軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第83話:【閑話】賢人リッチモンド

《閑話》賢人リッチモンド視点

これはオードル一家がルーダの街を去った後の話である。

オードル一家がルーダの街を去ってから日が経つ。

学園の中にある研究室に、リッチモンドは籠っていた。

「ここにも無いな……」

彼が調べていたのは古代文明の文献にについて。

どうしても気になることがあって、個人的に調べていたのだ。

「“人を操る術”か……どこかで見た気がするだけど」

リッチモンドが探していたのは、“他人を意のままに操る術”について。

古代文明の文献で閲覧した記憶があるのだ。

「ルーダ事件の原因か……果たして、この報告は本当なのだろうか?」

リッチモンドが文献を調べているのには、理由があった。

今から数ヶ月前、国王によるルーダ事件。

あの時の事件の裏に、“何者”かの存在があるかもしれないのだ。

王城に仕える学者仲間から、数日前に届いた手紙。

その中に意味深な一言があった。

『ルーダ事件の前の国王は、明らかに普通ではなかった。何者かに、操られていた可能性があった』と。

他人の意思を意のままに操る方法など、今の時代では見つかっていない。

だが高度な文明を誇った古代になら、存在していた。リッチモンドは文献で、たしかに見かけた記憶があるのだ。

「仮に、もしも国王が何者かに操られていたとしたら、かなり大問題だな。だが今の国王には異常はないという。それも疑問だな?」

古代の書物と照らし合わせて、推測を立てる。研究しながら様々な仮説を立てるのは、リッチモンドの癖であった。

「さて……どこにあったかな……」

古代文明の研究に関して、リッチモンドは大陸でも有数の研究者。貴重な文献の中から、情報を整理していく。

文献によると、古代文明では“力”と呼ばれる超常的な力が発達していた。

戦士たちが得意とする闘気、あれとは全く違う存在。古代の支配者は神のような術を酷使できたという。

「いや、待て。そもそも何故、国王はルーダ学園に目を付けたんだ? あの愚王では思いつかない策だろう?」

ふとした疑問が浮かび上がる。

単に金が欲しいのなら、学園以外にも効率が良い場所がある。

しかし国王はあくまでもルーダ学園に 拘(こだわ) っていたのだ。

仮説を立てれば立てるほど、謎は深まっていく。

「ふう……一休みにするか……ん?」

紅茶でひと息ついた時である。

リッチモンドは何かに気が付く。

「誰か来たのか?」

物音が隣の部屋から、聞こえた……ような気がした。

隣は資料室。

だが、こんな夜分に学園にいる変人は、自分くらいしかいない。

「ネズミか、それともコソ泥か?」

リッチモンドは護身用の杖を持って立ち上がる。

貧弱層に見えて、若い時に杖術は会得していた。

オードルほどの怪物には歯は立たないが、コソ泥相手なら十分に対応できる自信はあった。

それに大きな音を出したら、すぐに警備兵が駆けつけてくれる。

学園の警備はルーダ随一に厳重なのだ。

「さて……と」

リッチモンドは足音を忍ばせながら、隣の資料室に覗き込む。

「誰も……いないな、と」

資料室を隈なく見回すが、誰もいない。

照明を点けて照らしながら、もう一度確認。やはり誰もいない。

「ネズミの方だったかな?」

それとも自分の思い違いか。

古代文明のことを調べて、気が高ぶっていたのかもしれない。

「ふう……こんなことではオードルに笑われてしまうな」

自傷しながら、ふと視線を本棚に向ける。

そこにあるのは卒業していった生徒の資料だ。

「ん?」

ふと、本棚の些細な変化に気が付く。

一冊だけ微妙に動かした形跡があるのだ。

「これは今年の卒業生の?」

変化があったのは新しい資料。

思わず手に取り、ペラペラと中身を確認していく。

「ん? おや、おかしいぞ……無い……無くなっているぞ⁉」

ある部分を確認して、リッチモンドは思わず声を上げる。

「マリアちゃんのページだけ、無くなっている!?」

自分の目を疑う。

旧友の娘の学園記録のページが、丸ごと消えていたのだ。

自慢ではないが記憶力には自信がある。消えていたページは間違いマリアだけの記録だった。

