作品タイトル不明
594 大きな木の下で
皆の熱視線を浴びつつ、準備する事、約10分。
「昼食の準備が出来ましたので、簡単にご説明致しま〜す!!」
莉奈がそう声を掛ければ、エギエディルス皇子を筆頭に、わらわらと莉奈の前に集まって来た。
「焼き肉か?」
真っ先にそう訊いたのは、エギエディルス皇子だ。
莉奈の用意した物の中に、おひとり様用焼き台を見つけたからだろう。
「違うよ? アレはミートパティやカツを温め直す焼き台」
「パティ?」
「まぁ、ザックリ説明するから待ってよ」
熱々のまま持って来たが、テーブルに置きっぱなしでは冷めてしまうなと、温め直し用に置いたのだ。
それも含めて莉奈は説明しようとしたのだけど、色々気になるエギエディルス皇子は、ついアレはコレはと訊きたくなったらしい。
「まずは、手で掴んで食べるのでおしぼりをどうぞ」
説明している間は手持ち無沙汰かなと思い、莉奈はホカホカのおしぼりを皆に配る。
「おしぼり? え、やばっ! この蒸しタオル、超気持ちイイんだけど!?」
「あぁァァ〜ッ! 生き返る」
「顔拭くとなんか泣ける」
おしぼり初体験のランデル達は、手を拭いたり顔を拭いたりして堪能していた。
やっぱり、疲れた身体に蒸しタオルって、最高だよね。
「昼食はパンなんですけど、そのパンに好きな具材やソースを挟んで、"サンドウィッチ"にしたり"ハンバーガー"にしたり楽しんで下さい」
「チキンカツサンドみたいなヤツか!」
「うん、そうだね。あ、エド、小さめのパンも用意してあるから、それで作るとイイよ? その方が色々楽しめるし」
「分かった!!」
パンはコッペパン風やバゲット、丸い形のバンズ風を用意してある。
挟む具材は様々だ。揚げ物系は、からあげをはじめ鶏牛豚だけでなく、魚や海老のカツも作って来た。野菜もトマトやスライス玉ねぎ、後は葉野菜。
それに付けるマヨネーズ、ケチャップ、ソースや醤油、ドレッシングなど用意して来た。
組み合わせは人それぞれ自由だから、バリエーションはかなり豊富だろう。
「からあげをパンに挟むのもありか、いや、海老もイイな」
チキンカツサンドを食べた事のあるエギエディルス皇子はもちろん、フェリクス王も莉奈のその説明でなんとなく分かったみたいだった。
初見のランデル達はどうしたものかと、既に楽しそうに作り始めているエギエディルス皇子の様子を伺っている。
「エド、オススメはそこにある"リヴァマヨ"だよ?」
「"リヴァマヨ"? なんだリヴァマヨって……このマヨネーズに和えてある……」
気持ち悪いのか? と言う言葉を、エギエディルス皇子は飲み込んだ。
薄い黄色のマヨネーズに、チラチラ見える黒い粒は黒胡椒だろう。
だが、それより気になるのは、和えてある具材だ。どこかで見た覚えのある色をしたソレは、鶏のササミをほぐした様なモノに見える。
しかし、その色は絶対鶏肉ではない。では何か? と訊ねるまでもなく、エギエディルス皇子はピンと来たのか、すぐに眉間に皺を寄せた。
「"リヴァイアサン"だな」
マヨネーズから、薄い青色した何かがチラチラ見えるのは、リヴァイアサンだと気付いた様だ。
まぁ、薄い青色の身をした肉はまだない。となると魚となる訳で……後は"リヴァマヨ"のマヨがマヨネーズだと推測すれば、言わずもがなだったのだろう。
「美味しいよ?」
ツナマヨを作りたくてもマグロがない。代用品のカツオもない。
で、莉奈が思い付いたのが神龍リヴァイアサンである。
カルパッチョにしたものの、まだまだ豊富にあるので、マグロの代わりに油で煮てほぐした後、マヨネーズと和えてみた。
水煮でも作ってみたが、油煮の方がコクが出て個人的には好き。
「ちょっとだけ味見してみなよ」
一度見てはいるものの、まだちょっと色が気になるのか、エギエディルス皇子が渋い顔をしている。
そんなエギエディルス皇子に、莉奈は小さなバゲットにリヴァマヨをのせ差し出した。
「マヨネーズが大丈夫なんだから、コレも絶対好きな味だよ?」
マヨネーズが嫌いなら仕方がないけど、エギエディルス皇子はマヨネーズは大丈夫だったから、絶対好みに刺さる一品だと思う。
莉奈に差し出され、エギエディルス皇子は口を尖らせ、仕方がないから食ってやるとバゲットを受け取り、恐る恐る口にする。
パリッとしたバゲットに、知っているマヨネーズの口触り。そして、初リヴァイアサンの風味と舌触り。兄達が言っていた様に、魚特有の生臭さは一切なく、サッパリしているのにコクがある味だった。
「ウマい」
まさか、あのリヴァイアサンがマヨネーズと混ざって、こんなに美味しくなるなんて想像しなかった。
エギエディルス皇子は、今まで何故、色や外見にこだわって食べなかったのか後悔するぐらいに、衝撃的な味だった。
「でしょう? アボカドとスライス玉ねぎと合わせると、さらに美味しいよ?」
「マジか!!」
「そこにあるフライもリヴァイアサンだから、タルタルソースと合わせるとーー」
「ウマいんだな!?」
遅ればせながら、リヴァイアサンの美味しさに開眼したエギエディルス皇子は、莉奈に勧められるままにサンドウィッチを作っていた。
フェリクス王はフェリクス王で、莉奈に説明されるまでもなく、パンを片手にミートパティを焼き台で温め直しているから、笑ってしまう。
しかも、ミートパティが丸いから、それに合わせてちゃんと丸いパンを選んでいる。
「チーズものせて焼くと美味しいですよ?」
「なるほど」
オススメの食べ方を教えれば、フェリクス王は莉奈に言われた通りに、ミートパティにチーズをのせていた。
とりあえず、チーズバーガーを作る気の様だ。
「パティは二枚重ねてのっけると、肉肉しくなりますし、ソースはあの赤いミートソースがオススメです」
莉奈がそう勧めれば、フェリクス王は焼き台に、もう一枚ミートパティをのせていた。
ダブルチーズバーガーに変更したみたいである。