軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4日夜

食事室に到着。

晩御飯のメニューを考えていたので、いつもと違う雰囲気に気付くのが遅れた。

アールスハインに抱っこされて食事室に入ると、いつもとは違うメンバー、いや、いつものメンバーに加えて、余計なのが二名程。

二股聖女を連れたキャベンディッシュが席に座っていた。

人目も憚らずイチャイチャする二人に、アンネローゼと双子王子が興味津々で見ているが、その他のメンバーは、微妙に顔を引き攣らせている。

食事が始まっても空気は微妙で、二股聖女のマナーは最悪だった。

ズラリと並んだカトラリーを無視で、フォークとスプーン一本ずつしか使わず、カチャカチャ音をたて、口に食べ物が入ったままキャベンディッシュに頻りに話しかける。

初めは興味津々で二人を見ていたアンネローゼも、マナーの悪さに眉を寄せている。

異世界人のマナー最悪!とか思われては堪らないので、俺はいつもより気をつけて食事をしたよ。

食後のお茶の時間、いつもならリラックスして、おしゃべりを楽しむ時間なのに、余計な二人のせいで誰も何も話さない。

余計な二人は空気も読まず、大きめとは言え、一人掛けのソファーに密着と言うか、二股聖女が乗り上げるように座って、二人だけの世界を作り上げている。

堪り兼ねて声をかけたのはアンネローゼ、

「キャベンディッシュお兄様、今日はどうしてこちらへ?いつもは聖女様とお二人だけで食事をなさっていると聞いておりましたが」

「あぁ、アンネローゼ、よく聞いてくれた!最後の晩餐位、ゆっくり味わわせてやろうと思ったが、逃げられては堪らないので、私自ら見張りに来てやったのだ!」

「見張り、ですか?どなたの?」

「そこに図々しくも平然とした顔でいる、出来損ないと不遜な幼児だ!父上!聞いて下さい!そこの出来損ないと幼児は事もあろうか聖女様に危害を加えたのです!即刻捕らえ、厳重な罰をお与え下さい!!」

突然の告発に、王様王妃様、イングリードにアンネローゼまでが、目をパチクリしている。

さすがに王族、それ以上の動揺は見せていないが、

「突然どうした、まずは詳しい経緯を説明せよ」

「は!失礼いたしました!今日の午後、私と聖女様は、庭園で魔法の訓練を行っておりましたが、そこへ突然乱入してきた出来損ないと幼児は、あろうことか聖女様に向かって火魔法を撃って来たのです!幸い聖女様に酷いお怪我は有りませんでしたが、一歩間違えば命に関わったかも知れない事態でした!どうかこの者達を厳罰に処して下さい!!」

庭園で魔法の訓練と聞いて、一瞬険しい顔をした王様、一応最後まで話を聞き終えて、

「突然乱入して、理由もなく火魔法を撃って来たと?」

「そうなのです!聖女様を害すなど!どんな理由が有っても許されるものでは有りません!!」

自分の言葉に酔って、どんどんヒートアップしていくキャベンディッシュ。

対して王様は、とても冷静に、

「アールスハイン、ケータ殿、キャベンディッシュはこう申しておるが、相違ないか?」

「いえ、全くの事実無根です。私とケータ殿は、テイルスミヤ長官との魔法訓練終了後、偶々通りかかった庭園で、聖女様とキャベンディッシュ兄上が魔法訓練をしていたのを見かけただけで、通り過ぎようとした所に、聖女様の火魔法玉が飛んできて、それがケータ殿のバリアに弾かれ、聖女様に火魔法玉が着火しました。周りの騎士達もキャベンディッシュ兄上もオロオロするばかりで、一向に火を消す気配が無いので、見兼ねたケータ殿が水の魔法玉を聖女様に打って、消火しました」

「う、う、うそだ!お前達が突然魔法を撃って来たのだろう!言い逃れは見苦しいぞ!!」

本当の事を言ったら、キャベンディッシュが更に興奮してきた。

「失礼します、発言の許可を頂けますか?」

割って入ったのは意外な人物、ザ・執事なデュランさん、王様も意外そうな顔をしたが、頷いてデュランさんを促す。

「本日の午後、庭園の管理を任されております庭師のラズエルから報告が上がっております。回廊の庭園で、聖女様とキャベンディッシュ王子が魔法訓練をした際、庭園の植物がかなりの範囲、破壊されたので、修復のため暫くの間、回廊の封鎖をしたいとの事でした。詳しい経緯を聞いた所、ラズエルは植物の定期的な手入れのため回廊の庭園におりましたが、キャベンディッシュ王子に魔法訓練をするから場所を空けるよう命を受け、一旦その場は離れましたが、すぐに戻り、魔法訓練によって出る被害の状況を確かめようと、お二人のご様子を覗いていたそうです……」

「覗きなどと何と卑劣な!」

「キャベンディッシュ黙れ、今お前に発言の許可は出していない」

「し、失礼しました」

「フランデュラン続けてくれ」

「はい、お二人の魔法訓練によって、庭園の植物は見る影もなく破壊され、その後、偶然通りかかったアールスハイン王子とケータ様、シェルに、キャベンディッシュ王子が言い掛かりのような言葉をかけ、相手にせず通り過ぎようとした3人に、聖女様が後ろから火魔法を放ち、ですが3人に当たる前に弾かれ、弾かれた火魔法が聖女様に直撃、周りの騎士もキャベンディッシュ王子も動揺するばかりの中、ケータ様が水魔法を聖女様に打って鎮火させたのですが、なぜか更に激昂したキャベンディッシュ王子は剣を抜いて、アールスハイン王子とケータ様に斬りかかり、アールスハイン王子にいなされると、怒ってその場を去って行った。と言う事でした」

