軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

573 焼き肉パーティ始まるよーーっ!!

「よろしければ、お試しでサ……いかがですか?」

ついサイコロステーキなんて言いそうだったけど"サイコロ"って日本語だ。

腹の虫を聞いた莉奈はランデル達の前に、ひと口サイズにカットしてあるステーキ肉を、少量取り出した。

ブラッドバッファローだか、ブラックブルだかの牛系の魔物肉だ。

脂身が少ない赤身が強いモモ肉をチョイスしたから、サーロインとは違って肉肉しくて美味しいんだよね。

「「「イイの(か)?」」」

言葉とは裏腹に、ランデル達の瞳はどこか嬉しそうだ。

さっきから、使われていない焼き台が、目の前で寂しくしていた。せっかく用意したのだから、使ってもらえれば莉奈も嬉しい。

「魔物肉でよければ」

今でこそ、ロックバードは浸透しているけど、他の魔物はまだまだである。しかも、それだってヴァルタール皇国だけ。他国では、まだ全然流行ってない。

なので一応断りを入れて、自らの意思で食べてもらわないと、駄目かなと莉奈は思った。(アンナ達には、シレッと黒スライムを食べさせたけど)

「「「……」」」

いざ目の前に魔物肉を出されると、何となく抵抗感がある。

ランデル達は、互いに顔を見合わせていた。

「食べないなら貰ってあげるわよ」

アーシェスがランデルの皿に手を出せば、ランデルはその手を叩いて、焼き台にひと口ステーキを載せた。

躊躇っていたとはいえ、人に取られそうになると、素直に渡す気になれないのは何故だろう。

もう取られるくらいならと、勢いで焼き台に載せてしまった。しかし、この肉の焼ける音と匂いを前に、つい顔がニヨつく。

「牛タン、うまっ!! 何だコレ」

アーシェスから奪った牛タンを焼いていたエギエディルス皇子。

莉奈に言われた食べ方で口に放り込めば、コリッとした不思議な食感と、ジューシーな味わいに驚いていた。

コリコリするが、筋張って固いのとは違う。初めての歯触りだが、何だかクセになりそうだ。

「普段は焼いてもらっている肉しか食べませんけど……自分で焼いて食べるのって、何だか楽しいですね」

「焼いている時間もご馳走なんですよ」

「なるほど」

ローレン補佐官しかり貴族は当然だが、料理人がいる。一般家庭も大抵は親が作ってくれるので、自分で料理などほとんどしない。

警備兵とて野営をする事はあっても、ヴァルタール皇国では余程の事がない限りは、 魔法鞄(マジックバッグ) に調理済みの料理を入れて行く。

バーベキューセットなんて、一応保持しておく程度で活用していなかった。

料理なんて面倒だと思っていたけど、この焼き肉は焼く時間すら楽しい。

莉奈に言われ、ローレン補佐官は時間がご馳走の意味が分かったのであった。

「何付けて食べたらイイかな? 塩?」

「この黒い液体は何だろ?」

「何かしょっぱいよ?」

「「お前、よく口にしたな」」

フェリクス王達が口にしていたので、毒ではないだろうと思ったマリサは、とりあえず箸に付けて味見していた。

その行動力にランデルとハービスは驚いていた。

「それ、液体調味料の醤油……ユショウ・ソイという木の実の実汁ですよ」

カトラリーケースにフォークがあるのに、わざわざ箸を選んで使っている辺り、箸を使う生活をしている様な気がするなと、莉奈はランデル達を見て思った。

「「「あのカチ割りの実ーーっ!?」」」

ランデル達は仲良く声を上げていた。

ユショウ・ソイをカチ割りの実なんて言う辺り、港町出身の料理人ダニーと通じるものがある。

ひょっとしたら、ダニーと故郷が近い場所なのかもしれない。

「うっそぉ、あれって割れるの!?」

「知らなかった。中身、こんな色の液体が入ってたのかよ」

「……俺、遊んで頭カチ割った記憶しかない」

「「あ〜、たまたま冒険者が来ていなかったら、ハービス死んでたよな(ね)」」

ランデル達は、懐かしそうに話をしていた。

ダニーが言っていた通りで、子供の頃はこのユショウ・ソイの実で、一度は遊ぶらしい。

木の上に生る実を叩き落として遊んでいて、頭に当たりハービスは大怪我を負い死にかけたそうだ。運良く冒険者が村に来ていて、無償でポーションをかけてくれ助かったと言っていた。

