軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

654 let's、串焼きパーティ!

皆がトイレに夢中なのを横目に、莉奈はいそいそと準備をする事にした。

「お前、何をやるつもりだ?」

魔物の肉を味見させると、ここへ来た莉奈が、門扉の傍で何やら準備している。バーベキューコンロに、串に刺した魔物肉。

どうやらココで焼くつもりかと、エギエディルス皇子は察した。

「焼き肉って、匂いからがご馳走じゃない?」

「……確かに」

「なら、出来るまでのワクワク感も味わって貰おうと思って」

皿に盛ってある肉ももちろん美味しいが、目の前で料理が出来ていくライブ感は格別だ。

それが、串焼き肉だなんて、莉奈は最高だと思う。

チリチリと肉が焼ける匂い。モクモクと肉から出る白い煙は、まるで美味しいお香だ。お腹が空いている時なんて、思わず鼻をスンスンさせてしまうし、どこから匂うのか、絶対に目で探してしまう。

今、自分で焼いているのに、涎が出そうである。

莉奈が魔物肉の串焼きをジュウジュウ焼き始めたら、匂いに気付いた兵士達が、今度はこちらに吸い寄せられる様にやって来た。

その光景はまるで、ゾンビ映画の様である。

パチパチと小気味良く肉の脂が弾ける音と、香ばしさを纏う白い煙のハーモニー。もはや、バーベキューコンロの前は、人気屋台みたいにあっという間に人集りだ。

「鶏か?」

「だな、鳥っぽいな」

手で煽ってみたり鼻をスンスンさせたりすれば、どこか嗅いだ事のある匂いだと、兵士達が口々に言う。

「ロックバードっていう"鳥"ですよ」

「鳥?」

「いや、あれは鳥じゃねぇし」

「「「……魔物だ」」」

莉奈が適当に返していれば、兵士達から総ツッコミが入った。

どこに行っても同じ反応に、莉奈は笑ってしまう。魔物だ動物だなんて言っているから敬遠するのだ。鳥は鳥、豚は豚、牛は牛として食べてしまえばイイのに、と莉奈は思う今日この頃だった。

「さぁ、まずはロックバードの焼き鳥が焼き上がりましたよ〜! どうぞお召し上がりください」

莉奈がそう言っても、はーいと素直な声が上がらないのもどこも同じだ。

あれだけ匂いに負けていた兵士達が、いざ食べるとなるとグッと堪えているから可笑しい。

長年身に付いた習慣を変えるのは難しいだろうけど、挑む勇気も時には必要だと思う。莉奈がどうしたものかと考えていればーー

「ったく、ウクスナ公国の兵は、臆病者ばかりだな」

エギエディルス皇子が焼き立ての串焼きを、パクリと食べた。

お腹が苦しいと唸っていたハズなのに、食べない兵士達に向かって発破を掛けてくれたのだろう。

「「「な!」」」

エギエディルス皇子の言葉に、兵士達は小さな声を上げた。

しかし、その"な"は何に対しての"な"なのか?

エギエディルス皇子が、魔物肉と分かっているのに躊躇いもなく食べた事か。それとも、"臆病者"発言に対してなのか分からない。

どちらにせよ、子供が恐れもせず食べた事により、魔物に対する忌避感やハードルはグンと下がった様だった。

誰ともなく串焼きに手を伸ばせば、取らない者=臆病者だとなったらしく、皆が競う様に手にすれば後は口に放り込むだけ。

鼻を擽ぐる香ばしい匂いと、チリチリと音を立て待つ肉に、誰も逆らえる訳はない。

「「「っ!? うっまっ!!」」」

「本当に魔物かコレ!?」

美味いハズがないと思っていた魔物の想定外の美味しさに、一気にザワザワし始めた。

「うっわ、スゴい弾力と旨味だな」

「あのロックバードが旨いなんて、マジかよ」

「何だよ、こんなに美味しいのに、蹴散らしてたなんてバカだ俺達は!!」

「こっちのヒュージャーピッグも、外はカリッと中はジューシーで堪らない」

「脂身が旨っ! あぁ、エールが飲みたい」

「俺はブラッドバッファローが1番だな。この肉肉しさがイイ」

「分かる。俺は今、肉食ってる〜って感じがする」

「そうだ、ブラッドバッファローって、この間討伐したよな?」

「したした! だけど肉は食わないから、すぐ燃やしたよな」

「あぁぁ、そうだった」

莉奈が焼き上がる側から皿に盛れば、掻っ攫うかの様に次々と手が伸びては胃袋に消えて行く。あれだけ不審そうな表情をしていたのに、まったく現金な人達である。

「アイツも食えるのかな?」

「マルガイラかぁ、アレはどうだろ」

「考えた事もないしなぁ」

空を飛ぶマルガイラを見ながら、皆は楽しそうに魔物肉の串焼きを食べている。もはや、このモルテグルは安泰だろう。なにせ、第2第3の莉奈が誕生していそうなのだから。

しかし、ガツガツ食べる姿は、見ていて気持ちがイイ。

莉奈は皆の胃袋が満たされるまで、焼きに焼いたのだった。

「「「はぁぁぁーーっ、美味かった!!」」」

久々の肉という事もあり、兵士達は余計に美味しく感じたらしい。

魔物の串焼きに大満足らしく、皆は心まで満たされた顔をしていた。

「で?」

食べ終わった皆に向かって、エギエディルス皇子がそう言った。

散々、魔物魔物と騒いでいたのに、食べ始めればペロリである。味見とはいえタダ飯食らって、何もなしはないだろうとエギエディルス皇子。

「「「ごちそうさまでしたーーっ!!」」」

ウクスナ公国の町モルテグル……ココに陥落。

提供した莉奈も大満足の結果となったのである。