軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

図書室での調査

貴族高等学校の図書室は王都にある教育機関の中でもっとも多くの蔵書量を誇っているらしい。それほど多くの本があるのならば、邪竜に関する書籍もあるはずだ。

中に入ると、壁一面の本と本棚の数に圧倒される。

『危ない、危なーい!』

目の前を、本を抱えたトンボみたいな生き物が通過していく。

あれはきっと〝本の虫妖精〟だろう。

知識を食料とし、人語を扱う賢い妖精族だ。

本棚の整理をしているようなので、きっと司書として働いているのだろう。

『何かお探しかい?』

頭上を飛んでやってきたのは、紫色の翅を持つ蝶の姿をした本の虫妖精。

『ワタシはここの本のすべてを把握していてね、読みたい本があれば、紹介してあげるよ』

「ああ、ありがとう。助かる」

そんな言葉を返し、指先を差し伸べる。

『気が利くねえ』

そう言って本の虫妖精は私の指先に優雅に止まった。

『おや、あなた様はもしや、妖精族の王の血筋ではないのかい!?』

「妖精族の王というのは」

『エルフだよ。名前はたしか、リウドルフィングだ』

「だったら間違いない」

エルフはたしかに私達リウドルフィング公爵家の始祖である。

とんがった耳が特徴だったが、今は人間同士の婚姻が続き、その特徴はなくなっている。

『ああ、なんていう尊さ!』

本の虫妖精は 口吻(こうふん) を私の指先に寄せ、敬意の口づけをしてくれる。

エルフの外見はなくとも、大きな魔力と魔法の才能は引き継いでいるようで、この本の虫妖精のように敬ってくれる者も多い。

『すまない、話が逸れてしまったね。本の紹介をしようではないか!』

「ありがとう。では、竜について書かれた書籍を教えてくれるだろうか?」

図書室を利用している生徒は思いのほか少ないが、誰の耳目があるかわからないのだ。

そのため、範囲を狭めて竜の本とした。

『竜に関わる書籍は全部で五百冊程度あるけれど、もっと範囲を絞ってみるかい』

「五百冊……さすが、王都一の蔵書量を誇る教育機関だ」

『まあ、収容しきれない本を集めていたら、こうなったみたいだけれどね!』

「そんな事情があったのか」

『そうなんだ! でも、ほとんどが初心者向けの本ばかりで、そこまで専門的な本があるわけではないから、本気で調べ物をしたいときは、王都の中央図書館のほうをオススメするよ。閲覧制限がある準禁書も申請が通ったら読むことができるし!』

「なるほど」

ひとまず、竜の種類に関する本を紹介してもらおう。

『竜の種類について書かれた本は、ざっと百冊程度かな』

「絞ってもそんなにあるのか」

『竜を題材にした本は人気が高いからね! 具体的にどの種類の竜について知りたいか言ってくれたら、もっと冊数は減ると思うよ!』

「うーーん」

邪竜、とストレートに口にするのは避けたい。

どうしようか、と悩んだ結果、苦し紛れに思いついた条件を出してみる。

「では、歴史の中で人に害を及ぼす竜についての書籍はあるだろうか?」

『専門的に書かれた本はないけれど、魔物図鑑に何体か掲載しているみたい』

「だったらそれを読ませてほしい」

『わかった』

本の虫妖精はふわりと飛び立つと、本がある場所まで案内してくれる。

『これかな!』

背表紙に止まり、本の位置をわかりやすく教えてくれた。

「君のおかげでスムーズに発見できた。感謝する」

『いえいえ、お安い御用さ! 読み終わった本は背表紙を上にして置いていれば、トンボの妖精が片づけるからね! じゃあ、他に知りたい本があれば、呼んでほしい』

「ああ、ありがとう」

本の虫妖精はひらひら飛んでいなくなった。

「さて――」

紹介してくれたのは分厚い本だった。本棚から引き抜き、席でゆっくり読ませてもらう。

かなり広い施設だが、利用しているのは三、四名くらいか。

皆、この学校には結婚相手を探しにきているので、昼休みも社交の時間となっているのだろう。

私も結婚相手を探すべきなのだろうが、今日のところは調査に時間を割く。

リーベは私の肩から降り、テーブルに寝っ転がる。

お腹いっぱいになって眠くなったのだろうか。お腹を上に向け、ぷうぷう寝息を立てて眠り始める。

それを眺めていると私も眠くなったが、お昼寝なんてしている場合ではない。

昼休みの時間は限られているので、サクッと読んでしまおう。

目次から竜の文字を探すも、該当するのはワイバーンやヒュドラ、リザードなどの竜に似た姿をした魔物しかない。

これは少し選択を誤ったかもしれない。なんて思いつつも、念のため読み進める。

「うーーーん」

やはり、邪竜と思われる記述を見つけることはできなかった。

ここではなく、王都の中央図書館に行ったほうがいいのだろうが、外出するには許可証が必要となる。

邪竜について調べたいなどと言えるわけもなく、かといって別の理由は思いつかない。

何か外出できる理由を考えなければ。

なんて考えていたら、背後から声がかかる。

「おや、あなたは」

振り返った先にいたのは、入学式の日に倒れていたところを助けた男子生徒、コンラート・フォン・ゲルントンだった。