作品タイトル不明
612 面倒事の予感しかない
王宮にいる皆へのお土産が、誰かさんのせいで1羽残らず走り去ってしまった。
残念ながらしばらく、からあげの食べ比べはお預けである。
ガッカリしつつ辺りを見れば、あちらこちらにカラフルな羽根が落ちているのに気付いた。
今、走り去った……というか逃げたウルッシュバードの羽根だろう。遠くで見ていたよりもいろんな色があり、かなりカラフルだ。
「拾うのかよ」
その落ちていた羽根を、莉奈はせっせと拾い集めていた。
肉にしか興味がないと思っていたエギエディルス皇子は、羽根さえも拾う莉奈にため息を吐く。
「え、だって……カラフルだから、碧ちゃんの部屋に飾ったら可愛いかなって」
基本的に、竜はキラキラな物や派手な色が好きだ。
どこにどう飾るか、まだ何も考えていないが、人間がたまに部屋の模様替えをする様に、竜で 番(つがい) の碧空の君の部屋も、掃除のついでに模様替えでもしてあげようかなと思ったのだ。
「……なるほど」
エギエディルス皇子の小竜は、まだ自分の部屋を決めていない。
しかし、お土産にあげたら喜ぶかもしれないと思ったのか、エギエディルス皇子も拾い始めていた。
「お土産とはイイですね」
ローレン補佐官も番がいる。
自分の番が喜ぶかはともかく、拾って帰っても損はないなと羽根を探す。
「意外に売れるのよね」
それを見たアーシェスは、師匠バーツにお土産……ではなく、加工すれば金になるなと、莉奈達に右に倣えである。
ウルッシュバードの羽根は、武器防具には不向きではあるが、赤黄青などカラフルなため、扇子や帽子など様々な装飾品に需要がある。
師匠バーツに必要なくとも、自分の装飾品に使うのもアリだなと、思ったのだ。
「俺達もとりあえず拾っとくか」
とランデルも羽根を拾えば、マリサやハービスも顔を見合わせ、拾う事にした。
大金にはならないが、まぁまぁの小遣い稼ぎにはなる。なんなら、欲しがっている莉奈にあげてもイイなと、ランデルは思ったのだ。
「……」
まったく興味のないフェリクス王は、そんな皆を見てため息を吐く。
フェリクス王の竜は、他の竜と違いキラキラした物に興味はない。たとえ、王竜に興味があったとしても、フェリクス王には関係ないのだ。
欲しければ自分で拾って来い……である。
なので、そんな羽根に用のないフェリクス王は、文句を言うのすら諦め、その辺にあった岩に腰を下ろす事にした。
ただ歩いているだけでも、存外疲れるものである。無駄な時間ではあるが、気分転換も必要だろう。
楽しそうに羽根を拾う莉奈と末弟を見て、フェリクス王はそう思う事にした。
しかし、同時に思う事がある。
莉奈が番の部屋を模様替えしたとして、他の竜達が黙っているだろうか? いや、絶対無理だろう。
まず、碧空の君と同じ宿舎の真珠姫が、黙っている訳がない。
真珠姫が騒げば、後は言わずもがなである。
帰城したら騒がしくなりそうだと、フェリクス王は広がる空を見上げるのであった。