「盗まれた……いた、これはページごと消失しているのか⁉」

詳しく調べて、改めて驚愕の声を上げる。

ページが刃物などで切れたのではない。

マリアのページだけ“消失”していたのだ。

「こんな信じられない現象が起きるなんて……いや、待てよ? そういえば古代には……」

その時、脳裏にある仮説が浮かび上がる。

こんな状況ですら仮説を立ててしまうのが、リッチモンドとい男なのだ。

「ん? 誰だ⁉」

その時である。リッチモンドは後ろを振り向く。

先ほどと同じように“何モノ”かの気配を感じたのだ。

「誰もいない? やはりボクの勘違いなのか? いや、違う……ボクには見えていないけど、そこには存在しているのか⁉ つまり……」

何かを察したリッチモンドは、資料室の本棚に手をかける。

「すまない、本たち!」

そして本棚を一気に引き倒す。

数百冊の書物が、凄まじい轟音を立てて崩れ落ちていく。

直後、資料室に大量の埃が舞い上がる。

「ボクの仮説が正しければ……いた!」

リッチモンドの狙いは埃を立たせることだった。

予測的中、資料室の片隅に異様な空間を見つける。

そこだけは埃が舞い上がらず、何か人型の空間を形成していたのだ。

『……私の術に気がついた?』

空間から女性の声がする。

美しい声だが、どこか機械的で無機質な声だ。

『もしかしたら古代の血が濃い個体なのかしら?』

直後、現れたのは美しい女。

歳は若い乙女にも見えるが、大人の女性にも見える。

薄いローブの上からでも分かる、妖艶な身体つき。

珍しい黒髪が印象的な女だ。

「くっ……動けない……」

気がつくとリッチモンドの全身は、凍りつくように固まっていた。

辛うじて口を動かすことは出来るが、指一本動かせない。

女を見てしまってから、何かの術にかかっているのだ。

「これは古代の術⁉ 使い手の女……魔女なのか、お前は⁉」

身体は動かせないままに、頭脳をフル回転させ。

この異様な女が先ほど、マリアの記録を消し去った侵入者なのかもしれない。

『魔女? 面白い呼び方。でも、今の私にはお似合いかも』

魔女と呼ばれながらも、女の表情は変わることはない。

まるで自分の身体を、他人事のように見ていた。

「古代の術の魔女……もしかしたら、お前が国王を裏で操っていた存在なのか?」

リッチモンドはその仮説を口に出す。。

今は危険な魔女に捕らわれている。

だが研究者としてサガで、質問せずにはいられないのだ。

「お前の目的は何だ? この学園に固執する理由は? 仮に国王すら意のままに操れるなら、もっと別の方法があるだろう? そして何故マリアちゃん……オードルの娘の記録を消したんだ?」

リッチモンドは矢継ぎ早に質問をしていく。

自分に死が近づいているのは理解している。

だからこそ後悔のないように質問せずにはいられなかったのだ。

『……お前に興味はない。消えてもらうわ』

魔女は表情一つ変えずに宣言する。

右手を上げて何かつぶやく。

「古代語? いや、呪文なのか?」

『消えなさい』

リッチモンドの疑問の答えが具現化する。

魔女の右手に、漆黒の槍が形成されたのだ。

見ているだけ、魂を吸い取られそうになる漆黒の槍だった。

魔女の手から放たれ、喉元に迫ってくる。

「くっ……ここまでか……」

リッチモンドは目を閉じて、死を覚悟した。

このまま自分が死んでしまうことを。

だが……いつまで経っても死は訪れない。

「こ、これは……」

おそるおそる目を開けて、リッチモンドは驚く。

何故なら漆黒の槍は、リッチモンドの寸前で防がれていたのだ。

「間一髪でしたね」

防いでくれたのは一人の剣士。

口調は丁寧だが、尋常ではない闘気を放っている。

「あ、あなたは……?」

剣士はリッチモンドが知らない顔。

学園の警備兵でも見たことがない。

『ガラハッド……どうして、ここに?』

魔女は少しだけ驚いている。

おそらく顔見知りなのであろう。

「ガラハッド……だって?」

“ガラハッド”という凄腕の剣士の名を、リッチモンドは一人だけ知っていた。

「ガラハッド卿⁉ あの剣聖の⁉」

「たしかに、私はそのようにも呼ばれています」

リッチモンドの推測は的中した。

だが、なぜ剣聖がこんな場所に?

