軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食堂で

魔法訓練が終了して、程好い時間になったので、ご飯を食べに食堂へ。

到着したのは、混雑のピークよりは少し早目で、席は6割埋まってるって所。

運の悪い事に、今日は、既に二股女劇場が開幕していて、中央の席では、周りに見せつけるように絡み付く二股女を連れたキャベンディッシュが大声を張り上げている。

今日は、そこに生徒会長まで居るので、いつもよりも更に騒がしい。

なので食堂に入らずに、入り口から覗いている俺達はとても怪しいが、中を覗いた人達もあぁあれね、って理解してくれるので、文句を言われる事は無い。

キャベンディッシュの大声の内容は、今度の演習で、生徒会長よりも結果を出すとの宣言だった。

演習の成績上位者は、集会で発表されるので、勝敗が一目瞭然なんだって。

そんなキャベンディッシュの宣言に、対峙していた生徒会長は、余裕たっぷりの笑顔で、

「それならばこうしましょう!演習で勝った方が、リナの正式な恋人になると!負けた方は潔くリナを諦める!リナもそれで良いね?」

と、キャベンディッシュに引っ付く二股女の手を取って、指先に口付ける。

ギャーーーーッ!!!!と食堂に悲鳴が響き渡る。

予め薄くバリアを張って、音を絞っていたお陰で、無事に済んだが、直撃されたら大変な事になっていただろう。

実際、直撃を食らってフラフラの人が何人か見えるし、大丈夫ですか―?

生徒会長の発言と指先へのチューに、体をグネグネさせて喜んでいる二股女。

「でもでもぉ~、私は、まだ誰のものでも無いってゆぅ~か~、みんなお友だちって思ってるのでぇ~、私のために争ってほしくないですぅ~」

…………なぜ俺達は、こんな茶番を見せられているのだろう?

食堂にいる生徒の大半と、入口に留まって様子を見ていた生徒、当然俺達も、一斉にスンとした顔になる。

二股女とキャベンディッシュ、生徒会長の声の響く中、他に声を発する者はいない。

食欲が急激に無くなった俺達は、時間をずらす事にして一旦解散した。

気持ちは同じなのか、入口にいた生徒も続く。

部屋に戻って来たアールスハイン、シェル、俺。

誰からともなく溜め息をつく。

キャベンディッシュに続き、生徒会長も二股女に落ちたらしい。

どこが良いのか俺には全く理解出来ないが、俺達がこの世界に来て、まだ20日たっていないのに、二人も落とされたのは早い方なんだろう。

その内アールスハインやユーグラム、ディーグリーなんかも落とされるんだろうか?

……何だっけな?確か妹の言う事には、乙女ゲームには乙女をときめかせるイケメンで高スペックの男子が必要!だったかな?

イケメンて事なら、アールスハイン、ユーグラム、ディーグリー辺りは入るだろうし、生徒会長、書記とかも入るだろう、何ならインテリヤクザな担任だって、強面だけど文句無くイケメンの部類に入る。

そこに顔だけは良いキャベンディッシュも入ると…………多くない?

二股女は、ユーグラムにも声を掛けてた所をみると、二股じゃ足りないってこと?何?毎日取っ替え引っ替え?最早二股じゃ無くビッチ?ビッチ女?

嫌だね!引くね!理解出来ないね!絶対近寄りたくないね!仮令自分が狙われて無くても、とばっちりや言い掛かりがバンバン跳んできそうね!

実際キャベンディッシュを見てれば、間違いなく来る事確実だね!

とにかく近付かない事が大事だね!

俺が悶々と考えている間、真面目に王子の仕事をしていたアールスハインは、一段落したのか、腰を上げて俺を覗き込み、寝てない事を確認すると抱っこして食堂に向かった。

時間をずらした生徒で込み合う食堂。

皆考える事は一緒だね!

