軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

542 食い物特化とは?

「どうにかならないかしらねぇ」

「……」

「なまじ、関わっちゃったから気になるのよね」

莉奈と同じく、アーシェスも少し気になるのか呟いていたが、近くにいたフェリクス王は無視していた。

何故なら、チャーリーは売る気はなさそうだが、フェリクス王が付与した 魔導具(ゆびわ) はどこでも高額で売れるからだ。アレがあれば、すぐに野垂れ死ぬ事はない。施しは与えた。後は自分達で考えればイイ事だ。

「あ」

ブツブツと言っていたアーシェスが、何かを思い出しハッとした。

「ねぇ、それで思い出したんだけど、さっきチラッとダンさんの荷物を見た時、骨董品の一部に"コーイマ"って書いてある木箱があった気がするのよねぇ」

「目敏いな」

「たまたまよ」

「だとして、本物とは限らねぇんじゃねぇの?」

壊れた馬車の中に、"コーイマの壺"と書いてあった木箱を見つけていたアーシェスは、コソッとフェリクス王に教えた。

それが本物なら、富裕層には高額取引きされている陶磁器だ。

フェリクス王が付与した指輪と同じか、それ以上の金になる。生活の基盤くらい簡単に作れるだろう。

——ちなみに。

"コーイマ"とは、サン=コーイマが見つけたとされているコバルト色の顔料の事。その顔料を用いて、手描きで絵付けされ焼成された磁器の事を、主に"コーイマ焼き"と言う。

深海にも似たコバルト色の顔料で描かれたコーイマ焼きは、白い皿に描かれる事が多く、青と白のコントラストが綺麗で人気らしい。

主にバレントア国の南東の海の街、サウエル地方の職人によって造られた陶磁器で特産だそうだ。

陶磁器は食器や壺など色々と種類はあるが、大量に出来る印判手、いわゆる判子で模様を付けた器より、手描きの方ならより価値があり、高額で取引きされているのである。

故に偽物も多く、しっかりした店で買わないと偽物を掴まされる可能性が。

その高価なコーイマが、ダンの義父が趣味の延長上で仕入れていた商品の中にあったとは思えない。

しかも、ダンが慰謝料代わりに貰った骨董品だ。もし本物なら、義父がすんなり寄こすだろうか?

そもそも、ダンに良質の空石を見極める技能はあっても、骨董品にその目利きが効くのか皆目だ。

「まぁ、仮に本物だとして、ゴルゼンギルじゃ端金にしかならなそうですけど」

人気のない街だと、そういった物は全く需要がない。だから、お金にはならなそうだと、ローレン補佐官が苦笑いしていた。

「本物なら、俺達が買い取ってやりゃイイじゃん」

ひょこっとエギエディルス皇子が、会話に参加した。

王都で売れるなら、いずれ王都に帰る自分達が代わりに買ってやればイイと、エギエディルス皇子が口にする。

「でも、見分けが」

「リナがいるだろ?」

「え?」

「リ ナ」

ローレンが恐縮そうに言えば、エギエディルス皇子が当然の様に莉奈の名を出していた。

莉奈は【鑑定】持ちだ。なら【鑑定】して貰えばハッキリすると、エギエディルス皇子は言ったのだ。

急に名が出た莉奈は驚きである。

「あぁ、そうか。コイツの【鑑定】は"食い物特化"じゃねぇんだっけ」

「食い物特化って何ですか!?」

馬鹿にした様な笑みで言うフェリクス王に、莉奈はムスリとした。

その言い方だと、まるで食い意地が張っているみたいではないか。あながち間違いではないけど!

「あの、一体何の話を?」

話の腰を折る様で申し訳ないと思いつつ、自分達の事が絡んでいると気付いたダンは眉根を寄せていた。

「あなたの持っている骨董品。ゴルゼンギルでも売れなさそうだし、持っていても仕方がないでしょう? なら、邪魔なだけだろうから、私達が買い取るのもアリかなって」

「今は荷物になる骨董品より、先立つ物の方が必要ではと思いましてね」

何の話だろうと訊いてきたダンに、アーシェスとローレンが簡単に説明していた。

量は少ないが、売れない骨董品はゴミと同じで邪魔なだけ。なら、等価とはいかないが、それなりの値段で買い取ってあげた方が彼等には良いのではと、皆で話していたのだ。

そうダンに言えば、ダンの表情が途端にパッと明るくなっていた。

「そこまでして頂くのは大変申し訳ないですが、して頂けるなら是非に!!」

至極恐縮と口で言いながらも、目はキラリと輝き、嬉しそうである。

伝手もないし、初見の街であるゴルゼンギルで売れると思っていなかったダンは、内心どうしようかと悩んでいた。それだけに、フェリクス王達の話は渡りに船であった。

「「「……」」」

その食い付き様に莉奈は唖然とし、フェリクス王達は苦笑いしていた。

余程、困っていたのだろう。だが、ダンの手には、実際にはしてもいない揉み手が見えた気がした。

「本物じゃなければ、買いませんよ?」

一応、ローレンは断りを入れておく。

偽物はいらないし、本物だとしても買う買わないの選択肢は、当然こちら側にはある。

「もちろんですよ!!」

ローレンの言葉を聞いても、自分の鑑定眼に余程の自信があるのか、荷物が減る事が嬉しいのか、ダンの笑顔はさらに輝きを増していた。

あぁ、コレは商人の顔だと、莉奈が思わずそう感じる程に……。