軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

533 ひと息

「ん〜。やっぱりリナのからあげは最高よねぇ。家で作ると、何度やってもなんかベシャッとするのよね」

アーシェスは熱々のからあげを頬張り、嬉しそうな表情をしていた。

2度揚げしようが何しようが、どうも上手くいかないとアーシェスは漏らしていた。

「ダンさん達も、どうぞ?」

自分の前に置かれたものの、食べてイイものなのか悩んでいるダン親子。

挙動不審な親子に莉奈は苦笑いしながら、お茶とからあげを勧めた。

「え、あ」

勧められたダン親子は、お伺いを立てる様に周りをキョロキョロ見てから、緊張な面持ちでからあげ串を手にした。

「「んんっ!?」」

いただきますと、遠慮がちにダン親子は口にしたのだが、口にした途端に目を丸くさせていた。

カリッとしたからあげの衣、少し付いた鶏皮の香ばしさとパリパリした食感、そして何より……熱々でジューシーな鶏の旨味が、口いっぱいに広がっていくのだ。

噛めば噛むほど、旨いエキスが口に溢れてくる。

「「美味しい!!」」

ダン親子は、鶏肉の旨さに感動していた。

「何コレ!! お父さん、スゴく美味しいね!」

「あぁ、美味しくて涙が出そうだ。お茶も美味しいぞ? チャーリー」

チャーリーは瞳をキラキラさせながら、からあげを頬張っていた。

ダンはやっと心が落ち着いたのか、目に涙を溜めながらゆっくりとからあげと、お茶を味わっていた。

実はダン親子。

この旅に出る前にからあげを食べて来ていた。

長旅になれば、保存食が中心となる。ならば、チャーリーの食べたい物を……と考えた時、ちょうど目に入ったのが王都発祥のからあげ店である。

ダン親子は、最近流行り出したからあげが大好きだった。良く食べていたので、当然ながら味も覚えている。

だから、莉奈の出した"からあげ"の外見にまず首を傾げたし、口にしたらしたで食感のあまりの違いに、ものスゴい衝撃を受けたのだった。

だったが……あまりの美味しさに、すぐに口が綻んでいた。

今まで、美味しいと思って食べていたからあげは、一体なんだったのだろうか? コレと比べるとまったく違う料理に見えてくる。

ブルガで食べたからあげは、周りの衣は剥げていて、こんなに衣は香ばしくもなかったし、カリカリしていなかった。コッチは噛むと鶏のエキスが口いっぱいに広がるのに、アッチは油がジュワリと染み出ていた気がする。

同じ料理のハズなのに、こんなにも違うのかと、ダンは衝撃を受けたと同時に、頬や口元が弛むのを抑えられずにいた。

「チャーリー、美味しいだろ?」

「うん、カリッとしてジュワッとして、すっごくすっご〜く美味しい!!」

歓喜で震えているチャーリーを見て、エギエディルス皇子が笑っていた。

エギエディルス皇子も、莉奈に初めて作って貰った時には、あまりの美味しさにおかわりを乞うた程。不味い訳がないのだ。

「ねぇ、お父さん。この間、食べたからあげって"からあげ"なのかな?」

チャーリーも父同様に、来る前に口にした物がからあげなのかを疑っているみたいだった。

「分からない。からあげとして売っていたから、からあげだと思うが……比べるとまったく違うな」

「僕、コッチが本物だと思う」

「……」

美味しいから本物だと言うチャーリーに、ダンはどちらが正解か唸っていた。

美味しい方が正解とは限らないからだ。からあげも骨董品や絵画と同じで、美味しい上手いから本物、と言い切れない事をダンは良く知っていたのだ。

「良かったらおかわりどうぞ?」

「わぁ! ありがとう!!」

莉奈は嬉しそうに食べるチャーリーと、複雑な表情で食べているダンに追加のからあげを出した。

一大からあげブームの裏では、偽物も多く出回っているとか。

ブームに乗っかれとばかりに慌てて出店する人も多く、知ったかぶりで作っているのか、良く分からない揚げ鶏みたいな微妙な物まであるみたいだった。

美味しければそれでもイイとは思うけど、からあげを名乗るなら最低限の定義は守って欲しいところである。

「ところで、シュテームには何をしに?」

一息吐いたところで、ローレンが魔馬がいない馬車を見ながら訊ねた。

破れた幌をチラッと見れば、木箱や古い家具が何個か見える。

旅行と言うには荷物の量が多い。 魔法鞄(マジックバッグ) 持参ではない引越の場合は、大抵は邪魔になる家具は売るか置いて来るのがセオリーだ。

「……」

ローレンに聞かれたダンは、唇を噛む仕草を見せると黙ってしまった。

聞かれたらマズイというよりは、嫌な事でもあったかの様に見える。

「お母さんに追い出されたんだよ」

「な、チャーリー!」

父ダンが黙っていたら、少し膨れっ面になったチャーリーが暴露した。

「お父さん、あんなに一生懸命だったのに!!」

誰かに聞いて欲しかったのか、チャーリーは堰を切ったように話し始めたのであった。