軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬休み最終日

おはようございます。

今日の天気は雪です。

窓から見える景色が一面白いです。

前世東北出身なので、雪は見慣れたものですが、この世界の雪も、前世と変わらない白い雪です。

ちょっと青とか緑とか赤い雪を期待したりもしたけど、普通の雪でした。

今日は、冬休み最終日なので、明日からの学園生活に向けての準備に充てられます。

と言っても、俺はやることも特に無いけど。

シェルにモコモコの着ぐるみに着替えさせられ、朝食の席へ。

ちなみになんの着ぐるみかは不明。

犬のような垂れ耳と、狐のようなボリュームのある尻尾、薄ピンクと濃い赤のパンダ柄って、なんの動物か?

たぶん魔物の子供なんだろう。

双子王子は、薄ピンク部分が白くなった、お揃いの着ぐるみを着てるので、たぶん白と赤の方が親の配色なんだろう。

姫様二人してキャーキャー言ってたし。

王妃様二人に代わる代わる抱っこされたし。

王族全員が揃う食事は珍しい。

ロクサーヌ王妃様は勝手に遠征に行くし、リィトリア王妃様、クレモアナ姫様は、パーティーに招待されて忙しく、イングリードはイライザ嬢目当てにパーティーに参加、キャベンディッシュもどっかのパーティーに頻繁に出掛けてて、王様は仕事が忙しかった。

チビッ子達はまだパーティーには出席できる年齢じゃないので、お城で教師を付けてのお勉強や訓練をしてたそう。

アールスハインは、パーティーの招待状は来てたけど、興味が無くて行かなかった。

明日からは、キャベンディッシュとアールスハインが学園に行っちゃうので、また暫くは全員が揃うことは無い。

食後のお茶の時間に、

「んん」

と、王様が皆の注目を集めるように喉をならすと、

「あー、突然だが、クレモアナとイングリードの婚約が決まった。来週末にも顔合わせの茶会を開くので、時間を空けておくように」

「まあまあまあ!それは本当ですの!何とお目出度い事でしょう!クレモアナ、イングリード、おめでとう!」

真っ先にお祝いを言ったのはリィトリア王妃様、続けてロクサーヌ王妃様も、

「二人共おめでとう!相手は強い奴か?」

ニヤリと尋ねたロクサーヌ王妃様に、

「はぁー、ロクサーヌ母様の基準はそればかりですのね、わたくしが相手に求めた条件は、一番に実務能力でしてよ!勿論健康で有るのは大前提ではありますが、ロクサーヌ母様を筆頭に、この国は些か武力に傾き過ぎです!国民を守る為にもそれが悪いとは言いませんが、王妃自ら率先して前線に立とうとされるのはどうかと思いますわ!」

