作品タイトル不明
636 第二回、焼き肉パーティー開催
「ココで待ってますので、通達よろしくお願いします」
ローレン補佐官が、ジンとレイにそう言えば——
「「……分かりました」」
2人は怪訝そうな表情をしつつ、頷いていた。
彼らの言葉で語るなら、"マジでココで待つのか?"だろう。
夜間に着いた者達が門前払いを食らい、仕方なく朝まで野営する事はあっても、入れるのに入らず食事休憩をする者などいない。
大体、王竜に乗っていたフェリクス王を見た今、彼は身分証がなくとも、どこの誰かなんて証明されたのと同義。
最低限の手続きをして貰う必要はあるが、他の者より遥かに簡単に済む。
なのに何故、外で待つのか、ジンとレイには到底理解が出来なかった。
だが、待つと言うのだから、我々がどうこう言うのは筋違い。
ココで待つと言うフェリクス王達を置いて、ジンとレイは主の待つ屋敷へと、再び魔馬を走らせるのであった。
◇◇◇
「んじゃ、準備するので寛いでお待ち下さい」
ジンとレイが伝達して来る間、しばらくの休憩となった。
何だか、防壁の上からものスゴい視線を感じるが、気にしていたら何も出来ない。
とにかくお腹が空いた莉奈は、防壁の近くに休憩スペースをサクサク用意する事にした。
まずは、 魔法鞄(マジックバッグ) から取り出した簡易トイレや洗面所を、壁際に置く。
次に、少し離れた所に食事をする為のテーブルと、イスを配置する事にする。
テーブルはランデル達と、フェリクス王達の2卓。その間に、食材や取り皿などを置くためのテーブルを別に設置した。
こうすれば、どちら側からでも取りやすいだろうと考えたのだ。とにかく莉奈は自身が腹減りな事もあり、サクサクと手際良く動いていた。
その準備をしている最中、フェリクス王と話をしていた王竜は、ふわりと地を蹴る。こちらに粉塵が飛ばない様に、配慮してくれたのだろう。
ガサツな竜が多い中、王竜は常に人の事を考えてくれている。だからこそ余計に、人に好かれるのかもしれない。
それを見ていた碧空の君とローレン補佐官の竜も、トンと地を蹴り別方向の空に飛んで行く。好奇心と興味本位たっぷりのモルテグル兵の視線が刺さり、居心地が悪いのかもしれない。
ちなみに、ランデルとハービスを乗せてくれた緑色の竜は、何故か飛ばずにノシノシと歩き出していた。
皆と同じく、離れた所から飛び立つのかと思えば、違うみたいだ。
遠くに行く気はないのか、少し離れた場所にある木の下で、丸くなっているのが見える。大欠伸している様子から、そこで昼寝でもする気の様だ。
「あぁ、黒竜がいってしまった」
「寝てる」
「竜はカッコいいなぁ」
見張りという職務はもちろん忘れてはいないが、さすがに竜が目の前に現れれば、すぐに仕事モードに切り替われない。
王竜がいなくなりガッカリしている者。緑色の竜の寝ている姿に癒されている者。竜を見れてほんわかしている者。
モルテグル兵からは、三者三様の声が聞こえていた。
ーーそんな中。
「「あぁ、気持ちイイ〜」」
ランデルとハービスはやっと復活したのか、テーブルの上に置いてあったホカホカのおしぼりに、顔を埋めた。
疲れた身体に、熱々ホカホカのおしぼりは、泣けるくらいに気持ちがイイ。おしぼりが冷えるまで、顔を埋めていたいくらいだ。
「生き返るわぁ」
アーシェスもおしぼりに顔を埋めていた。
こんなちょっとの事なのに、心まで癒される気がする。
おまけに冷たいレモン水も用意されていて、ゆっくり飲めばカラカラに渇いた喉に沁みていた。料理を待つ間の時間ですら、莉奈の細かい気遣いを感じ心が安らぐ。
「地味に、スライムのクッションがクセになるな」
そうボソリと呟いたのは、エギエディルス皇子だ。
竜の背は景色や風を感じて、気分的な乗り心地はイイが、座り心地はあまり良くはない。
長時間乗れば、跨いでいるため股関節はガクガクするし、硬い鞍に座っているので尻が痛くなる。
そのお尻を、小さなスライムのクッションが、ちょうどイイ感じに包んでくれて、クセになりそうだ。
皆が各々寛ぐ中、手早く準備した莉奈は、皆に向かってこう言った。
「さて、第二回焼き肉パーティーの始まりで〜す!!」
「やった!」
1番に反応したのはエギエディルス皇子である。
待ってましたとばかりに、莉奈の元へ小走りにやって来た。
「こちらのテーブルの上に、食材を載せておきましたので、各自好きなだけ取って焼いて食べて下さい」
テーブルに並んだ大皿には、カットされた様々な食材が載っている。
昨夜とは違い、今回は食べ放題の様に、各自好きな肉や魚、野菜を取れる様にしたのだ。
この方が、視覚からも食欲が湧くし、絶対に楽しい。食べ放題に行くと、アレもコレもと目移りするし、色々あってワクワクする。
そんな楽しい感覚を、皆にも味わってもらおうと莉奈は考えたのだ。
「ねぇねぇ、この"箱"は何? リナさん」
テーブルの端に、扉付きの箱を見付けたマリサが、不思議そうに見ていた。