作品タイトル不明
558 破壊しまくるパーティ
弟に言われ、至極かったるそうにフェリクス王が、倒れたゴーレムの胸辺りに乗り、軽くトンと踏むように足を落とせば、パキッと小気味イイ音が。そう、あの硬そうなゴーレムの部位が、驚くくらい簡単に真っ二つだった。
「あぁ〜っ!! フェル兄、魔石まで割ってんじゃねぇよ!!」
しかも、ゴーレムどころか魔石ごと。
「うるせぇな。軟らけぇんだよ」
「バカ言ってんじゃないわよ! 魔石が軟らかい訳ないでしょう!?」
莉奈の隣にいたアーシェスも、思わず声を張り上げていた。
魔石は石は石でも、硬度は宝石並みだ。足で軽く蹴ったところでビクともしないのが普通である。
「いやぁぁ〜っ! イブガシアンはやめてーーっ!!」
いちいち煩いとばかりにフェリクス王が、変異種であるイブガシアンに足を向けたところで、アーシェスが堪らず叫んでいた。
ただでさえ、変異種は稀少。その稀少種が落とす魔石は、もっと稀少だ。
その貴重な魔石を粉砕された日には、泣くとアーシェスが慌てて下に降りて行った。
「俺、夢でも見てんのかな? ゴーレムの群れが瞬殺で、魔石が粉々なんだけど」
「夢じゃねぇよ。何なら普通、ゴーレムを足なんかで破壊出来ないし」
「だよな。足が砕ける」
「「何、あの人」」
「「「え!?」」」
フェリクス王が凄すぎて言葉が出なかった皆は、その近くで同じように足で割る人物に、今度は瞠目していた。
「実は、ゴーレムって足で簡単に破壊出来るのか?」
「いや、出来ないだろ」
「だって、あの子、バカバカ割ってるよ??」
「あれ? やっぱ夢?」
「「「何このパーティ??」」」
オカシ過ぎると、皆は唖然とするばかりである。
それもそうだ。
エギエディルス皇子とローレン補佐官が所持していたハンマーで割っている横で、見た目だけは華奢な莉奈が、可愛い掛け声と共にその硬いゴーレムを足蹴にしていたのだから。
「よっと!」
しかも……踵落としで。
「げっ、リナ。やるのはイイけど、少しは加減しろ!」
「いや、加減って……コレでも抑えてんだってば」
「どこが!?」
硬いゴーレムをバキバキ割りながら、それでも抑えているという莉奈に、エギエディルス皇子は呆れていた。
バカ力にも程があると。
莉奈は何故、ゴーレムを蹴っているか。
それは、手伝い半分、豪神ナックルダスターの効力に興味が沸いたのが半分。先程、軽く走っただけであぁならばと、蹴ったらどれ程の威力があるか好奇心がムクリと沸いた。
だが、人にやる訳にいかず、魔物に対してはまだ少し怖い。フェリクス王になんて恐ろしくて考えたくもない。
で、目の前に転がるゴーレムに目を付け、容赦なく破壊していた……という訳である。
しかも、簡単に粉砕出来る事を知り、途中から楽しくなり始めた莉奈。その容赦ない蹴りに、ゴーレムの手や足だった部位は、もはや粉々だ。
「ダメだ。絶対、魔石が割れる!! フェル兄、コイツを止めてくれ」
魔核とも呼ばれるゴーレムの魔石は、頭や胸にある事が多いが、いつ莉奈がその部分を破壊するか分からない。エギエディルス皇子はフェリクス王に止める様に言えばーー
「大人しくしてろ」
猫の様に捕獲されたのは、言うまでもなかった。
◇◇◇
「ものスゴく良質の魔石が獲れたわね」
イブガシアンの魔石を丁寧に獲ったアーシェスが、光にあてながら満足そうにしていた。
莉奈が以前、フェリクス王から貰った魔石とは違って、虹色にキラキラと輝いている。無色透明でないのだから、何か付与されていそうだ。
【魔核】
超硬イブガシアンの魔石。
「"超硬"?」
アーシェスが掲げる魔石をザックリ【鑑定】して視た莉奈は、その表記に首を傾げた。
「ゴーレムの変異種を総して、イブガシアンと言っているんだけど、色々あるのよ」
鑑定をした様子の莉奈に、アーシェスが軽く説明してくれた。
"魔核"というのは、魔物から採取した魔石の事で、"超硬"というのは、ものすっごく硬い事らしい。
魔物には、魔封じや吸収など、魔石を自身で生成する個体もある。
しかし、鉱物系の魔物ゴーレムは、特に魔石を持つ個体が多く、その魔石の種類も豊富だそうだ。
「このゴーレムはアダマンタイトに変異してますから、超特級のレアですね」
ローレン補佐官はそう言って、その稀少なイブガシアンを 魔法鞄(マジックバッグ) にしまっていた。
自分が倒した訳ではないが、良い素材にものスゴく満足そうだ。
もちろん、帰城したらフェリクス王に返すだろうけど。
「"アダマンタイト"?」
「"オリハルコン""ヒヒイロカネ"に並ぶくらい超稀少鉱物って言えば分かるかしら?」
「……なるほど?」
「全然分かってないわね」
疑問の声を上げていた莉奈に、アーシェスは簡単に説明したが、莉奈の反応の薄さに苦笑していた。
「ようは、食えねぇって事だ」
何その説明。そんな事は言われなくとも分かる。
ジト目で見る莉奈の右手に、フェリクス王は拾った魔石をポンとのせた。
キラキラと光を反射していてスゴく綺麗だが、コレはフェリクス王に足蹴にされて割れた魔石の破片だろう。
揶揄われた莉奈だったが、その魔石のあまりの美しさに怒る気が失せていた。
「くれるんですか?」
と莉奈が瞳を輝かせて見れば、
「食うなよ?」
とフェリクス王に笑われた。食う訳がない。