軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暗雲は晴れず、話は終わる

「つまりだ。侯爵が攻め取るとしている土地は帝国側と話がついていて、本来黙っていても割譲される土地なんだよ」

「じゃあ、なんでわざわざ……」

「何かと引き換えにしたとしても、土地を明け渡すというのは大きな失点になる。今回も切り取られはするが、『革命の鎮圧でそちらに手を回せなかった。革命さえなければ……』と、皇帝は革命の首謀者に全てをなすりつける気らしい」

「にしても土地が奪われるのだろう?」

「元々帝国の中央からは離れすぎていて監視も届いてないようなところだし、持っていてもうまみのない土地だと判断されたようだ。だから抗戦もおざなり、出撃も態度だけだな」

逆に言えば王国にとって、何らかのうまみがある土地だということだろうが、それが何なのかを言わなかったのは俺に知らせないほうがいいという判断だろうな。

それに交換条件として王国から帝国に利益供与があったとは思うが、それが何なのか。

「皇帝は革命を鎮圧して反乱分子を一網打尽、王国に土地を切り取られた不始末は軍備増強でまかない、革命が起きたことを反省して 政(まつりごと) の方針を改める、だそうだ」

「反省ってのは嘘だろ?」

「まあね。ま、言われてるほど帝国も独裁じゃなかったってことだ」

俺の言葉にマリウスはあっさり頷いた。あの革命騒ぎは何もかもが茶番だったわけか。ヘレンの存在だけが唯一のイレギュラーだ。

確かにすべてが茶番であることの裏付けになりかねないヘレンの存在は、 帝(・) 国(・) にとっては相当に厄介ではあるな。

うん?待てよ?そもそもから考えると……

「もしかして、その辺の絵を描いたのは……」

「おっと、そこまでだぞエイゾウ」

俺が口に出そうとした推測を途中でマリウスが止める。

俺の思っているとおりなら利益供与のうちの1つが何だったのかも、水も漏らさぬ体制で情報を規制していたはずなのに、ヘレンが捕まっていることを 彼(・) がなぜ知っていたのかも説明がついてしまう。

彼が知っていたということは、皇帝自身の本意はヘレン殺害にはなさそうだ。

が、状況を考えれば帝国としては追わないわけにもいかないだろうから、実際には安全だとも言えないか……。

そして、俺の納めた武器が革命の鎮圧に使われたかも知れないと考えると、思うところがないではない。それもほとんど茶番のような話でだ。

俺が悪いわけではないと言われても、割り切れないところがあるな。

そんな俺の心中を察したのか、マリウスが頭を下げ、彼が話している間黙っていたカミロも併せて頭を下げた

「今回はすまなかった。俺がもう少し早く気がついていれば、どこかで止める手立てもあったんだが」

「俺からも謝らせてくれ。ここまで関わってるとは思ってなかったんだよ」

「お前たち2人で無理なら仕方ない。気にすんな。頭を上げてくれよ」

これは俺の偽らざる心境である。マリウスとカミロの2人で無理なら俺にも無理だ。

彼が 上手(うわて) だっただけの話で、思うところや割り切れないところがあるにせよ、彼は彼でそうする理由があったのだろう。

世界を敵に回しての大戦争をおっぱじめる、とかいうことなら俺も持てる力をすべて使ってでも止めるが、そうでないなら止める理由もない。

「それにヘレンを救出できたのは確かだし」

ヘレンの方を見やると、もうだいぶ落ち着きを取り戻したようで、ディアナやサーミャと何かをボソボソと話している。立ち直ったんなら良かった。

俺は見た目は30歳だし、中身ももう40を越えているから、若い女の子に対してどうするのがベストなのか分からんからな……。

「そう言ってもらえると助かる」

マリウスの言葉に、俺はいつもの手をヒラヒラと振るあれで返した。

これで革命の話は一旦終わりだ。ここからはまた別のいつもが始まる。

今回カミロから引き取りたいものをあれこれ伝えると、いつものとおり番頭さんが頷いて出ていった。

その後はとりとめもない話だが、マリウスとディアナは久しぶりに兄妹で会話をしている。使用人達の近況なんかのようだ。

俺達は俺達でカミロと街の話題だが、カミロも一昨日戻ったばかりで大した情報はない。国境から距離もあるし、ここまで混乱が伝わっては来ていないようだ。

そうして諸々の準備が終わり、金を受け取ると俺たちは帰路に着く。

商談室から出る間際、「エイゾウ、ちょっと」とカミロに呼ばれた。みんなを先に行かせて俺とカミロだけ、部屋に残る。

「どうした?なんかあったか?」

「いやまぁ……お前にだけは伝えておこうと思ってな……」

カミロはやたらと歯切れの悪い様子で言葉とは裏腹にまだ迷っている様子だ。

「別に伝えたくないならいいんだぞ。聞かないほうがいいことも世の中には多い」

「いや、これは聞いておいてくれ。厄介事に巻き込まれる可能性もあるが、知っておいて貰ったほうがいい」

さっきとは違った様子でカミロが俺に向き直る。その目はどこか決意が満ちているようにも見えた。

「ヘレンはな、侯爵の庶子なんだ」