ルーダに住んでいると噂は聞いたこともない。

「とりあえず魔女と距離を取ります、 掴(つか) まっていてください」

「なっ⁉」

ガラハッドは漆黒の槍を払いのける。

そのまま強引にリッチモンドを抱きかかえて、廊下に飛び出す。

「痛てて……次はもう少し丁寧に、運んでもらえると助かるんだが」

着地の拍子に廊下に膝を強くぶつけた。さすりながら、リッチモンドは毒づく。

だが悪いことばかりではない。今ので魔女の束縛が解けていたのだ。

「よし、こうなったら、とにかく避難を……ん? 廊下の様子が?」

自由の身となったリッチモンドは、周囲の異変に気が付く。

廊下の雰囲気がおかしいのだ。

「あの騒ぎでも警備兵が来ない……だと?」

本棚を倒してから、時間が経つ。

普通ならあれほどの轟音が立てば、警備兵が飛んでくるはず。

だが自分たちの周囲は、不気味なほどの静寂に包まれている。

何かがおかしいのだ。

「これも魔女の仕業なのか?」

「おそらく。“人除け”の類の術なのでしょう。あの女は不思議な術を無数に使います。あまり姿を直視しないようにして下さい」

剣聖は魔女に対して詳しかった。前にも対峙したことがあるのであろうか。

資料室にいる魔女と間合い計り、かなり警戒している。

『ガラハッド、その男を渡しなさい。その方が互いの利害に一致するわ』

魔女は術を唱え、再び漆黒の槍を作り出す。

今度は二つも。

槍先をこちらに向けて強迫してくる。

「たしかに、そうかもしれません。ですがその前に、私がここに来た理由を、説明しましょう」

ガラハッドは剣を収めて語り出す。

何もこんな時に……と思いながら、リッチモンドも内容は気になる。

「私は疑問に思っていました。貴女は国王を 唆(そそのか) し、ルーダ学園に進軍をさせた。そして私にオードルさんの情報を与えて、彼と戦わせた。それは一体なんのために? これほどの術を使えながら、一体どうして、そんな遠まわしなことをしているのか?」

剣聖が口にしたのは、衝撃の事実の数々だった。

なんと、この剣聖とオードルが戦っていたのだ。

そして、予想通り、魔女が裏で暗躍していたのだ。

「そして、やっぱり国王は操られていたのか……そして学園の侵攻も……」

リッチモンドの知りたかった内容だった。

そして脳裏に、別の仮説が浮かぶ。

「そうか! つまり……この学園に魔女の本当の目的があった……のか⁉」

「私も同じ見解にたどり着きました。つまり貴女の本当の狙いは、ルーダ学園にあった。そのことに気が付いた私は、オードルさんから受けた傷を治してから、この学園を見張っていたのです」

