軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第120話:その後の王都での暮らし

王都に帰還してから、月日が経つ。

王都でのオレたちの暮らしは、平和な毎日だった。

「パパ、学校に行ってきます!」

一番していたサラの暮らし。

帝国との平和条約を結んだことで、王国は平穏を取り戻した。

上位学園も授業を再開。

マリアは毎日、元気よく勉強に励んでいた。

魔女のネックレスによって乗っ取られた、後遺症は皆無。

むしろ前よりも元気になっている。

中断によって遅れたい勉強を取り戻そうと、今まで以上に頑張っていた。

本当に頑張り屋な娘だ。

「オードル様、私も仕事に行ってまいります」

平和になったことで、リリィの勤め先のパン屋も再開された。

同じパン屋で、彼女の仕事に励んでいる。

そういえばリリィの体調。

マリアたちの行方を探すため、彼女は聖女としての力を酷使した。

心配して後遺症は、特に出ていない。

普通の町娘として、王都での生活に馴染んでいた。

聖女といえば、もう一つ。

レイモンド公……今は臨時国王のレイモンド公の話では、“聖女制度”は廃止に向かっているという。

何でも『新しい聖女の候補者の啓示』が、教団にいつまで経っても降りてこないという。

それもそのはず。

現在の聖女こと、リリィは元気に生きている。

つまり新しい聖女の候補啓示が、天神からあるはずないのだ。

だが教団は真相を知らない。

そこで聖教会は理由をあれこれ作り、聖女制度自体を無くしていくという。

この廃止の制度が可決は、我が家にとって嬉しいこと。

聖女であるリリィの肩の荷が、少しは降りるであろう。

「オードル、いってくる」

『ワン!』

末娘ニースと白魔狼のフェン。

二人が元気に玄関から出発していく。

最近、王都の初等学園に、ニースが通い始めたのだ。

一緒のフェンは、通学路の護衛役。

ここ数ヶ月のニースの成長は、我が家でも一番。

最初、地下水道で出会った時、ニースはろくに言葉も話せなかった。

だが今では普通の会話は完璧にマスター。

そこで本人の希望で初等学園に入学。

学園に通って分かったことがある。

ニースは学力が異様に高いのだ。

おそらくマリアと同じく、生まれた時から知能が高かったのであろう。

クラスの筆記のテストで、はいつも満点だった。

このまま勉強が進んでいけば、マリアと同じように賢い子に育っていくであろう。

相変わらず感情を出すのは苦手だが、それはニースの 愛嬌(あいきょう) というものだ。

『ワン!』

なんだと、フェン? 自分のことも話して欲しいだと?

そうだな、フェンは相変わらず元気だった。

普段はニースの登下校の護衛をしている。

ニースが授業中は上位学園にいるマリアと、パン屋のリリィの巡回警備もこなしていた。

かなりの頑張り様だ。

出会った時は二歳の子どもだったフェンも、今では四歳。

立派な白魔狼族の乙女として、育っていたのかもしれない。

『ワン!』

なに、違うだと?

広場に新しい肉料理の屋台が出来たから。食べてみたい、だと?

