軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

577 (莉奈+ご飯)×食べた人数=仲間

———スヤすやスヤ。

莉奈との無駄な攻防に、精も根も尽きたエギエディルス皇子は、結果的に王子スライムの上でスヤスヤと可愛らしい寝息を立てている。

やはり、王子をダメにするみたいだ。

「エド、かわゆす」

莉奈はその寝顔にほっこりしつつ、風邪をひかない様にと、 魔法鞄(マジックバッグ) から毛布を取り出し、エギエディルス皇子の上に掛けた。

「かわゆい」

その可愛さに莉奈は、何度も心の声が漏れる。

肌艶のいい頬をツンツンしたい気持ちを抑え、莉奈はエギエディルス皇子の寝顔を覗いていた。

生意気盛りのエギエディルス皇子のあどけない寝顔は、もはやギャップ萌えでしかない。莉奈の疲れた身体を癒す、心のオアシスである。

「リナも寝たら?」

働き詰めだった莉奈に、アーシェスが声を掛けた。

歩きに歩いた後も、足湯やトイレなどの設置。ご飯の準備から片付けまで、アーシェス達より遥かに働いている。

魔物への警戒は自分達がすればイイ。莉奈は明日のために、ゆっくり身体を休めなと勧めてくれた。

「イイのかな?」

皆は交代で休むらしいが、その頭数に自分もいれば、皆の休める時間が増えるのにと思ったのだ。

「誰も文句なんか言わねぇだろ」

これだけ至れり尽くせり状態だった皆に、ノーと言える訳がない。

フェリクス王がそう言えば、皆の目はどうぞどうぞと言っていた。

「んじゃ、お言葉に甘えて」

莉奈はエギエディルス皇子の隣に王妃スライムを移動させると、履いていた靴を脱いでそこへ思いっきりダイブした。

まるで綿菓子の上にでも乗ったような、このふわふわした感触が楽しい。

スライムの上にいるのに、空を飛んでいるくらいに軽いのだ。

左隣にいるエギエディルス皇子の可愛い寝顔を見ていると、何だかホッコリして眠くなってくる。莉奈はしばらくエギエディルス皇子を眺めていたが、首が疲れて反対側に顔を向ければーー

「う゛!」

王スライムに座るフェリクス王と、バチリと目が合った。

エギエディルス皇子に夢中で気付かなかったが、莉奈の右隣はフェリクス王がいたのだ。

知っていて目が合っても恥ずかしいのに、気を抜いているふとした瞬間なら尚更だ。莉奈の頬は火でも付いたかのように、ポッと赤く染まった。

「眠れねぇなら手ぇ握ってやろうか?」

「いらん!」

フェリクス王に揶揄われた莉奈は、掛けていた毛布を思いっきりバサリと頭から被った。

普通に話しているならともかく、横になった状態で目が合うと何故こんなにも胸がドキドキするのだろう。

寝ようとしていた無防備な状態だったからかもしれない。まさに不意打ちだ。

莉奈の隣で微かに笑う声が聞こえるが、莉奈は今それどころじゃなかった。まだ見られていると思うと、動悸が止まらない。

反対側に寝れば良かったとか、まだ毛布越しにフェリクス王の視線を感じる気がするとか、色々考えていたら寝れない寝れない寝れないーーっ!!