「まぁまぁ姉上、祝い事の前です、説教はそれくらいで、まあ、俺の相手は強いですがね!」

クレモアナ姫様の説教を宥めたイングリードだが、最後の付け足しにロクサーヌ王妃様の目がキランと光った。

「それはそれは楽しみだ!」

「はぁー、ロクサーヌ母様、ほどほどになさいませ!イングリードも、ロクサーヌ母様のせいでお相手に逃げられても知りませんわよ!」

「「「ねえさま、大にいさま、おめでとーございます!」」」

チビッ子達のお祝いの声に、クレモアナ姫様とイングリードが笑顔で礼を言う。

「モアナ姉様兄上、おめでとう御座います」

アールスハインもお祝いの声をかけ、

「ふちゃりとも、おめれとー」

俺もお祝いした。

キャベンディッシュも一応、って感じで、

「おめでとう御座います」

っては言ってたけど、どっか上の空だった。

和気藹々と相手の事を聞き出しながら暫く過ごし、各々の予定へ。

午前中はアールスハインは仕事を済ませ、俺は読書。

昼食は部屋でとった。

アールスハインも特に明日からの用意は無く、午後は騎士団の訓練場に。

騎士達は、午前中は仕事をこなし、今は30センチ程積もった雪の、雪かきをしている。

除けたそばから降る雪に、一向に進まないので訓練も兼ねて、火の魔法剣での除雪を始めた。

雪の中動き回るのは、何時もとは勝手が違ってスッ転ぶ騎士多数。

そこに火魔法剣から飛び火した火が騎士に襲いかかる。

負傷者続出。

最近は俺の手伝いもいらないくらい治癒魔法が上手くなって来たのに、今日は全然間に合わないくらいの多数の負傷者。

仕方無いので手伝いました。

先ずはトンネルバリアを作って火傷の治療。

それでは間に合わない奴は、個別での治療。

雪の中での何時もより威力の高い火魔法剣、何度負傷してもすぐに回復する体。

次第にテンションが上がって来たのか、半裸になる騎士多数。

雪の降る空の下、半裸の体からは湯気が上がる。

なんか臭そう。

誰か一人が笑い出すと、周りも伝染して笑い出し、ゲラゲラ笑いながら雪の中、半裸で剣を振る怪しい集団の出来上がり。

せっかく反省したのに!

全てが台無しになった午後でした。

夕飯前に風呂に入り、晩餐室に入ると全員が揃っていた。

一緒に訓練を受けていたイングリードも到着してて、でも髪がビショビショだったので、魔法で乾かしてあげたら、リィトリア王妃様とクレモアナ姫様が物凄く食いついて来た。

髪が長いからね。

今日のメインは醤油味のから揚げ。

ドンと山に盛られたから揚げに、アンネローゼの鼻息が荒い。

まあ、他の皆も嗅いだ事の無い匂いに小鼻をひく付かせているけど、アンネローゼ程荒くはない。

「本日こちらに御用意しましたのは、アマテ国のスサナ王子より譲られた、ソイユと言う調味料を使った唐揚げです」

デュランさんの紹介に、

「ほう、新しい調味料か、確かに今まで嗅いだ事の無い香りだ。これはアマテ国からの輸入品に新たに加わる物か?」

「はい、既にラバー商会との契約が済んでおります」

ラバー商会の名前に、こっちを見てニヤリとする王様。特に何かを言われる訳でも無く。

「それでは頂こう」

そう言って食事が始まった。

興奮気味に皿に取り分けられる唐揚げを、ガン見するアンネローゼ。

ソワソワと縦揺れしている。

目の前に置かれるなり、齧り付き、肉汁にやられてハフハフしてる。

「な、な、な、なにこれは!おいしーーー!」

叫ぶなり、また唐揚げに齧り付き、熱さにやられてハフハフしてる。

それを見て皆も唐揚げを口にして、

「なるほど、確かに旨い!香ばしい香りと、程好い塩味、塩の唐揚げとはまた違った旨さが有る!これは良いな!」

王様絶賛。

他の皆も、

「ああ、これは旨いな!」

「ええ、この独特の香りも、癖になりますわね!」

「色は悪くなりますけれど、この美味しさならば、気になりませんわね!」

「「おいちーーーー!!」」

「ああ、旨い!これは幾らでも食える!」

アンネローゼはものも言わず、ひたすら食ってる。イングリードと同じくらい食ってる。

そこで、自分も食べる事に夢中になってたクレモアナ姫様が、ハッと気付いて、アンネローゼの給仕を担当しているメイドさんに、制止の声をかける。

「ちょっと、そこまでよ!アンネローゼにそれ以上食べさせてはダメ!」

既に相当な数食ってるが、今皿に盛られた物までで終了の宣言をされた。

制止されたアンネローゼは、

「モアナ姉様ずるいですわ!ご自分はまだまだ食べるくせに、わたくしの分だけ少なくするなんて、酷すぎます!」

抗議の声をあげた。

クレモアナ姫様は、それに冷静に、

「ねえ、アンネローゼ、貴女唐揚げを幾つ食べたか自分で分かっていて?」

クレモアナ姫様の冷たい目線に、

「そんなの数えているわけ無いでしょう」

と反抗的に返すと、

「そう、イングリードと同じ程の数食べているのに、まだ食べる気なの?メリー、アンネローゼが食べた唐揚げの数は?」

突然クレモアナ姫様に名指しされたメイドのメリーさんは、ビクッとした後、

「じ、じ、十五個程です」

と答えた。

「そう、ありがとう。ねえ、アンネローゼ、貴女十五個も食べたのですって、それでもまだ食べるの?」

数を聞いた途端、リィトリア王妃様も、目が氷のように冷たくなった。

二人に凍えるような視線を向けられたアンネローゼは、それでも食欲に抗えないのか、

「ですが、こんなに美味しい物を目の前に、我慢なんて出来ません!」

と、涙目で抗議した。

「そう、美味しい物が目の前にあったら、我慢出来ないのね?なら、こうしましょう。明日の朝からの食事は貴女一人で取りなさい、しかも以前の固いパンと肉で、それなら貴女は食事の量を減らせるものね?」