まったく褒めた側から、これか。

相変わらず食いしん坊で元気だな、お前は。

「それじゃ、オードル。私もいってくる!」

我が家の朝、最後はエリザベスが家を出発していく。

彼女が向かうのは王城。

実の父親であるレイモンド公、弟チャールズの政務の助けをするためだ。

このエリザベスの仕事は、オレがアドバイスしたこと。

何しろ彼女は家出して、家族と疎遠になっていた。

だから王都にいる間は、せめて実の家族と触れ合って欲しかったのだ。

ちなみにエリザベスの伯父……ルイ前国王も元気にている。

今は王都から離れた辺境の別荘暮らし。

今は引退した老人のように平和に、静かに暮らしているという。

しかし“戦鬼の怨霊”の夢に、時おりうなされているという噂もある。

それは自業自得なので同情はしない。

あとルイ前国王の腹心たちは、今はレイモンドに仕えている。

レイモンドは有能な男。

アイツ等も今後は悪事を働かないであろう。

「さて、オレも出かけるとするか」

朝の我が家に残っているのは、オレ一人だけになってしまった。

いつまでも感慨にふけっている場合ではない。

仕事の時間だ。

すぐ隣のダジル商店に出勤する。

「おう、オードルか。ちょうどいい所にきたな。今日の仕事じゃ」

店主である老人ダジルから、仕事表を受け取る。

結構な仕事量がある。

だが、この程度なら、午前中に終わらせることが出来るであろう。

「ふん。相変わらず仕事が早すぎるな、お前さんは。そういえばヘパリスの奴から使いが来ていたぞ。何でもお前さんの愛剣の修理が終わったそうじゃ」

オレの大剣は、腕利きの女鍛冶師ヘパリスに、修理に出していた

古代遺跡の巨塔の両断、魔女との激戦。

かなりの損傷していた愛剣が、ようやく元に戻ったのだ。

そういえば修理に出した時、ヘパリスは大喜びしていた。

傷ついた大剣を見て、察したという。

戦鬼オードルが本気を出した激戦の軌跡を。

傷ついた大剣を手に取り、何ともいえない幸せそうな顔をしていた。

ヘパリスは大陸有数の鍛冶職人でありながら、変わり者職人でもあるのだ。

「そうか。気が向いたら取りに行く、と返事しておいてくれ。使わないかもしれないがな」

今のオレは一般市民に戻っている。

傭兵としての武器は、特に必要はない。

しばらくの間は、ヘパリスに預けておくつもりだ。

「ふん。そう言うと思って、先に返事はしておいたぞ。それにしてもお前さん、“英雄として”王城に帰還するつもりはないのか?」

オレが帝国軍の侵攻を追い返した戦い。

魔女との最終決戦。

ダジルには全てを話していた。

「今のお前さんが名乗り出たなら、莫大な名誉と富を、手に入れることが出来るんだぞ?」

ダジルの言葉は正論。

何しろオレは王国と帝国の窮地を……いや結果として大陸を救った英雄になるのだ。

「オレはそんなのは柄ではない。それに多すぎる名誉や富は、普通の暮らしに邪魔になる。家族が笑って暮らせるだけで、オレは十分幸せだ」

「ふん。相変わらず欲がない奴じゃのう。それじゃ。今日の分の仕事は頼んだぞ」

「ああ、行ってくる」

ダジル商店を出発する。

最初に向かうのは、王都の繁華街だ。

「おっ、オードルじゃないか?」

店を出てすぐ、声をかけられる。

「リッチモンドか。久しぶりだな」

「ああ、そうだね。ちょうど、いまダジル商店に行こうと思っていたんだ」

声をかけてきたのはリッチモンド。

この旧友は何ヶ月か前に、王都から離れていた。

久しぶりの再会だ。

「いつ王都に、戻って来た?」

「昨日の夕方だよ。今回は帝国学園の報告を、王都学園のしにさ」

「そうか。帝都から直接来たのか。相変わらず忙しそうだな」

和平条約が結ばれた後、リッチモンドは帝都に滞在することになった。

帝国学園の教授に任命されたのだ。

これはガル皇帝の要望により。

結果としてリッチモンドは忙しくなる。

帝都と王都、学園都市ルーダの三カ所の学園を、忙しく回る生活になったのだ。

「帝都の暮らしの方は慣れたか?」

「そうだね。王国と和平条約を結んでから、帝国の経済は安定しているから、帝都も悪くはないよ」

昔から帝国の自領は、作物が育ちにくい貧困な土地。

そのため必要性から、隣国に侵攻を繰り替えていた。

だが穀倉地帯が豊富な王国との交易が開始され、帝国の情勢一変。

無益な隣国侵攻が不必要になった。

戦が減り、市民の負担も激減。

王国との和平は、帝国側にも多くの利点があったのだ。

「そういえばガルが……皇帝がオードルに『よろしく』って言っていたよ」

「オレにだと?」

「『気が向いたらいつでも帝都に遊びに来い。何なら帝国爵位の件も保留してあるぞ』だそうだ」

「その件か。適当に返事しておいてくれ」

皇帝には昔から気に入られていた。

リッチモンドの話では、先日の遺跡の塔の一件から、更に気に入られてしまったらしい。

武人として皇帝は嫌いではない。

だが今のオレは富や名誉には興味はないのだ。

「オードルなら、そう言うと思っていたよ。あっ、でもボクの個人的には、帝都に住むのはオススメだよ。何しろ“帝国大学”があるからね」

「帝国大学だと?」

「そう。あそこは王都の大学よりもレベルが高く、生徒の質も大陸有数。はい、とりあえず推薦状も渡しておくよ」

リッチモンドが渡してきたのは、帝国大学への推薦状。

マリアのための推薦状だ。

何しろマリアの学手能力は高い。

このままのペースでいけば、あと一ヶ月で王都の上位学園を卒業予定。

普通は数年かかる履修を、たった一年間で終わらせようとしていた。

