軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2人目

運が良かったからなのか、はたまたサーミャが張り切っていたからなのか、思ったより多くの果実を採ってくることが出来た。

今回は新顔がある。ザクロのような果実が実っていたのだ。サーミャに聞いてみると食えるということなので、2粒ほどちぎって口に放り込んでみる。

「すこし渋さが多いかな」

「でも美味いだろ?」

「うん」

キュッとくる渋みの中に酸味と甘みがあって美味い。前の世界でも実家の近くに自生しているものがあったので、幼いころに失敬したことがあるが、それともあまり味が変わらない。

こっちに来てから食べた野菜や果物は原生種に近いものが多く、苦みや酸味が前の世界で食べていたものよりも強かったりする。

1年と経っていないとは言っても、それなりの期間食べていたから慣れないわけではないが、前の世界のものに近い味のものを食べるとホッとするのも事実だ。

その辺りが顔か匂いに出ていたのだろう。サーミャがニヤニヤしながら聞いてきた。

「エイゾウ、なんだか嬉しそうだな」

「そうか?」

まぁ、実際に嬉しいのは確かだ。俺がわしわしとサーミャの頭を撫でると、彼女は一瞬むずがるようにしていたが、すぐに目を細めていた。ちょっと猫っぽいな。

そうして、俺とサーミャは家に戻った。

「ただいま」

「ただいまー」

『おかえりなさい』

家の扉を開けると、居間にはリケとリディがいた。サーミャはパタパタと自分の部屋に戻っていく。結構あちこち動いたから、早いとこ汚れを落としたいのかな。

「他の3人は?」

「裏で稽古しながら、クルルとルーシーの面倒を見てます」

リケが答える。俺は微笑んで言った。

「元気だな。2人はなにしてたんだ?」

「魔力の練習です。結構見えるようになってきました」

珍しくリケが胸を張って言った。ほほう。そのうち追い抜かれるかも知れんな。

「リケさんはドワーフだからかわかりませんが、筋がいいですね。このまま行けば、簡単な魔法くらいは使えるようになるかも知れません」

「え、そうなのか?」

「ええ」

リディは大きく頷いた。そのリディの隣でリケが俺よりも驚いているので、そのことを言ったのは初めてなのか。

「ひとまず着火の魔法だけでも使えると何かと便利だぞ」

実際に俺はあちこちで着火の魔法を使って助かっている。着火は意外と面倒な作業だからな。ライターくらいの気軽さで着火できる、この魔法があるのと無いのとでは大違いだ。

「覚えたら炉に火を入れられますかね」

「そうだな」

うちの炉や火床、そしてコンロは着火の魔法を使って火を入れると、その火を維持してくれる。普通に使えなくもないが、魔法を使った場合と比べると性能が違ってくるのだ。

「親方がいない間にも同じように出来るならいいですねぇ」

「俺としてもちゃんと仕事できてるか気を揉まないで済むしな」

俺は再び笑って言う。正直なところ、俺がいないと作業が止まってしまうような状況は避けたいのだ。

チートを貰っているとは言え、俺だっていつ何が原因で二度目の人生に幕を下ろしてしまうか分かったものではない。

そうなったときに、彼女達がこの工房を使い続けてくれるかは分からないが、少なくとも使えるような状況にまでは持っていっておきたい。

「が、頑張ります」

そんな俺の心を知ってか知らずか、リケは表情を引き締めると、ムンと再び胸を張って決意をあらわにした。

その日の夕食のとき、早くも次の人選の話が来た。発表はディアナからである。

「次はリケね」

「おう。そうすると、うちに来た順か?」

俺はディアナに聞いてみた。別に誰でも問題は無いのだが、順番が分かっていた方が心構えが出来ていい。

「そうね」

もしかすると教えては貰えないかもと思っていたが、あっさり教えてくれた。別段秘密でもなかったと言うことだろうか。

「じゃあ、その次はディアナか」

「はずれ」

「え、だって……ああ」

うちに来たのはサーミャ、リケ、ディアナ、リディ、ヘレン、アンネの順(間にクルルやルーシーが入るが)だと思っていたので、リケの次はディアナと言ったが、さにあらず。

「ヘレンか」

俺がそう言うとヘレンがちょっと肩をビクッとさせた。順番がもう決まっているならそう驚くこともなかろう。

「よく分かったわね」

「うちに来たのはヘレンの方が先だからな」

そう、うちに 住(・) み(・) 始(・) め(・) た(・) 順番で言えばヘレンは後の方だが、うちに 来(・) た(・) 順(・) ならばショートソードの依頼に来ているので、ヘレンの方が先なのである。

「そういうことだから、よろしくね」

そう言ってウィンクしてみせるディアナ。さっきの話で言うと、ヘレンの次は彼女のはずなのだが、何を要求されるのだろうか。

俺は怖さ半分、楽しみ半分な気持ちになりながら、スープのおかわりを皿によそった。