作品タイトル不明
691 ひと休み
ーーそれからすぐ。
各自、部屋を割り振り就寝となったのだがーー
莉奈は部屋の場所を確認した後すぐに、一階の角にあった浴室を目指した。
やはり、お風呂に入って汚れや疲れを落とさないと、1日が終わった感じがしない。身体も服や靴などと同様に、"浄化魔法"でキレイになるが、やはり湯船に浸かった様なホッとする時間が欲しかったのである。
別邸の浴室は、 碧月宮(へきげつきゅう) よりは狭いが、銭湯かスパ並みにかなり広め。ザッと見た感じ、20畳以上はありそうだ。
だけど、ここもやはりスチーム系のお風呂。ハマムはこの世界の主流の様だった。しかし、莉奈の中では、それはすでに想定内。
まるで霧みたいな湯気で真っ白な浴室で、キョロキョロとお湯や水が出る蛇口を探す。
壁側か真ん中かと探していると、壁側に蛇口が設置されていた。
蛇口は1つで、水の魔石が埋まっている。
その隣の岩からは、源泉掛け流しの温泉が湧いていた。量はそんなに多くないが、結構な熱さだ。
しかし、湯に浸かる習慣がないためか、シンクぐらいの大きさにくり抜かれた石に、ジョボジョボ流しっぱなしである。
身体を浸けるためではなく、身体を洗うために溜めているのだろう。
水の出る方も、同じく水が溜められる様に、くり抜かれた石が設置してあった。
莉奈は、ふぅと一息吐き精神を統一すると、想像を膨らませる。
水の出る蛇口と温泉の出る岩。この両方を壁に沿って半円を描く様に、
「ほりゃ!」
気合いを入れた莉奈は、想像に魔力をのせて解き放つ。
これでも魔導師だと言われた自分だ。絶対に出来るハズだと、真剣に魔力をのせれば、ズズンと音がした。
「やった!」
腰より少し低い高さの石壁が、半円に盛り上がったのである。
肩まで浸かるにはちょっと低いけれど、半身浴だと思えばちょうどイイ。
後は、水の蛇口を思いっきり捻り、掛け流しの温泉と混ぜて溜まるのを待つだけだ。
「ヨシヨシ」
莉奈は満足気に頷くと、頭や身体を洗った後、石の寝台にタオルを敷いて寝そべっていた。
お湯が溜まるまで、サウナ風呂ハマムを堪能する事にしたのだ。
ただ、この石台。温かくて心地良いが、固いので身体が痛くなる。そんなに長く寝ていられないのが難点だが、浴槽に湯が溜まるまでは我慢だ。
サウナ風呂のハマムは、温泉から出た少し熱めの湯気が、室内を充満していた。
それはまるで、霧か煙みたいに真っ白で、視界が悪い。
この中にヒッソリと刺客が混じって来たら、莉奈にはどうする事も出来ないなと、考えながら目を瞑るのだった。