軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

544 国境の街、ゴルゼンギル

若干騒ぎはあったものの、フェリクス王がくれた身分証明書に不備などあろうハズもなく、莉奈も疑われる事なくスムーズに入れた。

ゴルゼンギルの門扉は、木の扉ではなくしっかりした鉄製。

国や街の管理者により、防壁や扉など高さや質など様変わりする様である。

ここはポピュラーな両開きだが、場所によっては、鉄格子が上から勢いよく落ちて閉まる所もあるとか。一気に落とした方が、魔物の侵入を素早く防げるからだ。

ただ、勢いよく落ちてくる分、安全性に欠けるため細心の注意は必要。

他にも、防壁の代わりに街や村の周りをグルっと掘り下げ水を流したり、壁と掘りとの二重の防御にしたりと、国や街で特色があるそうだ。

旅では、そういった違いを見る楽しさもあるのかもしれないなと、莉奈は思うのだった。

「え? ここから入るんだ」

さて入場となったのだが、莉奈は開いた扉を見て驚いていた。

大きな門扉は開かず、門扉の端にある小さな扉を門兵が開けてくれたのだ。

まさか、大きな門扉の下に小さな扉が付いてあるとは思わなかった。だけど、何だか猫用の扉みたいで可愛い。

気付いて良く見れば、反対側の扉にも扉の下に扉がある。両開きの右下と左下にあり、入場する人と出場する人とで分けている様だった。

「私達は馬車でないので、この大きな門扉は開かないんですよ」

「なるほど」

莉奈が門扉をグルリと見ていれば、ローレン補佐官が教えてくれた。

高い大きな門扉は、開け閉めに時間が掛かる。徒歩で来た旅人の為にイチイチ開けていたら、魔物が入り込む隙を与えるだけ。なので、基本的にはこちらの小さな扉から入場する。

大きな門扉は馬車で来た旅人や、魔物討伐等で大勢出入りする時に開くらしい。

「態度のデカいお前には、この扉は小さ過ぎて入らねぇか」

ローレンの説明を聞いていたら、クツクツと笑う声が……。

頬を膨らませて見れば、それは肩を震わせているフェリクス王だった。

「失礼な! 入れますよ!!」

開けてくれている門兵達も、フェリクス王のその物言いに笑いを堪えているのか、あさっての方向を見ていた。

どいつもコイツも失礼過ぎる。

莉奈は笑っている皆の横を早歩きで素通りし、さっさと街へと入るのであった。

◇◇◇

「わぁ、畑だ」

扉の先はすぐ街並みが広がっているかと思っていたら、入ってすぐの防壁の内周には公道が、そして街までまっすぐ伸びた道の両サイドは広大な畑があった。

まさに、田んぼの田の漢字を描くようにして、畑と道がある。そして、門からまっすぐ伸びた道の遥か遠方に、薄っすら街が見えた。そう薄っすら。

という事は、まだ歩かないと本当の意味で街には着かない。

「場所によるが、こうやって防壁の内周を田畑にしてる場合がある」

「魔物が侵入した際、すぐに建物があるより見通しが良くて、討伐しやすいですからね。だからって、そのまま更地にしとくのは広大な土地がもったいない。って事で田畑にしてるんですよ」

フェリクス王とローレンが簡単に教えてくれた。

防壁を越えて来る魔物がすぐ見える上に、いざ戦闘となった時も、邪魔な建物がないので戦いやすいそうだ。

「なるほど」

これなら一石二鳥だなと、莉奈は感心していた。

確かに、魔物のいる防壁の外側で作物を育てる訳にはいかない。なら、こうやって育てた方が安全だ。

しかも、魔物の被害を最小限に抑える事が出来る。スゴく効率的である。

門扉からはずっと一直線の道だから、街まで迷わず行けそうだ。

「フェル兄。街に入る前に、その辺で荷物整理するか?」

エギエディルス皇子がそう提案すると、フェリクス王は頷いていた。

人の往来が多い街で、荷馬車を出せば邪魔になるし目立つ。防壁周りなら誰もいないし、幅の広い道もあるしでちょうどイイ。

「よっ!」

フェリクス王に了承を得たエギエディルス皇子は、誰もいない道の端に寄ると、 魔法鞄(マジックバッグ) からダン親子の荷物が入っている荷馬車を取り出した。

その出した衝撃で、外れかけていた荷馬車の車輪がコロンと落ちた。

「割れてなければイイですけど」

そう言ってダンが少し傾いている荷馬車の荷台に乗り、荷物をあさり始めていた。

魔物に襲われたり悪路を走って来たのだから、破損している可能性がある。

本物だと分かっても破損していたら、何の意味もない。

「あ、さつまい……紅イモ」

ダンが荷物をあさってる間、暇だったので畑をチラッと見ていた莉奈は、その作物がサツマイモだと気が付いた。

薩摩とは関係ないこの世界では、皮が赤紫色のサツマイモに似た芋は大体"紅イモ"と呼ばれている。

アッチの世界の紅イモは、主に中身が赤や紫色の芋の総称だけど、世界が違うと定義が変わる。ややこしいけど、面白い。

「色気より食い気」

そんな莉奈を見ていたフェリクス王が、吹き出していた。

莉奈はどこに行っても、食う事が念頭にあるらしいと。

フェリクス王が背後で聞いているなんて知らない莉奈は、青々とした立派な葉が生い茂っているサツマイモ畑に興奮していた。

少し葉が大きい気もするが、日本と品種が違うからだろう。

芋けんぴは作った事がないけど、大学芋はある。結局、まだ作ってないスイートポテトも美味しくてイイよね。

「芋がこれだけ豊富なら、やっぱり芋焼酎はありそうな気がする」

米の酒、ホーニン酒があるのだから、サツマイモを原料とした芋焼酎もありそうだ。家にはなかったが、ジャガイモ焼酎だってあるかもしれない。

「そうだ。確か家に"魔◯"って書いてある芋焼酎が——」

小さな酒瓶だったが、誕生日に友人から貰った高い酒だと、父が大事に飲んでいた気がする。

父の事を思い出しブツブツ言っていたら、目を光らせた 魔(フェリクス) 王とガッチリ目が合った。