いつもの隅の席に向かうと、ユーグラムとディーグリー、そして何故か書記様がいて、近付く俺達に、書記様が立ち上がってアールスハインに一礼。

「アールスハイン王子、食事をご一緒しても宜しいでしょうか?」

「あぁ、俺は構わないが」

アールスハインの視線の確認にユーグラムとディーグリーも了承するように頷くので、

「ありがとうございます」

と相席することになった。

流石にシェルは隣の席に移動したが、移動しようとした俺をユーグラムが捕獲して、隣に座らせたので、一緒のテーブルに座りました。

メニューを決め、待ってる間ディーグリーが、

「今日はどうしたんですか~?珍しく会長と一緒に居なかったですけど?」

「ああ、この2、3日はあまり一緒にはならなくてな。」

「あー、それってキャベンディッシュ王子と一緒にいる令嬢と関係あります?」

「そうだな、何と言うか、ハウアーは彼女に会ってから様子が変わったというか………」

「バカになった?」

「ああ!いや、うーん?突然彼女に夢中になったと言うか………」

「今日もー、つっても一時間位前なんですけど、キャベンディッシュ王子と会長が、彼女の恋人の座を掛けて、演習の成績で勝負するって宣言してましたよ」

「…………そうか、ハウアーの様子を見て、お前達はどう思った?」

「………………そうですね、元々目立ちたがりで無駄にプライドの高い人でしたが、王子相手に勝負を挑むような人とは思いませんでした」

ユーグラムは、元から会長に良い印象は無かったのか、意見が辛辣だか、それを聞いたディーグリーと書記様が苦笑してるので、二人もそれほど意見が変わらないらしい。

「そうだな、プライドは高いが、王族には、相応の敬意を持って接していたように思う」

「それが彼女の出現で崩れちゃったってことですか―?」

「それが………何と言えば伝わるか、彼女に会った途端、人が変わったと言えばいいか、形振り構わなくなったと言うか………アールスハイン王子、質問しても宜しいですか?」

「あ、ああ構わない」

「ありがとうございます。彼女はこの国に来て、学園に来る間、王宮に滞在していたと聞きました」

「ああ、学園が始まる2週間程前に王宮に来たが?」

「キャベンディッシュ王子は、彼女に会ってお変わりになった様子は無かったですか?」

「どうだろう?俺と兄上は元々それほど接点が無かったからな………だが確かに、少々あの令嬢に対しては、異常と思える行動もあったように思う」

「……………………アールスハイン王子、1度、テイルスミヤ長官に相談してみては頂けないでしょうか?」

「具体的な内容は?」

「………………彼女に、魅了の魔法の才はあるかどうかです」

「魅了とは………」

「杞憂で終われば構わないのです、ですが万が一魅了の魔法によってキャベンディッシュ王子やハウアーの気持ちを縛っているのだとしたら……被害は彼等だけでは済まないでしょう」

「それは些か早計ではないですか?彼等がただ単に恋に夢中になっているだけかも知れませんし、その方が可能性は高いでしょう?」

「それならそれで構わないんだ、ただ、もし魅了の魔法を使われたなら、今後の彼等の行動は、更に周りを巻き込んで過激になって行きはしないかと、それが心配なんだ」

悲痛と言っていいほどの真剣な表情の書記様。

そこにタイミング良く?悪く?運ばれて来た食事に、書記様も含め皆が息をつく。

まずは食事に、って事でいただきます。

食事中は特に会話も無く、俺を最後に食事を終えて、アールスハインが、

「話は分かった。ユーグラムの言う通り、オコネル殿の話は少々深刻に考え過ぎかとも思うが、可能性がある以上、相談だけでもしてみよう」

「ありがとうございます」

「気の迷いってだけだといいよね~」

「全くですね、ですが、彼女を見ていると…………他の令嬢とは全く違う生き物のように感じてしまいます」

「確かに~!慎みとか嗜みとか、礼儀とかどこに置いて来たんだろ~ね~?彼女ってばお姫様のはずなのにね~?」

「そうなんですよね、いくら辺境の小国と言っても限度がある。………確かに彼女に夢中になる彼等が、操られていると言われても納得してしまいますね」

「うーん、でもな~、珍しさに目が眩んでるって言われても納得するかな~?」

「ええ、それも確かに」

「そもそも何で書記先輩は魅了の魔法なんて思ったんです~?普通に一目惚れとか考えると思うんですけど~?」

「………俺の父は近衛騎士団長だが、父の実家は知っての通り、隣国との国境にある辺境だ。

今は伯父上が治めているが、祖父が当主だった頃は、俺も頻繁に滞在していた。

その時に隣国から逃れてきた難民の中に、魅了の魔法使いがいたんだ。

魅了の魔法使いはまだ魔法使いとして未熟な若い女性で、彼女を巡って難民の男達が日々争っているような様だった。

祖父はその女性に同情したのか保護を決めたんだが、館の下働きとして雇って、同時に魔法の訓練もさせた。

しかし、その女性は、自分の魔力を自在に魔法として使えるようになった途端、豹変した。

館にいた将来を嘱望される見目の良い兵士達を軒並み魅了の魔法に掛け、自分の望むままに操り始めた。館どころか領内は大混乱に陥った。

このままでは領内で内乱が起こるのも時間の問題かと思われた時、女性は旅芸人の男に一目惚れをして、魅了の魔法であっさりと自分のものにした。それまで女性は、魅了の魔法を掛けた全員に好意のある素振りは見せるものの、一人を選ぶ事はしなかった。

だが旅芸人に会って、女性は旅芸人に夢中になる余り、他の男を遠ざけた、魅了の魔法に掛かった男達がそれを許すはずも無く、女性と旅芸人は複数の兵士によって切り殺された。女性が死んだことで魅了の魔法は解けたが、兵士達は自我を失い、兵士として使い物にならなくなった」

「「「……………………………」」」

「そんな事があったせいで、一時期祖父の領地は国境にも関わらず、極端に兵士の少ない領地になってしまい、危うく隣国に攻めいられる所を、恥を忍んで援軍を求めた国軍によって救われたんだ」

「…………そんな事が、だから魅了の魔法の存在を危惧したのですね、納得しました。ライダー先輩の仰るように、万が一魅了の魔法が使われていたら、これからの被害を考えると恐ろしくなりますね」

「あぁ、本当に、俺の考え過ぎで済めばそれに越したことは無いんだが、ハウアーを見ているとどうしてもな……」

「一応、テイルスミヤ長官だけでなく、王宮にも可能性の話として伝えておく」

「よろしくお願いいたします」

重苦しい空気のまま今日は解散した。