軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#17.

リュエンが傍にいれば、物を買いに行く必要はない。とは言っても、プリシラにはリュエンを「言えば何でも出てくる便利な存在」として置くつもりなど毛頭なかった。

そのような存在が必要ないのはもちろん、たとえ必要だとしても、道具扱いではなく一人の人間として接したかったからだ。

ならば、彼が創り出した品々をどうすべきか。

しばし悩んだプリシラは、生活必需品だけを受け取り、残りは彼に返そうとした。しかし、リュエンは受け取らないと頑なに固辞した。

「宝石は、いざという時に現金に換えられるだろう? そなたに世話になってばかりではいられない。生活費だと思ってくれ」

「生活費にしては多すぎない?」

「私が持っていたところで、無用の長物であることに変わりはない。そもそも私は奴隷だ。宝石など持っていれば、資金の出所を疑われるのが関の山だ」

「うーん……」

リュエンの言い分にも一理ある。共にあるということは、無条件に依存したり与えたりするだけではなく、互いに助け合う関係なのだから。

悩んだ末、プリシラは貴金属を「保管」という形で預かり、必要な時があれば彼の許可を得て使うことにして、両手いっぱいの宝石を受け取った。

一体いくらになるのかという思いがよぎったのも束の間、プリシラが尋ねた。

「リュエン。私は日が暮れるまで、地理の把握を兼ねて散歩に出るわ。あなたはどう……」

「共に行く」

プリシラの言葉が終わる前に、リュエンが答えた。プリシラは彼の顔色を窺いながら尋ねる。

「顔色は良さそうだけれど……大丈夫? もう少し休んだ方がいいんじゃない?」

「リベリアは、私の故郷だ」

「そういえば……」

リベリアはガエル魔導王国の首都だったのだから、リュエンの故郷でもあるわけだ。ただ、魔力暴走によって建物はすべて半壊しており、かつての面影はほとんど残っていないはずだが。

プリシラの視線から答えを読み取ったのか、リュエンが淡々と続けた。

「私の記憶とは違うだろうが……いや、違うからこそ、そなたと共に故郷を歩きたい。無理な願いか?」

「まさか。あなたが一緒に行ってくれるなら、私こそ助かるわ。じゃあ、荷物をまとめて下りてくるから、あなたも支度をしてきて」

「分かった」

「無理はしないで。辛くなったらすぐに言うこと。いい?」

「分かっている。案ずるな」

リュエンと別れて部屋に入ったプリシラは、クローゼットにドレスを掛けた。質素な木のクローゼットには不釣り合いなほど華やかで、中から光が漏れ出しているかのようだった。

「宝石や金はともかく、ドレスなんてどこで使うっていうのよ」

豪華なドレスを見ていると、美しい衣装を身に纏い、アイザックと共に歩いていたアリシアの姿が思い浮かんだ。病弱な割に、外出用のドレスを山ほど持っていたアリシア。

『社交界に行けない私の代わりに、彼女が社交界に行かなければならないから仕方なく購入する……だったかしら?』

確かに、一年の半分は討伐隊に編成されていたのだから、ドレスも社交界も縁遠い話ではあった。だが……。

「まあ、いいわ。済んだことだし、もう私には関係のない人たちなんだから」

肩をすくめて首を振ると、プリシラは外出着に着替えて一階へと下りた。

彼女が一階に着くと、ちょうど良いタイミングでリュエンが下りてくるところだった。非常にゆっくりとした足取りで階段を下りるリュエンは、ゆったりとしたフードを羽織った姿だった。

彼のプラチナブロンドは目立つため、容姿を隠すためのものだろう。日光に照らされる彼の髪は、目が眩むほどだった。

戦場でなびいていた、あの長く輝かしい髪と、太陽を宿したような朱色の瞳。

「プリシラ? どうした?」

プリシラが眩しそうな顔でリュエンを見つめていると、彼がいぶかしげに尋ねた。それに対し、プリシラが首を振って答えようとした……その瞬間だった。

「何でもないわ。じゃあ、そろそろ出か……」

「プリシラ! 中にいらっしゃいますか!!!」

彼女の名を必死に呼ぶ声が、激しいノックの音の向こうから響いてきた。驚いたプリシラが扉を見つめると、いつの間にか彼女の傍らに立ったリュエンが目を細めた。

「この声は……」

「ライディス公?」

「なぜ彼がここに……それよりプリシラ。彼と会っていたのか?」

「役所で世話になったの。この家もライディス公に紹介してもらったし。でも、一体どうしたのかしら?」

礼儀正しく穏やかなライディスとは思えないほどの切迫した声に、プリシラが扉へ歩み寄ろうとすると、リュエンが彼女の腕を掴んだ。どこか不安そうな表情だった。

(あ、そうよね)

「リュエン、どうやら何か事があったみたい。少しライディス公と話をしたいのだけれど……彼と会うのが嫌なら、少し奥に引っ込んでる? それとも傍にいたい?」

「傍にいたい」

「分かったわ。じゃあ、私にぴったりくっついていて。私が守ってあげるから」

プリシラの答えに、リュエンは小さく息を吐くと、フードを深く被って彼女の背後に影のように立った。リュエンを庇うように先頭に立ったプリシラが扉を開くと、荒い息をついていたライディスがプリシラの肩を掴んだ。

「プリシラ! いらしたのですね。ああ……神よ、感謝いたします」

「ライディス公。一体何事ですか、これほど慌てて」

「勇者カルデオンのパーティーが全滅しました。彼らが保持していた階層を奪われ、塔の魔物が暴走したのです」

「えっ? それはどういう……」

困惑するプリシラの言葉を遮り、ライディスが急き立てるように続けた。

「説明不足で申し訳ありませんが、障壁が崩壊し、じきに街まで魔物が押し寄せてくるでしょう。プリシラ、このままでは多くの民が死にます。助けてください!」