「なるほど……だから剣聖が来たという訳か!」

一つの疑問が解決して、リッチモンドは思わず声を上げる。

『そんな仮説だけで、ここに張り込みしていたというのかしら?』

「いえ、仮説ではありません。必ず貴女がここに現れるという“勘”を信じていたのです」

『“勘”だけを信じて? らしくないわね』

「最強を目指すためには、“自分らしさ”など邪魔な概念。それに強者から学ぶことは多いです」

剣聖はメモ帳を取り出し、不敵な笑みを浮かべる。

そのメモ帳に何が書いてあるのか、リッチモンドは気になる。だが今は確認している場合ではない。

『矮小な種から学ぶことなど不要。それと私を待ち伏せして、何が目的なのかしら?』

「貴女に会いに来た理由は一つです……」

剣聖の闘気が高まっていく。素人であるリッチモンドでも肌で分かる程に強力だ。

今まで丁寧だったガラハッドの口調が、段々と強まっていく。

「貴女は邪魔です……私とオードルさんにとって!」

剣聖は叫ぶ。

同時に魔女に斬りかかる。

あまりの速さにリッチモンドの目には見えなかった。

『やはり野蛮な下等種』

だが魔女は即座に反応した。

余裕の態度で左手を前にかざす。

だが剣聖の剣は、魔女の直前で止まってしまう。

「くっ……これも術の力ですか⁉」

必殺の一撃を防がれ、戸惑うガラハッド。

脱出しように動けずにいた。

『使える駒だから殺さないでおいたけど、もう不要ね』

漆黒の槍を更に出現させ、魔女は冷徹な表所を浮べる。

「くっ……身体が……」

マズイ状況だ。

剣聖はまだ動けない。

見えない力で、全身の自由を奪われている。明らかに危険な状況だ。

「彼を助けないと! でも……」

動けずにいたリッチモンドは、頭をフル回転させる。

だが自分にはオードルのような武力はない。

「魔女……古代文明の術……」

しかし古代文明の知識だけは、誰にも負けない自負があった。

今まで読み漁った知識を思い出していく。

「術の阻害……そうだ!」

リッチモンドは何かに気が付き、思わず叫ぶ。

「ご先祖様の文献が、確かなら……」

懐から小さな指輪を取り出す。これは古代から家に伝わる家宝。

“災厄から身を守る時に、使え”と言い伝えがあるのだ。

「イチかバチかだ!」

研究者として“運”に頼るのは愚策。

だが神を信じて、リッチモンドは指輪を放り投げる。

狙うは剣聖と魔女の中間。

「光った⁉」

直後、想定しなかったことが起きる。

投げた指輪が強烈な光を放ち、爆発するように光が広がったのだ。

『くっ⁉ これは“術崩しの宝玉”? なぜ、この時代に⁉』

予想以上の効果があった。

魔女は苦しみ、漆黒の槍が消えていく。

ガラハッドも拘束の力から脱出できたのだ。

「今です、剣聖!」

「ええ、感謝します!」

自由を取り戻し、一気に魔女に斬りかかるガラハッド。

この間合いでは絶対に回避は不可能。

「 斬(ざん) !」

剣聖の一撃が魔女を斬り裂く。

『まさか……この術を使うことになるとは……』

だが魔女は死んではいなかった。

霞(かすみ) の様にその姿が消えていく。

もしかしたら事前に、何か脱出の術をかけていたのかもしれない。

『この私を敵に回したことを、後悔するといいわ……』

そして消えながら魔女は宣戦してきた。

次に会った時には命はないと。

「崇高な存在を自称する魔女も、そのような陳腐な台詞を使うのですね! 斬(ざん) !」

ガラハッドは皮肉の言葉と共に、再び魔女を斬り裂く。

魔女の姿は完璧にかき消される。

「これで、終わり……なのか?」

一呼吸おいてリッチモンドは安堵する。

一気に緊張感が解けて、その場に座り込んでしまう。

「いえ。あの魔女は普通ではありませんが、これでしばらくは大丈夫かと思います。今までの感じだと、魔女は大きな術は連発できないでしょう」

「なるほど……つまり魔女の使う術にも、何か消費するエネルギーが必要なのか? もしくは発動させるための外部的な条件が?」

ガラハッドの説明を聞きながら、リッチモンドは新たなる仮説を立てていく。

とにかく今宵は事件と発見が多すぎた。

特に魔女と剣聖とのやり取りは、研究者である男にはたまらない刺激だったのだ。

