軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話【閑話】国王の話、その3

《閑話:国王視点》

王国の国王はここ数ヶ月間、連続的な不幸に襲われていた。

まず一つ目の不幸

有利な条件で停戦協定を結んだ隣国。帝国に対して再度、宣戦布告して領土拡大を目指した。

だが国境の戦いで大敗を喫する。膨大な賠償金と国王私物の銀山を、憎き帝国に奪われてしまったのだ。

更に軍師をはじめとする有能な腹心が、国王の元から去っていった。

次の二つ目の不幸。

起死回生の策を発動させた国王は、隣国である共和国に宣戦布告をする。相手は小国の集まりであり、歴史ある王国の敵ではない、と攻め込んだのだ。

だが、またもや国境沿いの野戦で王国は大敗。今度は国王所有の金山と、膨大な賠償金を共和国に奪われてしまった。

更に頼みの綱である聖女リリィに、協力を拒否される。追放した聖女は、道中で事故にあい死亡。国王の打開策は全て尽きてしまった。

「くそっ……これも、死んだオードルの奴の呪いなのか……」

バタン!

津波のように押し寄せてきた不幸に国王は倒れてしまった。

ストレスにより脳がパンクしてしまったのである。

国王の髪の毛はストレスにより、老人のように真っ白になっていた。

だが、しばらくして国王は絶望の淵から復活する。

「はっはっは! やはりワシは天才じゃ! よし、急いで勅命の書類を作るのじゃ!」

王城内の執政部屋に、国王の下品な高笑いが響き渡る。

起死回生の打開策を思い付き、腹心に実行を命じていた。愚王ではあるが無駄な行動力だけは、誰よりもあるのだ。

「陛下。こちらは『ルーダ学園への特別課税の命令書』ですか?」

書類を作りながら腹心は内容を確認してきた。今まで前例がない内容なので、念のために確認しているのだ。

「ああ、そうじゃ。あそこは今までは教育機関ということで、課税をしていかなった。だが、あそこの生徒の親は国内の貴族たち。つまり金になる木になるぞ! はっはっは……!」

国王は考えついた策は、ルーダ学園への特別課税。徴収した税金の大部分は、もちろん国王の私財になる。これによって今までの不幸で失った財産を、一気に補填できるのだ。

「ですが陛下。ルーダ学園は歴代の国王様たちが、大事に育てきた教育機関でございます。本当によろしいのですか?」

腹心は最終確認をする。

何しろ支持された税率は、通常ではあり得ない重税。実行してしまったらルーダ学園の経営は破綻していくであろう。数年後には廃校になってしまうのだ。

「はっはっは……その心配はいらん! ルーダ学園が税を払えなくなったら、ワシが直接経営してやるのじゃ! 金の生る木が手に入って一石二鳥の策じゃ!」

高笑いしながら国王は説明する。今回のアイデアは渾身のシナリオだと。どちらに転んでも国王の私財は潤うのだと。

「……かしこまりました。では書類を作成して、ルーダ学園に勅命をして送っておきます」

内心では呆れながらも、腹心は命令を実行していく。この国王に提言しても、どうせ聞く耳をもたない。今の王城に残っているのは、保身のために働く腹心しかいないのだ。

「はっはっは……ルーダ学園が成功したら、王国内の全ての学園から、税金を集めるようにするか! はっはっは……!」

自分の才能の凄さに、国王は酔いしれて高笑いしていたのであった。

それから日が経つ。

国王の命令通り、ルーダ学園に特別課税の勅令が届く。

だが学園からの返事は、国王の勅命を実行できない、というものであった。

「なんじゃと⁉ このワシに逆らうというのか⁉」

返事を聞いて、執政室の国王は激怒していた。

まさか自分の勅命を拒否されるとは、思ってもみなかったのだ。

「ふん。だが、これも想定内じゃ。おい、近衛騎士団に準備をさせるのじゃ」

ニヤリとしながら国王は、また腹心に命令を出す。王城を守る近衛騎士団に、出陣の準備をしろと。

「陛下、かしこまりました。ですが、近衛騎士団を率いて、どちらへ?」

腹心は念のために確認する。近衛騎士団は常に国王の側にいる。つまり出陣は国王の出発を意味するのだ。

この財政難の時期に、いったい、どこに向かおうとするのであろうか?

「ふん、決まっておる。ルーダの街の視察じゃ。生意気な学園の連中に、ワシの力の偉大さを見せてやるのじゃ!」

「……かしこまりました。準備しておきます」

内心では呆れながらも、腹心は実行に移る。

同時にルーダ学園の者たちに同情する。何しろ近衛騎士団を率いた国王は、今までも強引な方法を繰り返してきた。今回の視察でも反抗的な者は、処罰されるであろう。

「という訳じゃ。ガラハッド、お前も部下と共に出陣じゃ」

執政部屋の端にいた騎士に、国王は声をかける。

この男こそが、今の近衛騎士団の騎士団長。大陸最強の騎士の一人“剣聖”ガラハッドなのだ。

「……はっ、陛下」

ガラハッドは表情を変えずに返事をする。

今回の出陣は明らかに愚行。だが仕えたからには、騎士団長として従うしかないのだ。

(学園都市ルーダか……もしかしたら、“ヤツ”が潜んでいるかもしれんな……)

ガラハッドは誰にも聞かれないように、そう呟く。一瞬だけ、怪しげな笑みが、その口に浮かんでいた。

「がっはっはっは……さあ、ルーダの金を成る木を収穫のいくぞ!」

一方で何も知らない国王の、下品な高笑いが執政室に響き渡る。

こうして国王率いる近衛騎士団は、ルーダの街へと進軍していくのであった。