軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

634 予想外な出来事

「とりあえず、魔物の気は逸らせたけど……」

「どう考えても、時間の問題だよね」

莉奈とマリサは、キラーアントの様子を見て唸っていた。

今は、莉奈の落とした餌に群がっているけど、それがなくなればどうなるのか分からない。

むしろ、食べ損なったキラーアントが、他にないのかと餌を探し回る気がする。

「「え?」」

そんな事を考えていた莉奈とマリサだったが、それは杞憂に終わる。

何故なら、キラーアントが奇妙な行動をしているのに気付いたからだ。

なんと餌にありつけなかったキラーアントが、フェリクス王達が倒した仲間を、食べ始めたではないか。

そう……いわゆる共喰いである。

しかも、何の関係もない仲間まで攻撃をされていて、いつの間にか仲間割れ状態になっていた。

「うっわぁ、共喰いなんてするんだ」

背後でマリサがドン引きしていた。

冒険者を生業としてきたけれど、共喰いを見たのは初めてだったのだ。何だか、世知辛さを感じるマリサである。

「個体数が減るから、まぁこれはコレでイイのかな?」

まさかこんな風になるとは思わなかったけれど、キラーアントの気は完全に逸れたのだから、莉奈的には結果オーライだ。

先に走るジンとレイも、チラチラこちらを見る様子はあるが、魔物が追って来ないと分かったらしく、目的地モルテグルまでひたすらに走っていた。

◇◇◇

ウクスナ公国の首都モルテグルは、砂漠に少し草木が生えた程度の場所にある。

町の周りは、一応土壁で出来た高い防壁で囲ってあるが、この防壁をものともしない魔物がいるのだから安心出来ない。

そこにいたキラーアントは、仲間の背にズカズカと乗っかり、防壁を乗り越えて来るし、マルガイラみたいな飛行系の魔物には、そもそも壁など無意味だ。

人と争う前に、魔物にやられそうな町である。

「やっぱり、移動は竜よ竜に限るわ!」

竜から降りたアーシェスが、やっと着いたと安堵のため息を吐いている。

時間の節約にはなるし、魔物の心配はないしで、移動は竜一択だと豪語していた。

確かにそうだろう。なにせ、徒歩で数時間掛かるところを、十数分だ。なら、数日掛かるところなら、数時間で着く。

オマケに、空からの絶景も拝めるし、超楽しい。

しかし、竜を使えるのは選ばれた人のみ。そうそう乗れないのだから、仕方がない。

でも、背中に乗せたくない竜も、籠みたいな物に人を入れて運ぶとなれば、快諾する者もいるのでは? と莉奈は思った。

対価を貰えれば、考えてくれそうな竜もいそうな気もする。

ただ、安全性の問題に懸念ありだ。

「「うっぷ」」

チラッとランデルとハービスを見たら、少し離れた場所で倒れるかの様に蹲っていた。

2人を乗せていた竜は、ずっとご機嫌なまま暴走運転だったから、酔ったのかもしれない。さっきからずっと、ウプウプと嘔吐く声が聞こえていた。

タクシーはありだが、あんな竜に当たったら最悪過ぎる。人も竜も運転の上手い下手はあるのだなと、思う。

そんな2人に、マリサは隣で憐憫の目を向けていた。

「竜だ」

防壁の上で警護している警護兵や、門扉にいた兵達が竜を見て、口々にそう発したが、後はそれっきりでどよめきすら起きていなかった。

人は驚きが勝ると、声すら出ない様である。

いや……王竜の神々しさとフェリクス王の威圧感に、畏れをなしたのかもしれない。

その圧倒的な存在感には国境はなく、誰もが思わずひれ伏してしまいたくなる程だ。

「なぁ、入管手続きってやる意味あるのか?」

エギエディルス皇子が、頭の後ろに両手をおいて、兄王に訊いていた。

唯一無二の王竜がいて、それに乗っていた者がいる。

王竜に乗れるのはフェリクス王か、その兄弟しかいないのだから、もはや手続きなどしなくとも、誰かなんて丸分かりだ。

もう顔パスでイイのでは? とエギエディルス皇子が辺りを見ていた。

莉奈も一瞬そう思ったが、一応形式上はやらないといけない気がする。

少し遅れて来たジンとレイは、魔馬から降りても、ずっと竜をチラチラ見ていて心ここに在らずだ。

見上げて見ていた姿より、目の前で見る竜は大迫力で、圧倒されているに違いない。