軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

土産物

マリウスのとこの結婚指輪が夫婦一揃い分完成したのと、昼のヘレンのおかえりなさい会は午後の作業があったこともあって簡素なものだったので、両方を合わせて我が家としては少しだけ豪華なお祝いの会を開催することにした。

肉はシンプルな塩コショウと醤油ベースのタレで焼いたもの、ワインとベリーのソースのものの3種類を用意し、もちろん酒も出す。スープとパンがいつも通りなのが若干残念な感じではあるが、森の中の一軒家で急遽用意したことを考えれば十分だろう。

テラスにテーブルと椅子を運びだし、テーブルに料理や酒を並べた。ここで食べる機会も増えたし、雨が降っていない日の夕食はここでとることにして、新しくテーブルを用意しても良いかも知れないなぁ。

「それじゃ、結婚指輪の完成と、ヘレンのおかえりなさいを祝って乾杯!」

『乾杯!』

乾杯の声に、クルルとルーシーの声も加わった。ルーシーはヘレンの膝に乗って、味をつけずに加熱だけした肉を貰っている。膝に乗っているほうと乗せているほう、両方ともご機嫌である。

クルルはというと、首だけを突っ込んでディアナにひとしきり頭を撫でてもらったあと、近くに座り込んでのんびりとしている。飲み食いはあまりしないが、皆と一緒にいるのが楽しいのだろう。

皆はヘレンに昼に聞いてなかった都での土産話を聞いている。主に同じ傭兵隊の友達のことだ。

「じゃあ、何人か辞めちゃってたの?」

「ああ。でも、別の仕事を見つけてたり、結婚したりだからなぁ」

「残念ではあるけど、安心ね」

「そうだな」

ディアナが聞いたことにヘレンが答える。彼女も今回は無事を伝えに行ったので、友人が無事だと嬉しいのだろう、他の話の間も顔がほころんでいた。

「あー、そうだ。忘れるとこだった」

話の途中、ヘレンが唐突に席を立つ。膝にいたルーシーは既に居所をディアナのところに変えていた。気遣いもできるいい子である。

一度家に引っ込んだヘレンは、少しして背嚢を手に戻ってきた。帰ってきたときパンパンになっていたアレだ。

「土産は話だけじゃないぜ。ちゃんとモノも買ってきた……というより大半はここの皆の話をしたら、あれもこれもと押し付けられたんだけどな」

料理も減っていくらか片付けられたテーブルの上に、ヘレンは背嚢の中身を取り出す。

ズラッと並ぶ、日用品やそうでないものの数々。

俺は目についたものについてヘレンに尋ねる。

「櫛に……こっちの壺は?」

中身がもれないようにだろう、皮と蝋で封がされていてそこそこ大きい。背嚢がパンパンだった理由の大半は、これの大きさによるもののようだ。

「香油だって。いっとう身だしなみにうるさいのがくれた。“どこにいても自分のために綺麗にしておくのよ”ってさ」

「なるほど」

傭兵であっても女性であることは変わりないし、男性に対してどうこうをさておいても、戦場だろうとどこだろうとなるべく身ぎれいにしておきたいのは理解できる。

悲しいかな中身が40歳のオッさんでは全く気が回らなかったところだ。櫛はディアナが自分で持ってきたのがあるが。リケは「私の髪硬いんで、櫛が負けちゃうんですよね」と言っていたので持ってなさそうだ。

「次からこの辺もカミロに頼んどくかぁ」

「誰に見せるでもないのに?」

俺の言葉にアンネが反応した。皇女様なんだから遠慮しなくていいのに。

「まぁ、こういうのは自分の気の持ちようだからな。気分がいいほうがいいだろ? 別に毎日つけなきゃダメってわけでもないんだし、自分の気が向いたときだけでいいんだよ」

俺がそう言うと、「ふーん」と一見興味なさそうにアンネは答えた。でも、これは乗り気になりつつあるときの反応だ。使ってるうちに気にいるだろう。

「この量だとそこそこ値も張っただろうに」

「そこは“内緒の方法で安く手に入れられるから”つってた」

「へぇ」

詳細について聞きたいような、聞きたくないような答えが返ってきた。うちだと聞かないほうが良いんだろな、となんとなく思う。

その後、クルルとルーシーにと生き物好きな友達がくれたという首輪を2人につけたりして(2人とも喜んでいた)、最後に残った小箱をリケが手にとった。

「わ、重い。これには何が?」

リケの言葉に、ヘレンはニヤッと笑う。

「エイゾウが欲しがるものさ」

「俺が?」

突然話が飛んできたので、びっくりしながら言うと、ヘレンは頷く。

「1粒くらいしか手に入らなかったけどな」

リケが小箱の蓋を開ける。そこには、ほの赤く輝くとても小さな鉱石らしき物体があった。

「ヒヒイロカネって聞いてる」

ヘレンの言葉に、俺は両目が驚きで目一杯開くのを自覚した。