軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

632 初めての竜に、興奮の仕方が違う

「ひゃ、ふわ、んりゃ!」

上昇するにつれて、莉奈の後ろに乗っているマリサから、変な声が上がっていた。

碧空の君に着けた鞍は2人乗り用の鞍なので、後ろにも掴む所はあるのだが、マリサは莉奈のお腹にしがみ付いている。

莉奈の背中に顔を埋め、フルフルと感動に震えていた。

「大丈夫ですか?」

「竜に、竜に乗れる日が来るなんて……思わなかった」

いつも通りに冒険の旅に出たら、見た事のない料理を食べられた。

料理(エサ) に釣られて莉奈に付いて行けば、今度は生涯乗る事はないと思っていた竜に、奇跡的に乗れたのだ。

感動するなという方が、元より無理な話である。

浮上する時に感じる不思議な浮遊感、地上とは違う風、竜の息遣いまで聞こえてきそうな感覚、そのすべてが新鮮で心が震えた。

「「ギャーーッ!!」」

その感動しているマリサとはうって変わり、緑色の竜に乗ったランデルとハービスの叫び声が、背後から聞こえる。

何事かと莉奈が後ろをチラッと見れば、緑の竜がちょうどグルグル回転しているのが見えた。

歯に挟まっていたモノが取れてご機嫌なのか、急な下降や旋回だけでなく、クルクル回転まで加えた飛行をしている。

だが、竜に着いているのは簡素な鞍オンリー。

遊園地にあるジェットコースターみたいに、しっかりした安全ベルトやバーなどで、身体が鞍に固定されている訳ではない。その鞍から伸びた簡易的なベルト一本だけだ。

なので、2人は振り落とされない様に、必死の形相で鞍にしがみついている。あれでは、怖さが勝り楽しくないだろう。

「「やめ、やめてぇぇーーっ!!」」

「やっほい!!」

ランデル達が絶叫しても緑の竜はお構いなし。それどころか、さらに加速していた。

「うっわ」

見ていた莉奈も、思わず声が出る。

王竜に初めて乗せてもらった時にも、多少の下降や旋回をしてくれたが、ものスゴく楽しかった。

だが、それはあくまでも莉奈を楽しませるために、竜側の配慮があってこそだと分かったのである。

あそこまでエゲツないと、微塵も楽しくない。

「リナさんの竜で良かった」

その無茶苦茶な飛行をする竜を見たマリサは、心の底からそう思った。

もしかしたら、自分があんな風にされていたかもしれないのだ。そう考えたら、恐ろしくて震える。

「「お願いぃぃ〜っ、もう勘弁してぇぇーーっ!!」」

ランデルとハービスの絶叫が空に響く中、あっという間に山間部に辿り着いた。

1時間半くらい掛かると言われた場所に、ものの10分。

アーシェスが竜で行ってと言った意味も分かる。徒歩と竜では雲泥の差だ。改めて、竜の飛行速度の素晴らしさを知る莉奈だった。

「あ」

下を見れば、先程去って行ったジンとレイが、キラーアントの隙間を魔馬で一心不乱に駆け抜けていた。あれだけの数だと、さすがに戦う選択肢はないのだろう。

エギエディルス皇子の小竜はどこだろうかと、莉奈がキョロキョロしていればーー

「サボッてやがる」

フェリクス王の声が聞こえた。

チビことエギエディルス皇子の小竜は、大きなウルッシュポッドの上で欠伸をしていた。

木の下には、動かなくなったキラーアントが数匹見える。

少しだけ倒したところで、飽きてしまったところを見ると、あの魔物には本当に興味がないみたいだった。

「ちょっと〜?」

それに気付いたアーシェスが、悲しい声を上げていたが、小竜には何も響いていない。むしろ、眠そうに口をムニャムニャしている。

「フェル兄、マズくね?」

エギエディルス皇子はそんな小竜に呆れつつ、周りの状況を確認していて気付く。

魔馬で山間を駆け抜けたジンとレイの後ろには、キラーアントの群れがゾロゾロと追って来ていたのだ。

「まぁ、エサが目の前を通れば、普通にあぁなるな」

まさに鴨ネギ状態だ。

キラーアントにしたら、襲わない理由は何もない。

「ちょ、ちょっと!」

「あれでは、町へ誘導しているのと一緒ですね」

焦るアーシェスに、冷静なローレン。

魔馬に乗ったジンとレイのおかげで、キラーアントの大群を引き連れる形になってしまっている。

このまま何もしないで進めば、キラーアントを町へ連れて帰る事になるだろう。

「あ、モルテグルが見える」

マリサがそう言って差したその先には、四方を土壁に囲まれた町が小さく見えた。

徒歩なら約2時間くらいかもしれないが、魔馬と似た様な速さのキラーアントはどうなのだろう?

町まで距離がありそうだが、山間を越えた先からは、生えている草木も段々と減り、何だか荒れ地みたいだ。そのせいか、町までかなり見通しがイイ。

……という事は、人からも魔物からも丸見えだ。

ジンとレイは二手に分かれて、キラーアントを町へ行かない様に誘導している。しかし、空からだからハッキリ分かるが、どうにも上手くいっていない。

「フェリクスーーッ!!」

どうにかしてと、アーシェスが嘆きの声を上げていた。