「面白い方ですね。それと、先ほどは助太刀ありがとうございました。お蔭で助かりました」

「いえ、こちらこそ。あなたが助けに来てくれなかったら、ボクは今ごろ漆黒の槍の餌食になっていたよ」

リッチモンドを助け起こしながら、ガラハッドは感謝の言葉を述べる。

一方で起き上がったリッチモンドも、頭を下げて感謝した。

「そういえば貴殿の名は?」

「ボクはリッチモンド……この学園では副学園長と、古代文明の研究をしている」

「なるほど、それで先ほどの。私の名はガラハッド。剣聖とも呼ばれています。」

ガラハッドは強者以外には、興味を持たない男。

こうして名乗り合うのは、相手の強さを認めた時だけ。普通ではあり得ないことだった。

「あと、気づいているかもしれないが、ボクはオードルとは昔から腐れ縁の仲だ」

「そうでしたか。先ほどの勇敢さも、あの戦鬼のお墨付きという訳ですね」

魔女の威圧感は尋常ではない。

屈強な騎士ですら、恐怖で足がすくんでしまう。

だがリッチモンドは危険を顧みず、魔女に立ち向かった。

そんな内面的な強さを、ガラハッドは認めていたのだ。

「ところでオードルさんに会いたいのですが、居場所は分かりますか?」

「残念ながら彼の故郷は、ボクも知らない」

オードルは故郷の場所を、友にすら極秘にしていた。

リッチモンドの方からも訊ねたことは一度もない。

「そうでしたか。それは残念です」

「でも彼ら一家が訪れる場所は予測できる」

「本当ですか? それはどこですか?」

ガラハッドは思わず声を上げる。

今よりも更に剣の腕を上げて、オードルとの再戦を臨んでいるのだ。

「王国の首都……王都だ。マリアちゃんを上位学園に入学さるために、あいつは必ず王都に向かうはずだ」

「なるほど。王都ですか。予想も出来ない場所でした。まさにオードルさんらしい大胆さですね」

ガラハッドは苦笑する。

何故なら戦鬼オードルは、王都で一度暗殺されそうになっている。

それなのに家族総出で王都に戻るとは。普通の肝の太さでは実行できないのだ。

「ボクの予想では……マリアちゃんの向上心と、オードルの性格を考えて……三ヶ月以内には王都に引っ越すと予測する」

「三ヶ月後……ですか。楽しみですね」

その間、オードルは更に腕を上げているであろう。

再戦を思い浮かべ、ガラハッドは不敵な笑みを浮かべる。

「それでは、失礼します、リッチモンドさん」

そう言い残して立ち去っていく。

研究棟は嵐の後のように、一気に静かになる。

「魔女と剣聖か……本当に騒がしい夜だったな」

乱雑に散らばった資料室を見つめながら、リッチモンドは深いため息を出す。

片付けのこと考えただけ頭がいたくなる。

「魔女かて……」

だが今は高揚感で興奮していた。

何しろ本当に古代の術を使う者に出会えたのだ。

「もう少し調べてから、オードルには報告しないとな……」

魔女の本当の狙いは掴めていない。

解明するまで旧友を無駄に不安にさせる必要はない。

それにオードルは大陸でも最強の男。

たとえ魔女であろうとも簡単には手出しできない。

「よし。古代文明のことを一から調べ直しだな……」

古代の文献を更に調べていけば、魔女の正体にもたどり着けるであろう。

その本当の目的にも。

「さて、今日から忙しくなるぞ!」

こうして学者としてのリッチモンドの、忙しい数ヶ月が幕を上げるのであった。

それから数ヶ月後。

ルーダ学園の研究室に籠っていたリッチモンドの元に、朗報が舞い込む。

「何だって⁉ 手つかずの遺跡が出現しただって⁉」

王都の友人からの連絡鳥の手紙。

王国内のバーモンド領に、未知なる古代の遺跡が発見されたという。

今まで遺跡とは全く違う状態。

そこで専門家であるリッチモンドに、お呼びがかかったのだ。

「未知なる遺跡か。もしかしたら魔女の手がかりが見つかるかもな……」

早速、リッチモンドは出発の準備に取り掛かる。

「どんな遺跡だろうか……」

どんな歴史的な大発見があるのか。人生最大急に心を躍らせていた

だがこの時、本人は知る由もなかった。

バーモンド領の遺跡を調査開始の直後、帝国軍が侵攻してくることを。

こうして時間の流れは、王都を出発したオードル一家と繋がるのであった。