軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第60話:【閑話】国王の話、その4

《国王視点》

目の上のたん 瘤(こぶ) であった戦鬼オードルを、無事に 粛清(しゅくせい) して国王には明るい未来がまっている……はずであった。

だが、自分の政策はことごとく失敗に終わり、国王は不幸になっていく。

そして、ここ数ヶ月、国王は更なる不幸に見舞われていた。

発端となったのは、ある出来ごと。

ルーダ学園に特別課税をかけて、自分の私腹を肥やそうと実行した時であった。

今から約3ヶ月前。

近衛騎士団を引き連れて、国王はルーダの街の手前の砦まで到着していた。

翌日の昼にはルーダ入り。そのまま真っ直ぐルーダ学園に向かう予定だ。

学園の後はルーダの太守の城に、向かう予定を立てていた。

ルーダの街の全体の税率も、ついでに上げて私腹を肥やそうとしていたのだ。

「がっはは……明日は楽しみだのう!」

金の生る木のルーダを目の前にして、砦での夜の国王は上機嫌であった。

砦の最上階での特別室で、ブドウ酒を飲みながら笑い声を上げていた。

「これでワシの金も一気に……ぶひひ!」

その日は特に事件もない夜だった。

外は少し風が強いくらいで、近衛騎士からも異常の報告はなかった。

少しだけあったとすれば。

近衛騎士団長にしてやった剣聖ガラハッドの姿が、どこにも見えなかったことくらい。

あの剣聖が自由気ままな性格なのは、国王自身も承知している。剣聖を従えているだけで箔がつくのだ。

だからその夜の国王は、特に気に留めていなかった。

「ん?」

そんな楽しい夜が進んでいたころ。

砦の屋上から何やら音が聞こえてきた。

だが上機嫌の国王は、特に気に止めなかった。

何しろ砦には、千人を超える騎士兵士が駐屯している。

こんな場所に忍び込む命知らずの賊など、いないであろう。

「さて、もう一度、ワシの金の勘定でもするかのう……ぐふ……」

国王に記憶があるのは、そこまでであった。

目の前が急に真っ暗になったのだ。

「……? ここは?」

次に気がついた時、国王はベッドの上で翌朝を迎えていた。

酔っ払って、そのまま寝てしまったのであろう。と国王も特に気にすることはなかった。

「さて……」

部下からの朝の報告を聞いていく。

何でもガラハッドの奴が昨夜に屋上で、剣の稽古をしていたという。

その衝撃波により屋上の一部が破損。さらに本人も負傷したというのだ。

まったく剣聖という存在は、変わった人種なのか。

まあ、ガラハッド一人いなくても、ルーダの街では困ることはない。

何しろワシには千人を超える近衛兵団がいるのだ。

「さ……」

気分を切り替えて、部下たちに号令をかけなければいけない。

国王は着替えと朝食を済ませて、砦の広場へと向かう。

『皆の者、ルーダの街に向けて出発じゃ!』……そう、近衛騎士団に号令をかけようとした時。

国王の全身に寒気が走る。

とてつもない恐怖が、心の奥底から込あげてきたのだ。

「皆の者……王都に帰還じゃ!」

直後に国王の口から発せられたのは、自分でも信じられない内容。

帰還の号令だったのだ。

「「「陛下⁉」」」

側近たちは急な予定変更に、理由を尋ねてくる。

何しろ近衛騎士団は出陣させるだけで、莫大な経費がかかる。

「それでは陛下、ルーダの街と学園のことは、今後はどうなさるのですか⁉」

「ワシが王都に帰還すると言ったら、帰還なのじゃ! ルー………、あの街には今後はかかわぅってはならん!」

部下たちを叱り、国王は強制的に帰還の準備をさせる。

同時に自分中で奇妙な現象が起きていた。

『ルーダ』という単語を、自分の口から発せられずにいたのだ。

とにかくルーダの近郊から立ち去りたい一心。

もう二度と関わってはいけない恐怖。

「早く王都に戻るのじゃ!」

こうして国王はルーダ学園から手を引くのであった。

だが奇妙な現象は、その後も国王を襲う。

本当の不幸はこれからが本番であった。

王都に帰還した国王は、新しい金儲けの手段を模索していた。

「ぶひっひ……次は……」

何しろ近衛騎士団の出陣によって、自分の私財の多くが減ってしまった。

国王直属の兵団は、自らが金を出さないといけないのだ。

次はどこから税金をしぼりとってやるか。

「うう……ううう……」

だが、砦から帰還した国王は、夜な夜な悪夢を見るようになっていた。

内容は朝起きると、ほとんどを忘れている。

だが、一つだけ鮮明に覚えていることがあった。

それは『奇妙な仮面の大男』……が悪夢に出てくるのだ。

仮面の大男は国王にとって本当に恐ろしい存在。

何しろ自分が金集めの策を考えた夜に限って、悪夢として見てしまうのだ。

「 祈祷師(きとうし) を呼べ! あと、薬師も! 占い師もじゃ!」

国王は悪夢を取り払うために、王都中の術師を呼び集めた。

だが誰が見ても、原因は不明。

お蔭で国王は眠れない夜を、三ヶ月も過ごしていくのであった。

薄かった髪の毛は、更に薄くなり、白髪どころの話ではなくなっている。

「国王陛下にお知らせしたことがあります……」

そんな時、国王に救いの神が現れる。

王城にやってきた進言してくれたのは、聖教会の見習いの巫女であった。

「もうすぐ北の方角から、救いの影が見えます……」

「なんと、北から、ワシの救世主が⁉」

ワラにもすがる想い。

巫女の言葉を、国王は聞き逃さまいと書き記させる。

「はい、その者は頼もしき救世主……それに従うは小さき賢者……そして強き女戦士と、巡礼の少女……あと、白銀の神獣と神馬……この姿が見えます……」

巫女が口にしたのは、天神からの啓示であった。

その証拠に巫女の口調は、神々しいものだった。啓示を伝えた直後、見習いの巫女は気絶してしまう。

国王の窮地を救うために、天神が救いの手を差し伸べてくれたのであろう。

「おおお! このワシにもついに天運が味方を! よし、王都中を探すのじゃ! このワシを救ってくれる救世主を! 頼もしき“北の救世主”を探すのじゃ! これでワシの金運も上向きじゃ!」

こうして国王は元気を取り戻す。

自分を救ってくれる希望の“北の救世主”を求めて。

「……さて。ようやく、王都が見えてきたな……」

それはオードル一行が、ちょうど王都に到着した日の話。

“北から”王都に来たのだ。

こうして強欲な国王には、更なる不幸が待ちかまえているのであった。