はその鞘を前に唸る。このままでもいいのだが、もう少し何か装飾のようなものを施したほうがいいだろうか。

ここら辺の作法は前の世界に従う必要もないし、こちらの作法と多少ズレていたところで「この辺りに合わせました」で通る類のもののような気もする。

「よし」

俺は改めて腕まくりをして、ナイフを手に取るとチートで鞘に穴があかないよう、表面に薔薇の花のレリーフを彫刻していく。

チートを使えばどこをどう彫ればいいのか全てわかるので、作業時間も短くて済むしミスもないが、それでも凝ったレリーフとなればそれなりの時間はかかってしまう。

作業を始めたのが午後だったこともあり、片側のレリーフが完成した頃には、もう日が沈みかけていた。

オレンジ色の光に鞘をかざすと、満開の薔薇がオレンジに輝いていた。これはこれで和洋折衷という感じで悪くない。

「ふむ」

「あ、出来たんですか?」

自分の作業を終えたリケが俺が鞘をかざしているのに気がついた。

「ああ。一旦はこれで完成でもいいとは思うんだが……」

手にした鞘をリケに差し出す。リケは恭しく受け取ると、鞘の 木理(きめ) も見逃すまいとするように眺めた。

「やっぱり親方のは凄いですねぇ。元々こういう木だったのではとすら思えます」

「そんなにか」

「ええ」

俺としてはチートの手助けでできることをやっているだけ、という感覚なので少し気恥ずかしい。

「でもなぁ」

「この出来で何か不満が?」

怪訝そうにするリケに俺は頷いた。

「やっぱり、着色が出来ればなって」

「ああ……」

うちにはこういった時に着色できる顔料や漆が今のところ存在しない。あまりド派手なものを作る気がなかったからだが、こんな時はせめて薔薇を赤くするとかはしたいように思う。

派手にはなるが、鞘と柄自体も白木ではなく、白にしたいし。平たく言えばドスっぽさを限りなく排除したいのだ。

「うーん、今からだとカミロさんに頼むのは厳しいですかね」

「あいつのところなら扱ってるかも知れないけど、間に合うかな」

「指輪の方はもう納品できるんですし、結婚式まではまだギリギリ時間がありますから、もし店にあればそれを使うというのでは?」

「それしかないか」

「なかったらまた何か考えましょう。着色できる植物をリディさんが知ってるかも知れません」

「それもそうだな」

森の中の鍛冶屋の製品としてなら、森の植物を使って彩色したものもなかなか気が利いているように思える。

俺とリケは着色について、あれはどうだこれはどうだと話し合いながら、鍛冶場の後片付けを進めていった。