案外、そういう事がキッカケで、冒険者になったのかもしれないなと、莉奈は思った。

「白飯」

「え?」

「後、肉追加」

ランデル達の話に耳を傾けていたら、フェリクス王の器は空になっていた。

余程、焼き肉が気に入ったのか、お腹を空かせていたのか、その両方か。フェリクス王の食べるスピードに莉奈は驚いていた。

「脂がのった" 豚(トン) トロ"や"リブロース"もどうぞ。豚トロは少し焼き過ぎかな? くらいが香ばしくて美味しいですよ。カルビも極上、特上、上とランクがありますので、食べ比べてみて下さい。あ、ネギ塩も追加しますか?」

「あぁ、ついでに水も」

このくらいバクバク食べてくれると、用意した莉奈的に嬉しいし気持ちがイイ。

ならばと、初心者向けではなく、違う部位も出していこうと莉奈は勧めた。

空腹感と、皆が焼く匂いに負けたアーシェスも、遅ればせながらも焼き始めている。やはり、この肉が焼ける香ばしい匂いは堪らないよね。

チラチラと皆の食べるスピードと、お皿の肉や飲み物の減りを見ながら、莉奈はさらに説明を続けた。

調味料は自分で小皿に出せる様、テーブルの中央に置いたけど、肉は置いてない。本当は食べ放題みたいに置いても良かったけど、慣れるまではちょこちょこと。

「稀少部位の"シャトーブリアン"もありますので、表面をサッと炙って塩などお好みで……こちらの漬けタレのリブロースは、炙る程度焼いたら、溶いた生卵にくぐらせてお召し上がり下さい」

「「「生卵に?」」」

生卵に付けて食べる食べ方が初めてだからか、それとも生卵そのものに抵抗があるのか、ランデル達は目を丸くさせていた。

あっちでもこっちの世界でも、生卵を食べる国は少ないらしい。

エギエディルス皇子達は、莉奈のおかげでそれほど抵抗感はなさそうだけど。

何故ならアイスクリームには、生卵が使われているのを知っている。それをキッカケに、王宮では生卵に浄化魔法を掛けているし、莉奈が使うのは新鮮で安全なのは立証済だからだろう。

ただちょっと、加工されていないそのままは口にした事がなかった。だから、一瞬「ん?」となったみたいだった。

ちなみに漬けタレは、醤油やホーニン酒、砂糖などを混ぜて簡単に作ったもの。

フェリクス王には少し甘いかもしれないが、どうしてもすき焼きのタレっぽくしたかった。甘味嫌いでも、すき焼きは別な人は多いから、フェリクス王も大丈夫なハズ。

「エド、最強だよ?」

試しに軽く炙って、エギエディルス皇子のお皿にのせてあげれば、皆の喉が唸った。

「「「最強!!」」」

すき焼きならぬ、焼きすき。

醤油ベースのタレに漬けた薄切りリブロース。それを軽く炙って、溶いた生卵のお風呂に入浴させると、もう最強ではなかろうか。

程よく焼けた肉の旨み、香ばしい醤油ダレの旨み、新鮮な卵の旨み。そして、熱々の白いご飯。あぁ日本人に生まれて良かったなぁと、しみじみ思う。

もはや莉奈の焼き肉講義は、人気講師か政治家の演説の様に皆の注目を浴びていた。

その講義の前には、魔物肉だなんて些細な事は頭から吹き飛んでしまう。

莉奈が焼きながら説明する一番ベストな食べ方。それを目の前に見て聞いた皆は、口の中が肉を欲して大洪水だ。

「「「こっちにも白飯と肉追加で!!」」」

莉奈の講義に勝てなかった皆の手は、自然と挙がるのであった。