軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

639 ウクスナ公国の公王アーリャ

アーリャが来たところで、「さてお開きだ」とはならないのが、莉奈達である。

ランデル達も、食べられるだけ食べるつもりらしく、次から次へと肉を焼いては、腹に詰め込んでいる。もはや、己との戦いみたいだった。

フェリクス王もフェリクス王で、アーリャは二の次らしく、追加の肉を取りに行く。

これは食べ終わるまで、アーリャとはまともな話はしないだろう……誰一人として。

「……」

わざわざ出向いたのに、歓迎どころか相手にされないアーリャ。

文句の一つでも言いたいところだが、言いたい事があり過ぎて、何から言ってイイのか分からなかった。

何故、町に入らない。

あそこに置いてある長細い箱は何だ?

腹が減った。

こんな場所にテーブルセットを置いて、何故食事をする。

食べている肉は何の肉だ?

あぁ、美味しそうな匂いだな。

いや、そもそも、わざわざ出向いて来たのに無視するな。

腹が減る。

公王アーリャは、フェリクス王への憤りや煩悩と戦っていた。

「よいこらしょ!」

ツッコミ所満載のフェリクス王達を前に、唖然としているアーリャ達を放ってはおけない莉奈は、もう一卓テーブルセットを準備する。

自己紹介した訳ではないけど、アーリャはウクスナ公国の公王で間違いないハズ。

なら、このまま立たせとくのは申し訳ない。

「よろしければ、ご一緒にいかがですか?」

「「「え?」」」

「食べながらでも話は出来ますし、陛下も竜もいますので、魔物に襲われる心配もないと思いますよ?」

「竜?」

莉奈はそう言って、自分達の隣に並べたテーブルに着く事を勧める。

アーリャ達は、勧められたテーブルをチラッと見た後、莉奈が見た目線の先を追えば、ここから離れた大きな木の下で、緑色の竜が一頭寝そべっているのが見えた。

夢でも見ているのか、口をムニャムニャ動かしている姿が、愛らしい。

アーリャは、食事より見る機会のない竜が気になる。

「竜か……可愛いな」

思わずそう呟くほどに。

「気になるなら見てくればイイんじゃない?」

おかわりのデザートを、取りに行こうとしていたアーシェスが、そう言った。

闇堕ちした竜はともかくとして、竜は野竜も含めむやみやたらと、人を襲う事はない。

それは、自分達が強者であり、人が脆い生き物だと理解しているからだ。(魔王みたいに脆くない人もいるが……)

ただ、基本的に人と関わる事を嫌うので、無視されたりする事はある。

「アーリャ様」

危険ですよと、護衛2人が声を掛けた。

竜に攻撃するつもりがなくとも、動けば誤って尾などが当たる事もある。不用意に近付くのは、よろしくないと諌めれば、アーリャは少し不満顔をしていたが仕方がないと諦めていた。

竜を見ると、子供の様に嬉しくなるのは、国は関係ないらしい。

「魔物肉ですが、召し上がりますか?」

辺りを警戒してるのか、まだ席に着かないアーリャ達に、莉奈は席を勧めた。

「「「魔物」」」

他国にはまだまだ浸透していないのか、魔物肉と訊いた途端に、アーリャ達は渋い表情である。

「美味しいわよ?」

席に戻って来たアーシェスの手元を、アーリャは凝視した。

「それは?」

「あぁ、これ? ミルクアイスよ。氷菓子なんだけど、コレがまた甘くて美味しいのよ」

酸味の効いた苺のソースも堪らないが、濃く煮出した紅茶を、ミルクアイスにかけて食べるアフォガードも、苦味が良いアクセントになって美味しい。

せっかく2種類あるので、アーシェスは両方試す事にしたみたいだ。

「ミルクアイス」

アーリャ達は、初めて見た氷菓子に釘付けである。

「お出ししましょうか?」

「いや、結構」

冷凍庫にまだあるが、取りに行かせるのもあれなので、 魔法鞄(マジックバッグ) から取り出す仕草を見せれば、アーリャが手で制した。

「兵達が過酷な任務で頑張っている中、私が食べる訳にはいかない」

「真面目ねぇ」

莉奈の心の声を代弁したかの様に、アーシェスがため息を吐いていた。

他国の要人が来ているのだから、これは休憩ではなく会談ではなかろうか?

だが、アーリャは根が真面目なのか、見える所で公務に勤む者達がいるのに、食事休憩を摂るつもりはないらしい。

アーリャが断れば、控えていた護衛2人があからさまに「え!?」と言う表情をしていた。

莉奈がアーリャの護衛達でも、そう思う。

焼き肉、焼き鳥系は、匂いから美味しそうで生唾ものだもの。

隣の席からモクモクと上がる煙に堪えながら、着席したアーリャ。

護衛2人は、莉奈が用意した席には着席せず、アーリャから少し離れた場所に立っていた。アーリャに何かあった時に動ける様にだろう。

「なら、せめて飲み物……あ! もしかして毒味が必要なのかな」

食べないにしても、飲み物ぐらい出そうと思った莉奈だが、普通に出すのはないのかなと首を傾げた。

フェリクス王達には、普段から何も考えずに出している。だがそれは、莉奈との信頼関係があっての事。

だが、アーリャ達とは初対面だ。ましてや偉い人なのだから、従来の毒味が必要なのではと思う。

そんな莉奈の独り言を訊いていたエギエディルス皇子が、鼻で笑っていた。

「お前が毒を入れるんならな」

「入れないよ!!」

莉奈は、思わずエギエディルス皇子にツッコミを入れる。

非常識で無礼者の莉奈でも、初めて会った人を毒殺しようだなんて思わないし、自分に危害を向けて来る者がいても、殺害しようと考えた事もなかった。

大体、せっかく作った料理を毒で無駄にするなんて、莉奈的には許せない行為だ。

そんな2人の何気ない会話を訊いたアーリャ達が、目を見張っていた。

目の前でそんな物騒な話をすれば、当然といえば当然である。ただでさえ、身分が高い者はそういった機会が多い。だから、過敏になるのだろう。