作品タイトル不明
600 しばしの休憩
だけど、暇潰しに魔物討伐って発想がスゴ過ぎだよね?
さすが、魔王様。やる事が凡人とかけ離れている。
「ちなみにですが、休憩ってどうなります?」
アーシェスとランデル達による解体と、妙な攻防は続くが、休憩返上のこの作業である。
その返上された休憩はどうなるのか、莉奈は一応知りたかった。
自分はともかくとして、エギエディルス皇子は少し休ませたい。
「新たに1時間」
「了解って……あの、すみません。それ適当に置かないでもらえます?」
フェリクス王はそう答えつつ、先程一旦片付けた簡易トイレやテーブルなど、 魔法鞄(マジックバッグ) からポイポイと出し始めていた。
テーブルやイスは、今はもう使わないかもしれないけど、適当にまとめて置くのはどうかと思う。
トイレも一応、莉奈がした様にパーテーションを立ててくれてはいるが、なんかしっくりこない。
莉奈に言わせれば、「どうせ出すのなら元の場所に出してくれ」である。
「あ゛?」
「トイレは平らな場所がイイですよ? ここは石が多いから傾いちゃいますし」
ちょっとトイレの壁に手を触れれば、カタカタと揺れた。
フェリクス王は、とりあえず置いとけばイイだろうと、細やかな配慮はない。
トイレなんかまさにそうで、良く見るとちょっと斜めに傾いている。大小の石が転がっている場所なので、イマイチ安定感がない。これでは、カタカタして落ち着かず、用も足し辛い気がする。
「用を足している間にトイレが倒れちゃいますよ?」
そんな事態は最悪である。
フェリクスは苦情を言う莉奈を、一瞬睨んだもののーー
「大惨事だな」
と近くにいたエギエディルス皇子に言われ、押し黙っていた。
エギエディルス皇子は、ただの感想を言っただけなのだが、フェリクス王は末弟にもそう言われ、何も言えなくなったらしい。
結果的に、莉奈の言葉を後押ししたエギエディルス皇子は、テーブルの横に転がっていた王子スライムを、いそいそと良き場所に運ぶのであった。
◇◇◇
ウルッシュポッドの木が、遠くに生えているのがここから見える。
さすがに、あそこにあるウルッシュポッドの実まで、(今は)採ろうとしないよなと莉奈は思いつつ、再び王妃スライムの上にぽふんと乗った。
さっきまであれ程生っていた実がなくなるとは、コレを好んで食べるウルッシュバードも、来たら驚くに違いない。
「ウルッシュバードは美味しいのかな〜?」
見た事はないが、莉奈の勘が美味しいと言っている。
現時点で、ロックバードに勝る鶏肉はないが、ひょっとしたらひょっとするかもと考え、ワクワクした。
「からあげの食べ比べがしたいな」
普通の鶏肉、ロックバード、ウルッシュバード……食べ比べるなら、あと2種類くらい欲しい。莉奈は、まだ見ぬ鳥系の魔物に想いを馳せる。
「魔石はなかったわね」
「角は10。1人2本として余るな」
5頭のキラーホーンエイプから獲れた角は、計10本。アーシェス、ランデル、ハービス、マリサの4人で分けるとして、2本余る。
「リナさ〜ん、角いるか?」
ローレン補佐官をチラッと見たら、いらないと首を横に振られたので、ランデルは莉奈に声を掛けた。
莉奈がその角を見れば、根元に血が少し付いていて何だか生々しい。
「いりませ〜ん」
竜の鱗は綺麗だから飾りたいけど、キラーホーンエイプの角は壁に飾りたいと思わなかった。
欲しい人が貰えばイイと莉奈が断れば、アーシェスとランデル達が睨み合いを始めていた。
ランデルパーティとアーシェスで分けようと言うアーシェス。パーティを一括りにするなと言うランデル達。何だかモメそうなので、ジャンケンを教えれば、それで決める様だった。
空に浮かぶ雲を見たり、隣でスヤスヤ眠るエギエディルス皇子を見たりして、莉奈は休憩を楽しんでいた。
魔物の蔓延る場所では、莉奈達は捕食される側。大抵の場合、魔物に襲われる恐怖や緊張で、こんなにのんびりと過ごす時間などない。
だけど、ここには魔物より遥かに強い魔王様がいる。なので、莉奈には恐怖など微塵もなかった。
普通ではあり得ない場所での、こののんびりとした贅沢な時間。
莉奈は魔王フェリクスに感謝しつつ、ウトウトと目を閉じるのであった。