軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いつもの仕事

朝の拝礼が終わったら、サーミャとディアナは狩りに出かけていった。

リケは昨日までの10日間で十分な一般モデルの在庫を作っているし、今回の遠征で俺がかなり稼いだこともあって、納品のための製作は止めてリディと魔力のこめ方を練習することにしたようだ。

俺は当然高級モデルを作る。今日から4日間それに打ち込んだら、カミロのところへ納品へ行く予定にした。一般モデルの数だけ確保できていれば、カミロの商売としては十分成り立つからな。

作業の準備を始めるが、出張所とは違ってテキパキと作業の準備を進めることができている。やっぱりちゃんとした作業場と、そうでないところは勝手が違うな。置いてある道具の違いも大きいのだが。

手早く準備を終えたら、まずは肩慣らしに板金を熱してナイフを作り始める。修理と製作では多少ならず勝手は違うが、鎚を振る、という作業自体は変わらない。

それでもやはり慣れた環境で慣れた仕事とあって、効率の良さは出張所とは段違いだ。うっかり特注にならないようにするのが大変なくらいである。

俺とリケが鋼と格闘している途中、1度リディがリケと二言三言交わしたかと思うと、ふらっと出ていって、また何事もなかったかのように戻ってきた。何をしていたのか聞いてみると、ミントの様子を見に行ってくれていたようだ。

「やはりミントは生命力が強いですね」

「そんなに?」

俺が聞くとリディは頷く。

「ほとんど手入れした様子がないのに、すくすくと伸びています」

リディは少し嬉しそうな顔で言う。こういうところは実にエルフのイメージにぴったりである。これは早めに畑をどうにかしてあげたほうが良さそうだ。

ついでに倉庫なんかも建てるか。また2週間ほど納品を休めば、余裕を持って建設できるようには思う。家族も増えたことだし、備蓄は備蓄としてちゃんとして行きたい。乾燥が終わった肉はそっちに置いておきたいしな……。

いっそしばらくは2週間おきと言っておいたほうがいいのかも知れない。この際建てておきたいものはガンガン建てて行くのだ。怪しい賊がウロウロしているというし、なるべく出くわす機会を減らしたほうが何かと不都合がない。

不都合があるとしたら、カミロの商売に差し支えるときくらいだ。と言っても、カミロのところにはもう随分な量を卸している。

十分売りさばけるだけの販路はあるようだが、2週間で必要になる数もそんなに多くはあるまい。困るようならまたその時考えよう。

何本か高級モデルのナイフを作った後、俺は意識を集中させて特注モデルのナイフに取り掛かる。別に注文があったわけではない。リディの分だ。

なんとなくの感覚、という状態ではあるが、魔力を取り込むようにして板金を叩き、形を出していく。

加熱も鍛造もチートを使ってギリギリのラインを見極める作業になるが、もっと大きなものならともかく、これまで何本も作ってきた特注モデルのナイフなので流石にスムーズに製作が進む。いつもの通りに猫を 象(かたど) った彫刻も入れた。

結局のところ、高級モデルよりも少し時間がかかるくらいで製作することが出来た。これ1週間ほどで50本量産したらなかなかに脅威だな。

「リディ」

特注モデルのナイフが出来たので、リケと魔力をこめる練習の続きをしていたリディを呼ぶ。

「なんでしょう」

「これは俺が家族の証として渡しているナイフだ。なのでリディにも渡しておく」

リディにナイフを渡す。受け取ったリディはしげしげとナイフを眺めた。まぁ、家族の証みたいになったのは最近というか、護身用に渡してたらそうなっただけではあるんだが。

「めちゃくちゃよく切れるから、十分注意して取り扱ってくれ」

俺は自分のナイフを木材へ縦に振り下ろした。音もなくナイフが木材を唐竹割りにする。リディの目が驚きで一瞬見開かれたが、すぐに平静を取り戻したようで、落ち着いた声音で言う。

「分かりました。ありがたく頂戴いたします」

そして、 押頂(おしいただ) くようにした後、自分の手元に置いた。

今日の分の仕事を終えて、片付けをしていると作業場の鳴子がカランコロンと音を立てる。サーミャとディアナが戻ってきたのだろう。

家と作業場を繋ぐ扉が開いて、サーミャとディアナが入ってきた。ただいまとおかえりの挨拶をする。

「今日はどうだった?」

俺はそう聞いたが、この時間まで外に居たのだからそれなりの獲物が捕れたのだろう。

「今日は鹿だな。デカいのだ」

「やったじゃないか」

サーミャが胸を張って宣言するくらいだから、かなりデカい獲物だったのだろう。そのデカさをディアナも別の方向から語る。

「その分苦労はしたけどね」

「ほんとにご苦労さん。俺たちもここを片付けて上がっちまうから、みんな体を綺麗にしておけよ」

「「はーい」」

「「わかりました」」

俺が今日の仕事の終了を宣言すると、4人の声が響く。狩猟組と生産組で言葉が違うのが少し面白い。

こうしてまた新しい“いつも通り”が始まるのだった。