軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迅雷の剣-初手

翌日、水汲み、身だしなみ、朝食、神棚に拝礼と一通りの日課を終えて、昨日切り出したアポイタカラにとりかかる。

今回は混ぜ込むのではなく、鋼でアポイタカラをサンドイッチする形で作る。この状態で端を削る、と言うか刃をつければ、ちょうどアポイタカラの部分が刃となって露出する……はずと言う目論見である。

今のところはチートが無理だと言ってこないので、目論見通りことが運ぶだろうと思う。

運ばなかったらやり直しだが、そのときにサンドイッチされたアポイタカラをどうするか、考えるだけでも頭が痛いので、そうならないことを祈りたい。

はじめに、切り出したアポイタカラを火を入れた火床で熱していき、加工可能な温度をチートで見極める。

熱された金属は普通赤白く光るものだ。それはミスリルでもそうだった。だが、アポイタカラは青く光る。

普通、鍛冶屋はどれくらいの温度なのかを、その色で見極める。火も、金属もだ。

それが通用しないのはかなり厄介だろう。もしかするとこの世界でも扱えるのはごくわずかだけの可能性もある。

加工可能な温度の見極めを一から体得しないといけないからな。

「しかし、綺麗だ」

俺は思わず呟いた。ぽわっと青く輝いていて、そこだけ切り取ったかのように色が違う。

「ミスリルとも違うんですね」

リケが俺の呟きに返してきた。熱されて青く光るアポイタカラをじっと見つめている。

「そうだな。この色を覚えるのは厄介そうだ」

俺はチートで分かるからいいが、リケはそうではない。それでも彼女はドワーフなので人間よりはまだマシだろう。

「頑張って覚えます。めったにない機会ですし」

「おう、頑張れ」

流石に金貨2枚もするようなものを、ホイホイ買えることはあるまい。

これは俺の手持ちの金の問題ではなく流通の問題だ。べらぼうに高いと言うことは、それだけ出回らないってことだからな。

手持ちの金の話なら、なんだかんだで十分に持ってるし。

加工できる温度に達したら、火床から出して金床に置いて鎚で叩く。

魔力を吸い込んで固くなったりされると面倒だと思っていたが、そんなことはなかった。この辺りもミスリルとは勝手が違う。一応魔力はどんどん吸収しているようには見える。叩くたびに少しずつ燐光を放ちはじめているからだ。

ただ、叩くたびにどんどん固くならないのはいいとしても、そもそもがやたらに固い。魔力をたっぷり含んだときのミスリルよりも固いのではと思うほどだ。

そして、温度が下がるのも早い。すぐに加工できない温度になってしまう。

ということはつまり、ちょっと延ばすだけでも大変な手間がかかるということだ。ほんの少し延ばしただけで、俺はまたアポイタカラを火床に戻す。

「こいつだけで作るなら、ナイフ程度でも金貨で10枚は下らないかもなぁ」

火床でアポイタカラを熱しながら、俺はひとりごちる。

すると、リケに負けず劣らずじっと作業を見ていたヘレンが言った。

「20枚取れるだろ」

「そうか?」

「ああ。そもそも変わった素材の武器は高値で取引されるからな。そこにエイゾウの品質が加わったら天井知らずだと思うぜ? アタイの報酬でも買えない値になってるけど、それでも欲しいってヤツはごまんといるはずだ」

「なるほど。今後の値付けの参考にするよ」

このところ、作ったものはほとんど全てカミロのところに卸して、アイツの言い値で買い取って貰っている。

それはもちろん変な値付けをしないだろうという信頼ではあるのだが、こういう変わったものはこっちから値段を言ったほうが買い取りはしやすいかも知れないし、特注品も基本的には相手の思った金額を貰っているが、それでは困る場合には自分で適正な価格を付ける必要もある。

傭兵でこう言うものの値段をよく知っているヘレンに手伝ってもらって、ちょっとずつでも覚えていかないといけないな。

火床から取り出して叩くと言うことを何度も繰り返し、夕方にやっと思った長さにできた。

そいつを2つに割る。これもやはり苦労したが、延ばすほどの労力でなかったのは幸いだろう。

こうして、ヘレンの新しい剣作りは初日を終えたのだった。