軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#02.

口角を釣り上げたロードランが冷ややかな声で問うと、プリシラは首を横に振った。

「まさか。ただ、彼一人にすべての過ちを背負わせないでほしいと、そうお願いしているのです」

「ならば問おう、プリシラ・ライデン。帝国を揺るがした犯罪者を、英雄であるそなたはどう処理するつもりだ?」

「仰った通り、彼を信じて共に歩むことを望んだのは私です。ですから私が責任を持ち、二度と勝手な真似ができぬよう首輪を嵌め、厳しく……それはもう厳しく、お灸を据えてやります。その後に」

深く息を吐き、言葉を切ったプリシラは、熱を帯びた瞳でロードランを見上げ、言葉を継いだ。

「二度と奪われないよう、根源を叩き潰します」

「根絶やしにする、か……。それがすべてか?」

「そんなはずがありません。私たちの過ちである以上、罪をすべて贖い終えるその日まで、私たちはカイアード帝国の兵士として陛下の命に従います」

「生ぬるい解決策だな。私がそれを許すとでも思っているのか?」

「ええ。陛下は許してくださいます」

「なぜ断言できる?」

「ガエルの亡霊どもは、私一人で片付けますから。従軍の人員は必要ありません。これなら、かなり良い条件だと思うのですが?」

「そなた一人で? 馬鹿なことを。プリシラ・ライデン、そなたの戦闘能力は一般兵士並みだ。白い悪夢どころか、塔の魔物一匹すらまともに処理できぬ分際で」

ロードランの言う通り、以前のプリシラなら……いいえ、宴の時のプリシラであっても、リュエンを一人で相手にすることは不可能だっただろう。失敗によって彼女は惨敗し、死の淵まで追いやられた。

だが、今は違う。

「今は違うのですよ。将軍、少し私の手を握っていただけますか」

穏やかに微笑んだプリシラが手を差し出すと、ラファエルがその手を握った。

[能力付与:体力弱化、精神力弱化、魔力弱化、スキル弱化、防御弱化、回復弱化、打撃弱化。弱化レベル:最大値設定完了。]

魔力を帯びたプリシラの声が虚空に響いた。彼女の言葉が終わるや否や、ラファエルは糸の切れた人形のように崩れ落ちた。驚いたラファエルが顔を上げ、プリシラを見つめた。

「待て……っ、一体……」

声すらまともに出ないのか、ラファエルは乱れた息を吐きながら顔を歪めた。

プリシラは即座に彼に付与した弱化を解除した。

「ご覧の通り、今の私にはSランクの守護スキルと、Sランク以上の付与、そして治癒スキルまであります。攻撃能力が乏しくとも、負けるはずのない組み合わせです」

塔の賢者から受け取ったスキルは「 付与術(エンチャント) 」。スキルランクはS以上。 能力強化(バフ) はもちろん、 弱化(デバフ) まで可能だ。

いくらフェンベルクとエルフリーデが脅威であり、リュエンが抗おうとも、決して負けはしない。弱化を最大レベルで付与した後、近づいて首を刎ねてしまえば済む話なのだから。

想像を絶するプリシラのスキルに、ラファエルはもちろん、ロードランとライディスも信じられないといった表情を浮かべた。

「待て、付与スキルだと? いつそんなスキルを……。もしや、そなたの傷も治癒強化を付与して治したのか?」

「それは違います。私にスキルを譲渡……付与してくれた何者かが治療してくれました」

「一体、誰が……」

塔の賢者について、どこまで説明すべきだろうか。ロードランに賢者の存在を知らせれば、彼は間違いなく賢者を何らかの形で探し出そうとするのではないか。

悩んだ末、プリシラはにっこりと微笑んだ。

「リュエンの生死を含めたすべての権限を私に預けてくださるなら、その時にお答えしましょう」

挑発的なプリシラの答えに、病室にいた三人の男たちは呆然と彼女を見つめた。真っ先に吹き出したのはラファエルだった。

「アハハハ! さすが小娘だ。帝国の皇帝を脅すとは、大したもんだ。小娘が強気に出ておるが、どうする? 皇帝」

「ガエルの亡霊の中でも、最も厄介な連中が生き残った。多少不条理だからといって、使い勝手の良い駒を捨てるわけにはいかんな」

ロードランの肯定的な返答に、プリシラは密かに安堵の溜息をついた。

ロードランは理想的な為政者であるため、彼女の提案を受け入れるだろうとは考えていた。

しかし、ただ受け入れるには今回の襲撃事件の被害はあまりに大きすぎた。

たとえ自我を奪われていたとしても、罪は罪だ. 誰かが責任を取らねばならず、リュエンほど責任を負わせるのに都合の良い駒はないのだから。

(流れた血は掬い戻せず、失われた命は返ってこない)

宴の記憶が蘇ると、左目が凍えるように痛んだ。

左目に触れるプリシラの姿を見て、彼女を注視していたロードランが溜息をつき、言葉を続けた。

「プリシラ。そなたの言う通り、この事件はシェイルグだけの過ちではない。我々の側に失策がある以上、シェイルグにすべての罪を背負わせるわけにはいかんな。ただ……」

何かを思案するように言葉を濁したロードランが、ゆっくりと言葉を継いだ。

「そなたは、彼がそなたの元へ戻って来ると思うか?」

「……」

「そなたに向けられたシェイルグの想いは真実だった。ゆえに私も、そなたをシェイルグの傍に置くことを許したのだ。だが、シェイルグはそなたを裏切った。それが本意ではなかったとしても、彼が自分自身を許せるとでも思っているのか?」