「そんな!酷すぎます!わたくしに飢えて死ねと仰るのね!」

ワアーーー!と泣き出したアンネローゼ。

男性陣ドン引き。

それでも撤回されない言葉に、アンネローゼが王様を縋るように見る。

「アンネローゼ、お前は知らないだろうが、商人のパーティーでも、お前の体型の事が話題になっている。それだけでは無い、お前は、弟達のおやつを奪い、メイドの菓子まで奪おうとした。一度リィトリアに叱られたにも関わらず、また繰り返した。自分の欲望の為に、下の身分の物を奪うのは、犯罪だ。分かるね?暫くは、クレモアナの提案通り、反省しなさい」

何も言えずブルブル震えるアンネローゼ。

ボロボロ涙を溢しているが、誰も同情出来ない。

流石に同じ過ちを繰り返しては、許されない。

王様も今回は厳しく行くようだ。

アンネローゼの泣き声をバックに食事を済ませ、サロンへ移る。

どんよりした空気の中、

「なあアンネローゼ、そんなに食事の事ばかり考えるから、人の物まで奪ってしまうんだろ?なら他の物に目を向けたらどうだ?」

「ほ、ほがのものっで、なんでずの?」

泣きながらなので、どもっているが、

「そーだなー、剣術なんてどうだ?体も動かせるし、戦闘中は食事の事など考える暇も無い!」

名案!とばかりに提案するロクサーヌ王妃様に、

「剣術に夢中になる令嬢なんて、ロクサーヌ母様くらいですわね!」

「そんな事は無いだろう!女性騎士だって最近増えてきたし!」

「女性騎士の大半は平民ですわね、平民は自分で結婚相手を選べますが、アンネローゼはこれでも姫なのです、姫としていずれ嫁ぐ身なのに、剣術にかまけて令嬢としての礼儀を疎かにすれば、嫁の貰い手はありませんわね!」

「それは、だが、何処かに物好きな奴は居るかも知れんだろう?」

「ロクサーヌ母様は、その物好きにアンネローゼを嫁がせますの?」

「いや、アンネローゼは私が認めた男にしか嫁がせん!」

「ご自分の仰りように矛盾が有るのをお分かりですか?」

「あ、いや、あー、アンネローゼすまんな、良かれと思ったのだが、令嬢としては、私は失格だからな」

心底すまなそうに謝るロクサーヌ王妃様に、アンネローゼは泣き止んだ目を向け、

「ロクサーヌ母様、わたくし行きますわ!ロクサーヌ母様に付いて遠征へ!」

「ちょっと、アンネローゼ貴女自分が何を言っているか分かってますの?」

まさかロクサーヌ王妃様の提案に、アンネローゼが乗るとは夢にも思ってなかったクレモアナ姫様が、驚いて声をかけるが、アンネローゼは、

「わたくし決めましたの!痩せて綺麗になるまで、この城には戻りません!」

ムフーっとばかりに宣言した。

「アンネローゼ、遠征へ行くには、最低限自分の身を守れるだけの強さが無いと、連れては行けん」

イングリードが現実を言えば、

「わたくし、自分の身は自分で守れます!だってずっとベイリーの攻撃をバリアで防ぎ、逃げ延びてきましたもの!」

「おお、あのベイリーの攻撃を防げるのか?凄いなアンネローゼ!」

ロクサーヌ王妃様が誉めるので、アンネローゼが腰に手を当てふんぞり返る。

「ロクサーヌ母様、褒めている場合ではありません!アンネローゼはまだ十にもなっていない少女なのですよ!」

「何、心配するな、アンネローゼの身は、私が守る。それよりも、この城に閉じ込めて我慢を強いるより、広い世界を見せて、自分の立場を考えさせる良い機会だ」

「……………それも一理有るか」

「お父様!」

「だがクレモアナの言う通り、アンネローゼがまだ子供であることは事実。だから、一年だ、巡回騎士に着いて、この国を見てくることを許す。アンネローゼ、途中で投げ出すことは許さない。分かったな?」

「はい、お父様!わたくしやりとげて見せますわ!」

と言う事で、アンネローゼとロクサーヌ王妃様は、一年間、巡回騎士に着いてダイエットの旅に出ることが決定した。