そのため卒業後のマリアの進路を、この賢人は考えてくれたのだ。

「そうか。とりあえず貰っておく」

マリアの進路については、本人の意思もある。

選択肢の一つとして、頭に入れておく。

「あと、帝都のからの道中、バーモンド領に寄ってきたんだ」

「バーモンドか、どうだったか、あそこは?」

「復興もかなり進んでいたね。それに帝国との貿易の拠点の一つになったから、前よりも栄えていくはず」

「そうか、それは良かった」

以前のバーモンド領は、どちらかといえば特産物も少ない貧しい領地。

だが新たなる交易の中継地点として、現在は賑わっているという。

今後も新たな商売ルートとして、多くのく市民の暮らしが良くなっていくであろう。

「その時にクラウディアちゃんから、手紙を預かっていた。マリアちゃん宛てに、はい、これ」

「そうか。クラウディアは、元気にしていたか?」

「元気にしていたよ。毎日、伯爵令嬢としての習い事と、勉強に励んでいたよ」

クラウディアは、ルーダ学園時代のマリアのクラスメイト。

今は実家に戻って、令嬢としての務めに励んでいるのだ。

「いつかマリアを連れて、バーモンド領に遊びに行かないとな」

ルーダ学園を卒業後は、二人の少女は離れ離れになってしまった。

だが今でもマリアとクラウディアは、親友同士。

父親として定期的に、合わせてやるのが良いだろう。

「あっ、帝国と言えば、言い忘れていた。はい、これ、オードルへの手紙」

「オレに手紙だと? 誰からだ? しかも、こんなに多くに?」

リッチモンドがリュックから取り出したのは、数十枚の手紙。

全部オレ宛てだという。

「これは全部、キミの元部下、帝国にいるオードル傭兵団の皆からだ」

今までアイツらから、手紙など貰ったことなどない。

「あいつらが、オレに手紙……だと?」

手紙を一個ずつ確認して驚く。

間違いない。

元部下の連中から直筆の手紙だった。

「それにしても、失礼かもしれないけど傭兵なのに、全員がここまで字を書けるって、凄いな」

「ああ、普通はそうかもしれないな」

一般的な傭兵は、手紙レベルの文章は書けない。

書けても自分の名前のサインくらい。

だがオードル傭兵団員からの手紙は、全員がしっかりした文章で書いている。

リッチモンドが驚くのも無理はない。

「オレが団長だった時に、識字率には注意していたからな」

「やっぱりオードルの影響だったのか。たいしたものだね」

リッチモンドは驚いているが、字の読み書きは重要。

何しろ傭兵稼業は、身体が元気な時しか出来ない。

年老いて引退する時に、ある程度の学が必要になる。

だから、団員には全員、半ば強制的に文字の勉強をさせていたのだ。

「それにしても、あいつらも元気そうだな」

手紙を流し読みしていく。

隠密のロキ。

オレと別れ団に戻ってから、大隊長の地位を辞任しているという。

魔女に操られたとはいえ、団員を惑わせてしまった。

軽い感じに見えるが、ロキは責任感が強い男なのだ。

今は一段下の“隊長格”から、再スタート中。

直属の部下である隠密衆と共に、団の情報収集に勤しんでいるという。

細身剣使いのピエール

あいつも元気そうだった。

今も二番隊の大隊長として、追加で団長代理として団全体を引っ張っていた。

真面目なあの男なら、団を正しい方向へと導いてくれるであろう。

他の大隊長の連中も元気そうだった。

双剣使いの兄ベラミーと、重戦士の弟ルーニーのデコボコ兄弟。

相変わらず仲良くしていた。

最近は兄に甘えてばかりいたルーニーが、少しだけ自立しているらしい。

ジンの爺さんと東方の侍コサブロー。

忙しくなったピエールを、二人でサポートしているという。

あと残る二人。

西方の巨人タルカスと、南方民族の女戦士ミュー・ファン。

バーモンド城で再会できなかった二人も、元気だという。

だがオレに再会できなかったことを、今でもかなり悲しんでいるという。

落ち着いたら顔を見せに、遊びに行ってやるのもいいかもしれない。

「アイツ等は元気そうだな。これは、いつか遊びに行く楽しみが、増えたな」

新生オードル傭兵団は、今も帝国に雇われ中。

腕を上げた、かつての部下の成長を見るのが楽しみだ。

「もしも帝都に来る時は、ボクにも連絡してくれよな」

「ああ、気が向いたら遊びにいく」

「あっ、そろそろ約束の時間だ! 王都学園に行かないと!」

今のリッチモンドは忙しい男。

別れの時間となる。

「気を付けてな、リッチモンド」

「ああ、オードルもね!」

次に会うのは一ヶ月後か

もしかしたら数ヶ月後かもしれない。

だが、互いに生きてさえいれば、必ずどこかで再会できるであろう。

旧友とはそういう関係なのだ。

「さて、オレも仕事に戻るとするか。王都での生活も、ラストスパートだな」

マリアが上位学園を卒業するまでは、王都に滞在する予定。

それまではダジル商店の仕事も全力で行う。

「あっとう間の一ヶ月になりそうだな」

こうしてオレたちオードル一家は、王都の生活を満喫していくのであった。

それから更に一ヶ月が経つ。

マリアは予定通りに、上位学園の卒業試験に合格。

学園史上最年少の七歳で、見事に卒業を決めた。

卒業式当日。

卒業生代表として立派な挨拶をした。

同席したオレたち家族は、感無量。

上位学園でのマリアの学生生活は、無事に幕を閉じた。

ダジル商店でのオレの仕事。

後任者も見つかり、仕事を引き継いだ。

これで王都に思い残すことはない。

「さて、いよいよ、今日が来たか」

王都との別れの朝。

オレたち一家が、王都を発つ朝がやってくるのであった。