その場に沈黙が落ちる。

二股聖女とキャベンディッシュの二人は、嘘がばれて気まずそうな顔を、それ以外の人は、呆れ返った顔をしている。

「概ね、アールスハインの言葉の通りだな、アールスハインとケータ殿を害そうとしたのが聖女殿で、その聖女殿を助けたのもケータ殿。キャベンディッシュ、お前の話とはまるで逆だな、これはどう言う事だ?キャベンディッシュ、お前は王である私に虚偽の申し立てをし、弟であるアールスハインと賓客であるケータ殿を投獄させようとしたのか?それだけではない、代々続く我が城自慢の庭園を、たかが魔法訓練の為に破壊したとか?キャベンディッシュ、お前も王子として教育を受けてきた身、自分のしたことの責任の取り方は分かるな?」

ダラダラと目に見えて冷や汗をかくキャベンディッシュは、王様に睨まれて何も言えない。

「そ、そんなに怒らないであげて下さい!ディッシュは、私のために一生懸命だっただけなんですぅ~!私だって、そこの子に魔法を向けちゃったのは、慣れない魔法で手元が狂っちゃっただけでぇ、わざとじゃ無いんですぅ~!!私が怪我をするかもって、ディッシュも慌てちゃっただけで、悪気はなかったんですぅ~!幸い私も無事でしたし、今回はその子も悪い所を謝ってくれれば、私は許してあげるので、もうこれ以上ディッシュを怒らないであげて下さい!!」

空気を読む気の無い二股聖女が、見当違いの言い分を王様に訴える。

誰もが、こいつ何言ってんだ?って顔をしてるのに、一人キャベンディッシュだけは、二股聖女に庇われた事に感激している。

「話を聞くに、ケータ殿に非は無いように思うが?」

「ええ?だって私、その子の魔法で命を落とす所だったんですよ?普通は謝っても許されない事でしょう?」

「その命を落とすかも知れない魔法を、先にケータ殿に放ったのは聖女である君だろう?」

「でもでも、私の習って無い魔法で反撃するなんて卑怯です!」

「……………話にならんな、とにかく!今回の件は、全ての非はキャベンディッシュにある。したがって、キャベンディッシュ、お前の王位継承権を1年間剥奪する!その1年の間に、王子として認められる功績を見せよ、さもなければ永久に継承権は戻らぬと思え。それと聖女殿の世話人の任を解く、聖女殿には相応しい教師をすぐに手配する」

「ち、父上!そんな!厳し過ぎます!それに聖女様の世話人が私以外に務まる筈も有りません!!」

「そうです!私もディッシュ以外の人は嫌です!いくら王様でも横暴です!私とディッシュを引き裂くなんてあんまりです!!」

二人の抗議の叫びに、耳を貸す人はいない。

が、とても五月蝿い二人に、皆がウンザリしている。

「黙れ!これは王である私の決定だ!不服が有るなら、この国を出ていけ!」

「父上!それはあまりに非情ではありませんか!それに聖女様にこの国を出て行かれては、誰が魔王に勝てると言うのです?父上はこの国を滅ぼすおつもりですか?」

「キャベンディッシュ、私は黙れと言った。そしてこれは決定だとも。お前は、何か勘違いをしているのではないか?聖女が魔王を倒すのでは無い、我々が魔王を倒すのだ!聖女一人に倒せる魔王等、誰が恐れるものか、聖女とは、魔王の存在を知るための、あくまで目安に過ぎぬ。聖女の持つ特別な力が有るとしても、聖女一人で魔王を倒せる筈もない。お前のように、まだ現れてもいない聖女の特別な力をあてにするような、軟弱者に聖女の世話人の役を任せた私が間違いだった!」

目に見えて怒りを発する王様に、キャベンディッシュは何も言えなくなる。

さすがに二股聖女も黙り込み、

「学園が始まるまでの残り10日間、キャベンディッシュと聖女殿の接触を禁じる!その間に、それぞれに教師を付け、ある程度の基準に達しない場合、学園に通うことも禁じる!以上だ!二人を部屋に連れて行け!分かっているだろうが、二人には見張りを付ける。どちらかが命令を破れば、二人共に罰を与える!心して過ごすように!」

王様の言葉が終わると同時に、部屋に数人の騎士が入って来て、二人を部屋に連れて行こうとするが、二人は、無理矢理引き裂かれる悲劇の主人公かの様に、互いの名前を呼び合って泣き喚き暴れる。

が、騎士達によって問答無用で連れ出されて行った。

ようやく静けさを取り戻した部屋に、全員のため息が響く。

冷めた声で一言、

「とんだ茶番でしたわね」

と、呟いたのはアンネローゼ。

そのあまりに達観した表情に吹きだしたのは、部屋の隅に立っていたシェル、シェルの笑いに触発されて、皆が笑いだす。

あの二人がいなくなった途端に穏やかないつもの空気になる。

空気も緩んだ所で、今日は解散!