作品タイトル不明
559 スゴ過ぎて、何を言ってるのか分からない
「てめぇはてめぇで、魔石をくすねてんじゃねぇよ」
莉奈に説明していたアーシェスは、シレッとイブガシアンから獲れた魔石を、自分の 魔法鞄(マジックバッグ) に入れていたらしい。
あの超稀少の魔石を、である。
「あなた、さっきコレ無視してたじゃない」
「そういう問題じゃねぇ」
そう言ってフェリクス王は、アーシェスの 魔法鞄(マジックバッグ) に手を突っ込み魔石を取り出した。
確かに倒したゴーレムやイブガシアンを、フェリクス王はスルーしていた。だからといって、勝手に貰うのは駄目だろう。
「泥——」
泥棒と叫ぼうとしたアーシェスは、フェリクス王に睨まれ言葉を飲み込んだ。
フェリクス王に逆らってもイイ事はない。
「碧ちゃんが喜びそう」
フェリクス王によって踏まれて割れた魔石は、水晶玉の破片みたいでキラキラしてとても綺麗だ。
こんなに光ってみえるなら、光り物が好きな竜は大喜びだろう。
だけど、こんな硬い物がよく割れたなと思う。
「しかし、アダマンタイトに変異したゴーレムが一刀とか」
地面に転がっている変異種ゴーレムの頭部を見ながら、ローレン補佐官は改めて感服していた。
超強固なアダマンタイト変異種を、まさかの一刀だ。
フェリクス王の勇姿を見たい見たいと思っていたけど、目の当たりにすると、凄すぎてため息しか出ない。
「たとえ変異種であっても、鉱物の 劈開(へきかい) 性を利用すれば、簡単に斬れる」
「「"へきかい"?」」
ローレン補佐官に説明していたフェリクス王に、近くにいた莉奈とエギエディルス皇子が仲良く疑問の声を上げていた。
「アイツらも鉱物系の魔物の一種である以上、木目みたいなモノがある。そこを見極め、刃を沿わせれば……って分かってねぇだろ」
フェリクス王はザックリ説明してはみたものの、聞いている莉奈とエギエディルス皇子の目は点のまま。
だって、木目みたいなモノがあると言われても、よく分からない。
「まぁ、何でも弱点はあるって事だ」
まったく理解していない2人に、フェリクス王は細かく説明する事は諦め、超アバウトに教えたのであった。
よく分からないが、どんなに硬い鉱物や魔物も、種類によってはある一定の方向には弱いらしく、そこを狙って上手く力を加えると斬れたり、砕けたりする……らしい。
硬いダイヤモンドも、ハンマーで叩いて割る事が出来るような事を、どこかで聞いた覚えがある。それと同じ原理なのだろうか?
ところで、そこをどうやって見極めればイイの?
そんな神業、フェリクス王にしか出来ないと思う。
莉奈がそう思っていれば、ローレン補佐官も同じ事を考えていたのか、小さくボヤいていた。
「劈開が分かったところで、その道筋が見えない」
たとえ鉱物系の魔物の性質を理解したとしても、どこをどう斬ればだなんて自分にはまだ分からない。
しかも、魔物は鉱物と違って動く訳で……。もはや針を持って走り回る何かに、糸を通すくらい難しい。神業も神業である。
ローレン補佐官は頭部の切り口の美しさに、しばし見惚れていた。
刀で切り落とした頭部の断面、いわゆる劈開面は、光を反射するほど滑らかだった。
真似出来るとは到底思わないが、少しでも近付けたらと思うローレン補佐官なのであった。
◇◇◇
「だけど、普段群れないゴーレムが群れを作るなんて……」
「 魔物暴走(スタンピード) が近いか、もうすでに起きているか」
まだ片付けていないゴーレムの破片を見て、アーシェスとローレンが渋面顔をしていた。
理由は定かではないが、ゴーレムは基本的には、群れをなさないと言われている。そのゴーレムが数体ならまだしも、十数体の群れを作るのは尋常ではない事だった。
何かの前触れ、あるいはすでに起きている可能性を、視野に入れなくてはならないだろう。
しかも、ゴーレムの棲息地は主に、鉱物があるような場所だとされている。それは、石や岩、鉱物を好んで食すからだ。
だが、先程のマヨン兵の様子からして、このゴーレムは普段、近辺に棲息していないと推測出来る。なのにいるとなれば、考えられる1つに 魔物暴走(スタンピード) だ。
ヴァルタール皇国は、フェリクス王や竜が常に警戒し、そうならない様に即時対処している。だからこそ、甚大な被害にならないのである。