……寝落ちした。

「静かよねぇ」

元気の塊である莉奈が寝れば、途端に森は静寂に包まれていた。

静か過ぎても耳が痛い気がするから不思議だ。

ただただアーシェスの呟きが響く。

「兄さん達も休んでいいですよ」

「そうそう。見張りは俺達がやるんで」

莉奈が足湯の時に出した長椅子で、寛いでいたランデル達が声を掛けた。

美味しい食事とまったりした時間に、いつも以上に心と身体が休めている。なら、見張りくらいはこちらが交代でやろうと相談したのだ。

「やっば! トイレがすっごい快適なんだけど!!」

そこへ用を足しに行っていたマリサが、足取り軽やかに戻って来た。

男ならその辺で用を足せても、女となればそう簡単にはいかない。それが、トイレという形で出来るだけでなく、田舎町でありがちのボットンですらないなんて爽快だった。

「ちょっと待って、マック! そこは相談とかじゃないの?」

ならば少し仮眠を取ろうと、ローレンが一つだけ転がっていた王女スライムの元へ行けば、それを見たアーシェスから声が掛かった。

「え? アーシェスはスライム嫌いでしょう?」

「誰が嫌いだなんて言ったのよ」

「だって、黒糖タピオカーー」

「黒スライムを黒糖タピオカとか言うのやめてもらえる!?」

昼前に食べた黒糖タピオカ風ミルクティーの話を出したローレン。

確かに食べなかった……が、口に入れるのと乗るのはまったく違う。好きとか嫌いとかいう話ではない。

「なら、交代という事で……おやすみなさい」

「話し合いはないのね」

一応そこは誰が先かとか話すところでは? とアーシェスは思ったが、交代制ならイイかと諦めた。

ここで変に騒いで寝ているエギエディルス皇子と莉奈を起こせば、フェリクス王に永遠の眠りに誘われるだけだ。そんなハイリスクを背負ってまで、やる事ではないだろう。

「ランデル達は、この聖木の事知ってたの?」

話し相手がいなければ寝てしまいそうだ。

アーシェスはそう思い、夕食時のまま置いてあるテーブルセットに腰を掛けた。

莉奈の気遣いでお茶があるし、生キャラメルやベッコウ飴もある。口が甘さ以外を求めたらと、糠漬けやピクルスまであるから飽きがこない。

まったりと寛ぐには快適空間だ。

「噂程度にはな」

ベッコウ飴をコロコロと舐めながら、ランデルが仄かに光る聖木をチラッと見た。

確証はなかったが、割と信頼出来る冒険者からの話を耳にしたそうだった。

「あぁぁ〜っ、生キャラメルが美味しい」

「ベッコウ飴もイイよな。明日リナさんに売って貰おうかな」

「それイイ!!」

その向かいで遠慮しながら食べていたマリサやハービスは、減っていく生キャラメルとベッコウ飴を見てそんな相談をしていた。

いくら遠慮していようが誰かが手にすれば、なくなる前にと自分も負けじと手が伸びる。それを互いにやっていれば、普通に数は減る。

「そうだ!! ウクスナに行くんだよな。なら目的地は一緒だし、リナさんの護衛として付いて行こう」

「うんうん。危ないからね!!」

勝手な事まで言い出したハービスとマリサに、アーシェスは呆れていた。

そもそも彼らの目的は魔物討伐で、ウクスナ公国ではなかったハズ。例え目的地は同じでも、別行動で全然イイのだ。

「それってただ、ご飯を食べたいだけじゃないの?」

「え? まっさか〜護衛だよ。護衛」

「そうだよ。リナさんに何かあったら大変だもんね!」

「そうそう。ただ、その道中にちょっと昼休憩があるかもしれない」

「んで、たまたまリナさん達のご相伴に預かれるかもしれない」

「「しれないだけ」」

「……」

どう考えても飯目当てではないか。

すっかり莉奈のご飯に釣られたランデル達に、アーシェスは思わず半目になっていた。

ランデル達の実力がなければ、フェリクス王も足手纏いだと拒否するだろうが、実力はある。

どうするのかなとアーシェスはフェリクス王をチラッと見たが、目を瞑っているだけでアクションはなかった。

寝ている様な気配は感じないから、黙認するつもりなのだろう。

なら、アーシェスがどうこう言う権利はない。まぁ、邪魔と判断したらフェリクス王の事だから捨て置くだろうと、アーシェスは残っていた生キャラメルに手を伸ばすのであった。