軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コンラートが去ったあと

「コンラートを追わないと」

「お前を信じられず、酷い言葉をぶつける奴のことなんか放っておけ」

「しかし」

「あれだけ怒っていたんだ。お前の訴えなんか耳に届かないだろう」

説明するにしても、少し時間を置いて冷静になってからのほうがいいと言われ、その通りだと思った。

私が落ち着くよう、ヴィルオルは魔法で紅茶を淹れてくれた。

それがおいしくて、何より私のために準備してくれたことが嬉しくて、ささくれた心が癒やされていく。

私が紅茶を飲む間、ヴィルオルは何も聞かずに静かに傍にいてくれた。

コンラートとのことがこのような事態を巻き起こすなんて。

私が選択を間違ってしまったのだ。

もしかしたら彼のあとを追わずに、こうしてヴィルオルと一緒にいることも、誤りなのかもしれない。

「やはり、コンラートと話をしなければならない」

「しなくていい」

「でも、あまりにも不誠実なことをしてしまった」

「そんなことはない。タイミングが悪かっただけだ」

どうしてだろうか、ヴィルオルにそう言われると説得力があるように思えてしまう。

コンラートに言われたことよりも、胸に響いてしまうのだ。

ヴィルオルは熱い眼差しを向け、私に訴えた。

「あいつのところになんて行くな、俺の傍にいろ!」

「わかった」

「だから――んん?」

「私も、そうしたいと思っていたところだった」

自分から言い出したことなのに、ヴィルオルはポカンとした表情で私を見ている。

「コンラートから婚約の申し入れがあった件について、聞いてほしい」

とは言っても、そこまで深い何かがあったわけではない。

単純に、私は結婚を焦っていて、偶然そのときにコンラートから申し入れがあっただけなのだ。

「結婚を焦っているというのは?」

「結婚適齢期なのに、一度も婚約の申し入れがなかったんだ。だから、ここが最後の砦だと思っていて」

誰でもよかった――まるで犯罪者の動機のような理由しか思いつかなかった。

「な、なんで婚約の申し入れが一件もなかったんだよ! おかしいだろうが!」

「それは弟ディルクが妨害していたのもあったが、それを抜きにしても、結婚したいと思う者がいなかったのだろう」

ヴィルオルは目をまんまるにして驚いた顔でいた。

「世間の男共は見る目がない!」

「どうだろうか?」

貴族の継承者たる者達は引く手あまたで、私みたいな大柄で我が強そうな女性を娶ろうだなんて思わないだろう。

継承者でない次男以下の者達も〝リウドルフィング公爵家の多額の持参金〟という旨味はあるが、それだけで結婚したいと望むような魅力がなかったのかもしれない。

「もっとよく考えて結婚相手は決めるんだ」

「そうだな、今回のことで勉強になった」

コンラートがあんなにも話を聞いてくれない人だとは思いもしなかったのである。

人の本性というのはわからないものなのだ。

「して、お前は結婚相手には、どういうことを望む?」

「私という存在を受け入れてくれる者だ」

「それだけなのか?」

「ああ」

両親は私の結婚によって何か益を得ることなど、期待はしていないだろう。

結婚適齢期ギリギリの十九歳になろうとしている今、結婚してくれたら誰でもいい、と思っているかもしれない。

「結婚したら、なるべく早く子どもを産みたい」

私の話を紅茶を飲みながら聞いていたヴィルオルが、ぶはっ! と噴きだした。

「げほっ、げほっ!!」

「大丈夫か?」

「はあ、はあ……」

テーブルを拭いて落ち着いたところで謝罪する。

「変な話をしてしまってすまなかった」

「いい、気にするな。でも、どうしてそんなことを望んでいるんだ?」

「それは――」

二年後に訪れる邪竜との戦いに備えるため。

ヴィルオルが捧げてくれた心臓を、無駄にできない。

私は一度目の人生でできなかったことを、やりきるまでだ。

「ユークリッド」

「!」

二回目の人生で、初めて名前を呼ばれたような気がする。

一回目の人生では、死に際だったのに。

「俺じゃだめなのか?」

「だめ、というのは?」

「婚約者になることだ」