軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

598 時に、莉奈よりやらかすのが……

……一同唖然である。

地面には、足の踏み場もないくらいに、大量の実や葉が落ちている。

ウルッシュポッドにしても寝耳に水で、ビックリしているに違いない。見上げれば、あれだけ実っていたウルッシュポッドの木には、実が一つもなかった。

莉奈を含め、皆、ただただ唖然呆然だった。

そんな沈黙を破ったのは、眠りかけていたエギエディルス皇子である。

ウトウトしていたら、突然の木の実襲来。起きていた莉奈達ですら、何が起きたのか分からないのだから、寝ていたエギエディルス皇子には、さらに訳が分からなかっただろう。

「リナーーッ!! お前は何してんだよ!?」

食後のまったりした時間を邪魔されたエギエディルス皇子は、激オコである。

しかし、どこかで何かある度に、反射的に 莉奈(わたし) がやったと思うのはどうかと思う。もう少し、状況を考えて欲しい。

「いやいやいや、私じゃないってば」

「はぁ? お前以外に誰がこんな事するんだよ!?」

冤罪だ。失礼にも程がある。

莉奈が否定しているのに、エギエディルス皇子は一切信じてくれなかった。

「エドのーー」

お兄ちゃんだよと、言おうとした莉奈の言葉をフェリクス王が切った。

「エディ、昼寝は中止だ」と。

「は?」

寝ろと言ったり中止と言ったり、兄王の言動に眉根を寄せた。

今起きた事も、もしかして魔物の襲撃か? と辺りをキョロキョロ。だが、そんなエギエディルス皇子の襟首をムンズと、フェリクス王は掴み強引に立ち上がらせた。

「あ゛?」

もはや今何が起きて、何をされているのかすら、理解不能なエギエディルス皇子。

「ちょっとフェリクス!?」

何なのだと、アーシェスが木の実を踏みながら近付いて来た。

硬い木の実は、アーシェスに踏まれようとも割れる気配がないのだから、相当な硬さだ。

「お前ら、木の幹に集まれ」

「「「え?」」」

突然の指令に莉奈達は眉根を寄せ、ランデル達はその"お前ら"に自分も入っているのかと、訊ねる様にフェリクス王を見た。

うん、分からない……が、たぶん入っているのだろうと空気を読む。

「イイから、行け」

有無を言わさないその言葉に、莉奈達は渋々首を傾げながら、木の中心である幹の周りに移動する。

莉奈は向かう途中で、さっき出した簡易トイレやテーブルなどが、片付けられている事に気付いた。おそらく、莉奈がエギエディルス皇子に言い掛かりを付けられている間に、フェリクス王が片付けたのだろう。

一体何が始まるのだとザワつく中、フェリクス王だけが何故か、皆とは反対側に移動していた。

「あのぉ?」

一箇所に集められ、フェリクス王の鋭い目で見られると、ある訳がないのだが、このままウルッシュポッドと一緒に斬られるのでは? と錯覚してしまう。

さすがにそれはないだろうが、何をするのか気になる莉奈は、皆の心の内を代弁するかの様に、フェリクス王に挙手して訊ねた……のだが、安定のスルー。

挙句、フェリクス王は右手を軽く挙げる仕草を見せーー

ーーパチン!

指を弾けば……

「ンギャーーッ!?」

「「うわぁぁァーーッ!?」」

阿鼻叫喚カムバックである。

先程は、木の実の雨による叫びだったが、今度は地面が唐突に動いた事による、恐怖からの叫び声だった。

一体何が起きたのか。

それは、ウルッシュポッドの木を中心に、周りの地面が一気に盛り上がったのだ。

しかも、ただ盛り上がっただけではなく、木を中心としてすり鉢状に盛り上がったので、落ちていたウルッシュポッドの実がゴロゴロ……いや、ザザーッと莉奈達の足元を埋め尽くしていた。

「え、埋まったんですけど?」

腰まで実で埋まってしまった莉奈は、圧迫感もあって微塵も動かない。

「「「一体、ナニゴト?」」」

巻き添えを喰らったランデル達は、莉奈よりも唖然呆然である。

この中で、一番背の低いエギエディルス皇子は、胸まで埋まってしまい絶句だ。だけど、しばらくして、モゾモゾと両手を出そうとしていた。

「フェル兄ーーっ!?」

一体何なのだと、壁の外で姿の見えない兄王に叫ぶ様に問う。

莉奈の仕業だと思っていたエギエディルス皇子は、頭の中が疑問符だらけだった。

しかし、そんな可愛い末弟の問いに答えはなく、再び指令が下るだけ。

「その実を回収しろ」

「「「……え?」」」

「回収しろ」

フェリクス王の姿は見えないが、圧だけは地の壁越しに感じる。

「「「回収……?」」」

莉奈達は互いに顔を見合わせた。

木に生っていないから、収穫ではなく回収であながち間違いないのだろうが、莉奈達の周りにはこれでもかというくらい、隙間なく積まれている。

言うなれば、学校にあるプール一面に、パンパンとウルッシュポッドの実が入っているのではと、いうくらいに量があるのだ。

回収と言われても、その量に途方に暮れ、頬すら引き攣らない。

「回収」

動く気配のない莉奈達に、フェリクス王の声が再び掛かった。

マジですか。

この量を回収かと、莉奈の口から今度は疑問ではなく、ボヤキが漏れた。

「あぁ、なるほど。回収しやすくするために地を上げたんですね」

ローレン補佐官は、フェリクス王の魔法の使い方に、何故か感心していた。

あちらこちらと散らばった実を一ヶ所に集めた方が、回収しやすい。だから、魔法ですり鉢状に盛り上がらせたのかと、納得したのだ。

「あのねぇ、そこは感心じゃなくて怒りなさいよ」

アーシェスから長い長いため息が漏れた。

こんな事に魔法を使うフェリクス王にも、それを怒りもせず、感心しているローレン補佐官にも呆れしかない。