軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

444 やらかしにも程がある

……何故にーーーーっ??

「元気になるだけじゃなかったの!?」

てっきり、萎れた葉や幹が元気になるだけだと思っていた。

聖木は魔物じゃない……ハズ。だから、変異は起こさない……ハズ。

すべてが憶測。"ハズ"だった。

……あれーーーーっ??

莉奈の頭は大パニックである。

あの萎れに萎れまくっていた"聖木"が、いまや"聖樹"となり、王宮より高くそびえ立っている。

そして、淡いオレンジ色に発光しているのだ。

バレるのは時間の問題である。いや、バレない方がオカシイ。いやいや、もうバレているかもしれない。

「どうしよう。ドウシヨウ。どうしよう」

莉奈は意味もなく、聖樹の周りをウロウロと回りに回っていた。

ジッとしていられないのだ。

お願い!! 元に……いや、せめて普通の木のサイズに戻って下さい!!

莉奈は、この世界にもいるかもしれない神様に願ってみた。

「陛下!! あちらです!!」

……だが、無駄だった。

神様がいる訳がない。いたら、莉奈がここにいる訳がないのだから。

莉奈が唖然呆然としている間に、フェリクス王が来てしまった。

それも当然である。

幹や根、葉や枝、そのすべてが伸びて成長する時、異様な音がしたのだ。あのフェリクス王が気付かない訳がないし、気付かなかったとしても王宮の警備兵が気付く。

警備兵に気付かれれば、当然トップの耳に入る。どの道バレない訳がなかった。莉奈はすでに詰んでいた。

「んぎゃあぁぁぁ〜っ!!」

莉奈は慌てに慌てまくった挙句、逃走する暴挙に出た。愚策とも言う。

だが、もはや条件反射であり現実逃避。魔王が来る恐怖から、逃げずにはいられなかったのであった。

◇◇◇

「あ゛ぁ? どうなってやがる」

寝入っていたところでの奇妙な音、そして警備兵の訪れにフェリクス王は若干不機嫌であった。

だが、聖樹を見てそんな気分も吹き飛ぶ程に目を見張っていた。

昨日まで、あんなに瀕死状態だった聖木が、何故か異常に成長し変化を遂げていた。これを驚くなと言う方が難しい。

フェリクス王にはその原因がまったく分からず唸るしかなかった。

「"聖樹"になった様ですね」

同じく叩き起こされた形になったシュゼル皇子が、少し遅れほのほのとやって来た。

そして、来て早々に【鑑定】を掛けた様だった。

「あ゛ぁ?」

「"聖樹"ですよ」

「"聖樹"って、あの聖樹かよ?」

「えぇ、あの"聖樹"です。別名"神樹"と呼ばれる、あの幻の」

「神の奇跡が?」

「……ここに?」

「「…………」」

それっきりしばらく、フェリクス王もシュゼル皇子も言葉が出なかった。

聖樹の記述は最古の文献にある事はあるが、それは聖女や勇者同様であやふやで不確かなモノである。

当時の者達が、過剰に書いた可能性さえある眉唾物であった。

それが、今、目の前にドカンと生えている。

驚くなと言われても、無理な話である。

「な、な、なんなんだよコレはーーっ!!」

その沈黙を破ったのは、さらに遅れてやって来たエギエディルス皇子だった。

遠くから見れば、遠近感がおかしくなり。近くから見ても、異常な大きさに圧倒される。エギエディルス皇子は生まれて初めて、王宮を超える樹木を見たのであった。

背の高いフェリクス王も、この聖樹の前ではミニチュア世界の住人に見えた。

「ふふっ。エディ、すごい寝癖ですね?」

「俺の寝癖なんて、今はどうだってイイんだよ!!」

こんな非常時に、相変わらずシュゼル皇子がマイペースなものだから、エギエディルス皇子は思わず怒鳴ってしまった。

この聖樹を前にしたら、エギエディルス皇子の可愛い寝癖など些細な出来事である。

「この木はどうなってるんだよ!? やたらデカいし花は咲いてんし、光ってんだけど!?」

エギエディルス皇子は素直に混乱中であった。

抜いたらダメな聖木を抜いた竜も大問題だが、その聖木が急に大きくなるのはもっと大問題である。

この姿が大丈夫か大丈夫じゃないか、何が正解で不正解か分からない。

「"聖樹"に進化を遂げたみたいですよ?」

「はぁ!? 進化ぁぁーーっ!?」

ほのほのとしている次兄とは対照的に、エギエディルス皇子は首がもぎれるかというくらいに、聖樹を見上げ叫びを上げた。

瀕死の聖木が、何故一夜にして進化するのだ。

魔物であっても前兆はあるし、ましてやあの姿から想像出来なかった。

「何で急に進化すんだよ!! 大丈夫なヤツなのかよ!?」

もう、エギエディルス皇子の可愛い叫びは止まらなかった。

突然起こった異常な現象に、混乱が収まらないのだ。

「ん〜? 大丈夫は大丈夫ですけど……」

これを大丈夫と言うのでしょうかね? と、シュゼル皇子は【鑑定】で視えた表記を2人に口頭で伝えた。

【聖樹】

別名" 神樹(しんじゅ) "と呼ばれる樹木。

その身から放つ不思議な光は聖なる力を持ち、聖木同様に周りに魔物を寄せ付けない。

だが、その力は聖木を遥かに凌ぎ広範囲に影響を及ぼす。

聖木が聖樹になる事はほとんどなく、成長した姿は神の奇跡と言われる。

〈用途〉

その効力や範囲はその樹木の状態や成長、個体による。

幹や葉だけでなく根や樹液に至るまで、防具や装飾品、薬として重宝される。

聖樹から溢れ出る光もまた、魔除けの力を持つ。

〈その他〉

一部食用である。

数百年に1度程度に生る実は、神々の妙薬。

朝露さえも、魔法薬の材料となる。

超稀に咲く花は、他の素材と超特殊な配合で調合すると、神魔法薬となる。

「「「……」」」

もはや、絶句である。